散らかった部屋を眺めては、このままじゃいけないと思い立って片づけ本を買うものの、なかなか実行できない。「断捨離」して物を減らすのが片づけには効果的とわかってはいても、どうしても捨てられないという人も少なくないのでは。子どもがいる家庭なら、なおさらだ。
ところが、「ものが捨てられないなら、捨てなくていい」と説くのが、 『物に囲まれてすっきり暮らす 景色を変える片づけ』(大和書房)の著者で、幸せ住空間セラピストの古堅(ふるかた)純子さんだ。
古堅さんは、ものを捨てずに暮らしを変える、「古堅式の片づけ方程式」を提唱。ほかの片づけテクニックにはない特徴を、本書の「はじめに」から見てみよう。
(以下、本文より)
私はこの本を「物を捨てられない人」のために書きました。物を捨てれば、家の中は片づく。そんなことは誰でもわかります。
でも、捨てられない。手放せない。家族が物をため込んでしまう。事情はいろいろありますが、生きていれば生きている年月分だけ、物はたまってしまいます。だから、みんな悩んでいる。
だったら捨てなくていい。
これが私の結論です。
私はこれまで、 20年以上にわたって5000軒以上のお宅を訪問してきました。その多くが、物を捨てられずに困っているお宅でした。
なかには、何年にもわたって物を整理し、仕分けし、時には身を切るような思いをして物を処分し、収納してきても、まだ家が片づかない方もいました。
頑張って片づけてきた彼女たち、彼らたちの努力に頭が下がる思いです。
だから、私は声を大にして言わせていただきたいのです。
片づけられないあなたが悪いのではない。
片づけ方を変えればいいのです。
物を捨てなくても片づきます。
捨てられなくても、片づいた空間で暮らせます。
その実例をユーチューブ『週末ビフォーアフター』で紹介しています。物だらけの家を、無理に捨てさせることなく、もちろん新たに収納家具など買い足してもらわなくても劇的に変身させていますので、興味のある方はぜひご覧になってください。
とにかく、この本を手にとっていただいたあなたは、もう「捨てなくては片づかない」という強迫観念から自由になれます。よかったですね。
そのためには、今までの片づけの常識や思い込みを捨て、これまでやっていた片づけではない新しい片づけを目指していただきたいのです。
この本では、物を捨てなくても、快適な部屋をつくる片づけ方をお教えします。いずれも20年以上現場に立ち続けた私の実践から生み出されたものです。
本文に入る前に、簡単に内容をかいつまんでお教えします。
本文を読むのが面倒くさい方は、これを読むだけでも十分かもしれません。
もちろん中身を読んでいただければ、もっと理解が深まります。ですが、私としてはまず何より片づけの常識を変えてほしい。「捨てる」から始めなくてもいい片づけのやり方があることを、まず最初に知っていただきたいのです。
その方法とはこうです。
物を寄せる → 寄せた物を埋める
たったこれだけ。これが捨てない片づけの極意です。
「埋める」という聞き慣れない言葉が出てきましたが、これは収納の中や物置スペースなど、見えない場所に移動させるという意味です。視界から消す。だから「埋める」 です。
よけいな物を寄せて、埋めればいい。これが「捨てない片づけ」の大原則だと思ってください。片づけが面倒くさい人、片づけても片づけても終わらない人、すぐに結果を出したい人は、「寄せて埋める」を実践するだけでも、状況が劇的に変わるのは間違いありません。
といっても、これだけでは抽象的ですし、何をやればいいのか具体的にはわかりませんよね。リバウンドさせないための仕組みづくりも必要です。そこで、この方程式をもう少し具体的にして肉づけさせたものがこうなります。
①部屋のコンセプトを決める → ②物を寄せて更地にする → ③景色を変える → ④仕組みを考えて収納する(動く物) → ⑤寄せた物を埋める(動かない物)
「?」な言葉もあると思いますので、最初から説明していきましょう。
①部屋のコンセプトを決める
まず「部屋のコンセプト」を決める、です。これは「どんな暮らしをしたいのか」「この部屋で何をしたいのか」ビジョンをはっきりさせるということです。 「片づけたいんです」「部屋をきれいにしたいんです」というのはビジョンではありません。片づけたあと、どんな暮らしがしたいのか。きれいになった部屋でどんなことがしたいのか、そこが明確でないと、実はリバウンドしやすいのです。
ダイエットと同じです。ただ漠然と「やせたい」ではすぐリバウンドしてしまいます。「あのドレスを着るためにあと3キロ体重を落とす」とか「血圧を120台まで落として健康になりたいから 10 キロやせる」など、どうなりたいのか具体的な目標があったほうが、ダイエットは成功します。
どんな暮らしをしたいのか、まずは部屋のコンセプトを決めましょう。
②物を寄せて更地にする
とはいっても、長らく物に埋もれて生活してきた人は、その状況に慣れてしまって、もはやどんな暮らしをしたいのか、思い浮かばない人もいます。
「あなたはどうしたいの?」と聞いても、なかなかはっきりした答えがない。そういう人でも大丈夫です。ビジョンが思い浮かばない場合でも、とりあえず物をどこかに寄せてください。
そして、部屋を「更地」にするのです。「更地」というのも聞き慣れない言葉ですが、要するに物のない状態にするということです。
私が片づけに行くお宅では、多くの場合、対象となる部屋を、文字通りまったく物のないまっさらの状態にしてから作業をスタートします。物がなくなって、床が見える。まっさらな「更地」の状態になると、部屋の「景色」が変わります。
③景色を変える
実はこの「景色」がとても重要です。「景色」が変わると、不思議なことが起こります。 人の心が動くのです。物だらけの部屋から物がなくなってすっきりし、「更地」の「景色」が現れると、とたんに夢が広がり始めます。
みなさんは引っ越しや新しい家を選ぶときの内覧で、何もない部屋を見たことがあるでしょう。そのとき、ワクワクした気持ちになりませんでしたか。
「この部屋をこうしよう」「本当はこんな部屋にしたかったんだ」。今まで忘れていたり、あきらめていた理想の部屋や暮らしへの思いが湧き上がってくるのです。
私の経験からしても、100人いたら100人が例外なく「更地」の「景色」に感動し、喜び、前向きになります。
心が動くと、行動が変わります。行動が変われば、暮らしも変わります。暮らしが変われば、人生も変わる。
たかが片づけですが、されど片づけ。それくらい影響は計り知れません。そのきっかけになるのが「更地」であり、「景色」が変わることです。
古堅式のポイントは、物を寄せること。覚えていますね。その目的は「更地」をつくり、「景色」を変えることだったのです。
④仕組みを考えて収納する
「更地」をつくり、「景色」が変わったら、そこにどんな新しい「景色」をつくり出すのかを考えてみましょう。ゼロから発想するのです。
ここで最初の「部屋のコンセプト」が必要になります。「こんな部屋にしたい」「こんな用途に使いたい」というビジョンにもとづき、部屋に置く物やレイアウトを考えます。
最初にコンセプトがなくても、「景色」が変わった段階で、「この部屋はこうしたい」 と決めてもけっこうです。そのコンセプトにもとづいて、必要な物を配置していきます。
ここで初めて一般的な整理収納のノウハウやアイデアを参考にすることができます。今まで集めた整理収納の本がようやく役に立つときがくるでしょう。動線を考えた物の配置や、使う頻度の高い物を置く「ゴールデンゾーン」(頭から腰までの範囲のこと)の設定など、機能的な仕組みづくりを考えます。
使いやすい収納を考えるのも、大きくいうと「仕組みを考える」の範疇に入ります。景色を損なわない仕組みをつくり、出し入れしやすいよう収納していきます。
⑤寄せた物を埋める
ところで、みなさんのなかには、ずっと疑問を抱いている方がいらっしゃると思います。それは「寄せた物」はどうするのか、ということです。
「寄せた物」は視界から消す、つまり「埋める」と言いましたが、「その場所がないから片づかないんじゃないか」「埋める場所があるくらいなら、最初から散らかっていないだろ」とツッコミを入れる方もたくさんいるでしょう。
まさにその通り。物を寄せたら、寄せた物を置く場所が必要です。場所を確保するにはいくつか方法があります。
・物置部屋をひとつつくる
割り切って、ひと部屋、物置部屋にするのが一番簡単な方法です。
・収納の中に入れる
物だらけの家も、収納の中は意外にスカスカだったり、余裕があることがあります。その場合は収納の中に埋めます。
・収納がパンパンだったら掘る
収納がパンパンで入らないときは、少し面倒ですが、収納の中の物を出して整理します。これを私は「掘る」と言っています。たいていは少し掘ればスペースがあきます。そこに埋めていきます。
・その他
それでも入らないときは家具の後ろにすき間をつくって埋めたり、白い箱に詰めて積み上げることもあります。
ざっくりと古堅式「捨てない片づけ」のノウハウをご紹介しました。初心者の方は、寄せて更地をつくるまで頑張っていただければと思います。
寄せた物の行く末はあとで考えるとして、とにかく更地までこぎつける。そうすれば何かが動き出します。ひと部屋を更地にするのが無理なら、局地的でもかまいません。
せめてテーブルの上だけは更地にするとか、ソファーの上だけは物を置かないとか。更地がひとつできると、見えてくる景色が変わります。景色が変われば、心が動きます。そこからすべてがスタートします。新しい生活が始まるきっかけがつかめるのです。
さあ、好きな物に囲まれてすっきりとした暮らしの一歩を踏み出しましょう。
幸せ住空間セラピスト 古堅純子
(以上、本文より)
捨てなくては片づかないという、今まで常識だと思っていた考え方は、古堅さんに言わせれば「強迫観念」に過ぎない。捨てなくても、快適な部屋は作れるのだ。
捨てられない人が部屋を片付けるための大原則は、余計なものを「寄せて、埋める」こと。 『物に囲まれてすっきり暮らす 景色を変える片づけ』では、この大原則に沿って、実際に部屋を住みやすい空間にするための具体的なノウハウを順に解説している。
今まで、様々な片づけ本を読んでは断捨離に挫折してきた人は、この本で発想が転換できるだろう。
■古竪純子さんプロフィール
ふるかた・じゅんこ/幸せ住空間セラピスト。20年以上現場第一主義を貫き、お客様のもとへ通っている。5000軒以上のお宅に伺いサービスを重ね、独自の古堅式メソッドを確立。著書累計は65万部を超える。快適な住空間を構築するコツやノウハウ満載のYouTubeチャンネル「週末ビフォーアフター」は登録者数18万人超。総再生回数は5400万回を突破(2023年2月現在)。
公式HP:https://s-d-m.jp/talents/jyunko-furukata/
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