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音読が得意な子が人気声優に。梶裕貴の「原体験」となった本とは

(企画名)#木曜日は本曜日

 「進撃の巨人」「ジョジョの奇妙な冒険」などの人気作品で活躍している、声優の梶裕貴さんは、子どもの頃から本や本屋・図書館が好きだったそうだ。本は「僕の人生の中で大切な存在」だという。

やっぱり紙の本というのがすごく馴染みがありますし、安心しますね。質感、肌触りとか、めくる時の重み、匂いとか、それも含めて楽しいなと思います。
ただ同時に、声優の仕事をしているんですけど、やっぱり原作があるものは自宅で読んでいきつつも、収録の時に直前に振り返りたくなったりするんです。(中略)電子書籍があるとすぐに確認できるので、すごく重宝しているなと思います。

 「週に1回街の本屋さんに足を運んでもらおう」と、東京都書店商業組合が立ち上げたプロジェクト〈#木曜日は本曜日〉。毎週木曜日に著名人・インフルエンサー・作家が「人生を変えた本」を紹介する、〈東京○○書店〉が更新中だ。これまでに加藤シゲアキさん松岡茉優さん林士平さんらが登場した。

 今回は、本とさまざまな関わり方をしてきた梶さんが、声優人生に大きな影響を与えた本を教えてくれた。

今の仕事につながっている1冊

 梶さんが1冊目に紹介したのは、小学生の国語の教科書に載っていたという『アレクサンダとぜんまいねずみ』(好学社)だ。『フレデリック』『スイミー』などで知られるレオ・レオニさんの絵本で、詩人の谷川俊太郎さんが訳をしている。

 この作品を、家庭で音読する宿題が出されたことがあった。当時撮っていた音読中の梶さんの映像を、2、3年前に母親が送ってくれたそうだ。

映像を見ると、本当楽しそうにのびのびと、役ごとにちょっと声を変えてみたりとか、声を小さくして入って大きくしたりっていう(読み方をしていて)、今見ると「意外とちゃんとやってるな」みたいな(笑)。
何かを声に出して読むということを、自分にとって楽しいものだったり、特別な体験として印象づけてくれた経験というのが、もしかすると今声の仕事をしていることにつながっているのかなという意味で、本当に人生を変えてくれた1冊じゃないかなと思いますね。

 声優の仕事に近い「原体験」をもたらしてくれた1冊。昨年誕生した自身の子どもにも、「絵本を読み聞かせてあげたい」と語った。

自分が剥き出しにされた「一心同体」の作品

 特別な思いを込めて紹介したのが、諫山創さんのマンガ『進撃の巨人』(講談社)。梶さんはテレビアニメで主人公のエレン・イェーガーを演じている。2013年の第1期放送開始から今年でちょうど10年。まさに梶さんの声優人生とともにある作品だ。キャリアの面にとどまらず、内面にも影響を受けたそうで、「これがなければ今声優をやれているか(わからない)」というほど大きな存在だ。

自分というものを改めて見つめ直すというか。こんな部分があったんだなというのをすごく引き出してもらった、剥き出しにされた作品ですね。

 残酷な描写や展開が多い作品であるだけに、エレンを演じる上で、自分自身の闇や弱さといった部分にも向き合ってきた。その中で、「エレンという人間がこんなにも自分と似ていたんだ」ということに気づいていったという。

気持ちが手に取るようにわかるというか。あまり難しいことを考えずにそのセリフを見ると、「こうでしかないよね」というような気持ちが自分の中に湧き上がってきて。「こんなにも近かったんだな」という意味でも本当に「一心同体」ですね。

 マンガは2021年に完結し、テレビアニメ「進撃の巨人 The Final Season完結編」は、今年中に放送されることが決まっている。〈#木曜日は本曜日〉の取材時は、アフレコをあと1回残しているというタイミング。10年間をともに歩んできた「一心同体」の役に幕を下ろす、今の心境とは。

その作品・役を最後まで全うするというのが一番の理想ですけど、いざ終わってしまうとなると、寂しさというか喪失感みたいなものはありますね。(中略)終わった時にどう思うのか......。ただ、彼の物語は一度終わらせてあげたいなという気持ちも読者としてはあります。

小さい頃読んでいた作品に、声優として......

 動画後半では、東京都中央区東日本橋にある本屋「アスカブックセラーズ」を訪れた。児童書コーナーに並ぶ「かいけつゾロリ」シリーズ(ポプラ社)を指して、「小さい頃に読んでいたゾロリに、今声優としてアニメで関わらせていただいているのがすごく嬉しいし誇らしい」と話す梶さん。声優ならではの本との関わりのかたちに、心が温まる。

 さらに絵本コーナーには、「実家にあった」という作品がいくつも。父親がときどき絵本を買って帰ってきてくれた思い出を振り返り、本という存在に抱く思いを語った。

〈梶裕貴さんの「人生を変えた本」10冊〉

『目の見えない人は世界をどう見ているのか』伊藤亜紗(光文社)
『嫌われる勇気』岸見一郎、古賀史健(ダイヤモンド社)
『アレクサンダとぜんまいねずみ』レオ・レオニ 作・絵、谷川俊太郎 訳(好学社)
『贋作 桜の森の満開の下/足跡姫 時代錯誤冬幽霊』野田秀樹(新潮社)
『進撃の巨人』諫山創(講談社)
『海辺のカフカ』村上春樹(新潮社)
『あなたのための短歌集』木下龍也(ナナロク社)
『男子』梅佳代(リトルモア)
『銀河鉄道の夜』宮沢賢治 作、清川あさみ 絵(リトルモア)
『夜は短し歩けよ乙女』森見登美彦(KADOKAWA)

 小説、マンガ、絵本、歌集、戯曲、ノンフィクション、実用書と、ジャンルが実にさまざま。梶さんの読書の幅がうかがえるラインアップだ。

 〈東京○○書店〉は毎週木曜日に更新される。次回は誰が登場するのだろうか。

 〈#木曜日は本曜日〉公式サイトはこちら。→https://honyoubi.com/

 東京の各書店では〈#木曜日は本曜日〉オリジナルデザインのしおりを配布している。配布店舗の一覧はこちら。→https://honyoubi.com/assets/data/present_shoplist.pdf

〈東京梶裕貴書店〉しおりデザイン
〈東京梶裕貴書店〉しおりデザイン

■梶裕貴さんプロフィール
かじ・ゆうき/声優、ナレーター。第7回(2012年)、第8回(2013年)と声優アワード主演男優賞を史上初2年連続で受賞。代表作に2013年~「進撃の巨人」エレン・イェーガー役を務める。他にも、2012年~「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズの広瀬康一役、2012~2013年「マギ」シリーズのアリババ・サルージャ役、2014年~「七つの大罪」メリオダス役、2016年〜「僕のヒーローアカデミア」轟焦凍役、2019年~「MIX」立花投馬役、2019年~「鬼滅の刃」錆兎役など、多数出演。映画では2019年「天気の子」高井役、2019年「名探偵コナン 紺青の拳」リシ役、2022年「かがみの孤城」ウレシノ役などに出演。ゲーム出演は「白猫プロジェクト」主人公役、「FINAL FANTASY零式」エース役。趣味は旅行。


※画像提供:東京都書店商業組合




 


  • 書名 (企画名)#木曜日は本曜日
  • 出版社名 (主催)東京都書店商業組合

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