村上春樹さんの新作小説『街とその不確かな壁』(新潮社)が、発売6日で重版となった。本作は、『騎士団長殺し』(新潮社)以来6年ぶり、1200枚に及ぶ本格長編小説として注目を集めている。累計発行部数は35万部となった。
BOOKウォッチでは本作の書評<【書評】村上春樹さん6年ぶりの長編『街とその不確かな壁』 迷宮をさまよう混沌世界>を掲載している。
物語は、17歳の〈ぼく〉が16歳の〈きみ〉と仲睦まじく過ごしている場面からはじまる。2人はセックスこそしないものの、恋人に近い、非常に親密な関係を1年近く続けた。やがて〈きみ〉は、〈ぼく〉に〈街〉の話をするようになる。現実社会に居場所のないように見える〈きみ〉は、自分の存在は〈影〉で、本体はその〈街〉にあるのだと語る。一方、45歳の〈私〉は、その〈街〉に迷い込んでいた――。
高い壁と望楼、図書館の暗闇、古い夢、〈きみ〉の面影。自分の居場所はいったいどこにあるのだろう。〈古い夢〉が奥まった書庫でひもとかれ、呼び覚まされるように、封印された「物語」が静かに動き出す。
■村上春樹さんプロフィール
むらかみ・はるき/1949(昭和24)年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。1979年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『国境の南、太陽の西』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『海辺のカフカ』(世界幻想文学大賞、ニューヨーク・タイムズThe 10 Best Books of 2005)、『アフターダーク』、『1Q84』(毎日出版文化賞)、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』、『騎士団長殺し』(第1部 顕れるイデア編、第2部 遷ろうメタファー編)がある。『神の子どもたちはみな踊る』、『東京奇譚集』などの短編小説集、『村上春樹 雑文集』『ポートレイト・イン・ジャズ』等のエッセイ集、『辺境・近境』等の紀行文、カーヴァー、サリンジャー、カポーティ、フィッツジェラルド、マッカラーズの翻訳作品など著書・訳書多数。海外での文学賞受賞も多く、2006年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、2009年エルサレム賞、スペイン芸術文学勲章、2011年カタルーニャ国際賞、2014年ヴェルト文学賞、2016年ハンス・クリスチャン・アンデルセン文学賞、2022年チノ・デルドゥカ世界賞(フランス)を受賞。
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