映画「ジョーカー」の主演を務めたホアキン・フェニックス、「ブラック・スワン」などで知られる俳優ナタリー・ポートマン、シンガーソングライターのビリー・アイリッシュなど、ヴィーガンを公言している著名人は多い。
ヴィーガンとベジタリアンの違いは? どんなきっかけでヴィーガンになり、どんな生活を送っているのか? など、ヴィーガンの実際を徹底取材した本『ヴィーガン探訪 肉も魚もハチミツも食べない生き方』(KADOKAWA)が発売された。
著者の森映子さんは、保護猫を飼い始めてから動物保護に関心を持つようになり、ヴィーガンに出合った。しかし、まだ「ヴィーガンとして生きるのは難しい」と感じているという。だからこそ本書の取材では、「健康上問題はないのか?」などの問題点にも客観的に切り込んでいる。
肉と魚は食べないが乳・卵類は食べるベジタリアンに対し、肉・魚・乳・卵、さらにハチミツやだしなど動物由来の食品を全く食べないのがヴィーガンだ。食べ物だけでなく、皮革や羽毛を使った衣服・靴や、動物実験がおこなわれた生活用品も使わない人がほとんどだという。多くの場合、ヴィーガンになる動機は動物保護だそうだ。
ヴィーガンの食生活は、不自由ではないのだろうか? 森さんは本書で、ヴィーガン料理を発信している動物保護運動家の北穂さゆりさんに話を聞いている。北穂さんは、ある日偶然トラックで輸送中の牛を目撃し、汗まみれで声をあげているつらそうな姿に愕然として、肉と魚を食べなくなったのだという。
ヴィーガン料理は、たとえば日本食の基本であるかつおだしが使えないなどの難しさがある。そこで北穂さんは、植物性の食品で味わいを補う、さまざまな工夫をしている。うま味を出すには大根、こくを出すにはココナッツオイルを使うとよいそうだ。他にも、北穂さん自家製のキムチには、うま味となるアミ(甲殻類)の塩辛の代わりに100%のリンゴジュースを使っているのだという。
また、近年注目されている大豆ミートは、大豆の臭みがネックの一つ。北穂さんは「しっかり5回ぐらい水で洗うと大豆の臭みがなくなりますよ」とコツを教えてくれている。さらに、肉の味は油の味なので、油の質にこだわるとヴィーガン料理も食べ応えが出るという。
北穂さんは、厳格に動物性食品を禁じてヴィーガンの間口を狭くするよりも、「緩いヴィーガン志向の人がたくさん存在するほうが、ベジ食品が開発されて、動物の犠牲を減らすことができると思っています」と語る。たとえば、狭いケージで飼育される鶏の「ケージ卵」から、自由に動き回れる環境で飼育される鶏の「平飼い卵」に切り替えるだけでも、「アニマルウェルフェア(動物福祉)」につながるという。もしヴィーガンに興味が湧いたら、まずは自分のできる範囲で始めてみてはいかがだろうか。
【目次】
第一章 ヴィーガンとは?
第二章 ヴィーガン食の開発で世界を狙え
第三章 なぜヴィーガンになったのか
第四章 産業として扱われる動物(1)――卵を産む鶏たち
第五章 産業として扱われる動物(2)――豚たち
第六章 鶏卵汚職事件――日本がアニマルウェルフェアに後ろ向きな理由
第七章 ヴィーガンは健康的なのか
■森映子さんプロフィール
もり・えいこ/1966年京都市生まれ。時事通信文化特信部記者。上智大学卒業。91年時事通信社入社。社会部、名古屋支社などを経て、98年から文化特信部。2021年からデスク、編集委員。エシカル消費、動物福祉などをメインに取材している。著書に『犬が殺される 動物実験の闇を探る』(同時代社)。
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