2023年3月26日、基礎から身につく「大人の教養」シリーズの最新刊『変わる日本語、それでも変わらない日本語』(世界文化社)が発売された。
本書は、NHKならではの徹底した調査データに基づき、"本当に使われている日本語" を61のQ&Aで読み解く、今までにない画期的な日本語本。著者・塩田雄大さんは、NHK「ラジオ深夜便」にコーナーを持つ、NHK放送文化研究所の主任研究員で、『三省堂国語辞典』の編者のひとりでもある。
「正しい」「正しくない」という観点から語られることの多い日本語だが、 年齢層や地域によっても、ことばの意味のとらえ方には大きな幅がある。本書では、「白」とも「黒」とも決めにくいこの広大な灰色の部分に対して、さまざまな調査結果を紹介し考察することで、現代日本の「ことばづかいの相場」の実態を明らかにしている。
【Chapter1 とまどう日本語】では、「味あわせる」「味わわせる」のどちらが正しいのか、「声を押し殺して号泣していた」という言い方をしてもかまわないのか、「改札らへんで待っています」という言い方は、よくないのかなど、様々な日本語の疑問に答えている。
日本語は、実際にはどう使われているのか。たとえば、「週末」とは何曜日のことだろうか。「金曜日のみ」と思う人は少数派で、「土曜日と日曜日」が約半数。とはいえ、「金曜日と土曜日」「土曜日のみ」「金曜日の夜から日曜日の夜まで」と解釈する人も一定数います。同じ日本人だからといって、同じコトバをしゃべっている、とは限らないのだ。
【Chapter4 時をかける日本語】では、「初老」は何歳ぐらいの人のことを指すのか、金曜日は「週末」に含まれるのか、「『8日以降に』手続きしてください」と言った場合、手続きしてよいのは「8日から」なのか「9日から」なのか、「一両日中にご返事ください」の「一両日中」とはいつまでになのか、といった変動の幅がある日本語について考える機会を得られる。
ことばづかいは変動相場制のようなもので、会話の相手と言葉の解釈が違うことも十分あり得るというのが本書の立場。現代の「ことばの相場観」を身につけて、自分とは異なる人たちのことばづかいを尊重し、理解を深めていくことが大事なことがわかる本だ。
■塩田雄大さんプロフィール
しおだ・たけひろ/NHK放送文化研究所主任研究員。学習院大学文学部国文学科卒業。筑波大学大学院修士課程地域研究研究科(日本語専攻)修了後、日本放送協会(NHK)に入局。2011年、博士(学習院大学・日本語日本文学)。1997年から、放送で用いる日本語の方針立案・策定に関連する言語調査・研究を担当。『NHK日本語発音アクセント辞典 新版』(1998年)、『NHK日本語発音アクセント新辞典』(2016年)の改訂などに従事。著書に『現代日本語史における放送用語の形成の研究』など。2015年からNHKラジオ第1『ラジオ深夜便』枠内コーナー「真夜中の言語学 気になる日本語」担当。
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