「おつかれ、頑張ってる私 頑張ってる私たち」
2022年もあとわずか。1日1日をがむしゃらに頑張り、ふと立ち止まって自分をねぎらうこともなく、気づけば年末......。そんなあなたに一押しの1冊がある。ジェーン・スーさんの『おつかれ、今日の私。』(マガジンハウス)だ。
本書は、「自分を慈しむセルフケア・エッセイ」48篇を収録したもの。「つい頑張っちゃう人 必携の書!!」の帯コピーがついている。心をつかまれる言葉のオンパレードで、元気をもらえる。
「誰にでも ねぎらわれたい夜がある」
「今日の疲れは、今日のうちにさよなら」
新卒で入った会社の元後輩と、出会って20数年になる。どちらも何度か職を変え、当時の自分たちが思ってもみなかった場所にいる話。過去に犯した取り返しのつかない失敗を思い出し、気分が暗くなった夜。美顔器で顔を撫でながら、顔と心の掃除をする話。
料理にほとんど興味がなく、簡単な作業でもたまに面倒くさくなることがある。そんなとき、料理上手だった亡き母のことを思い出す話。友人が心に不調をきたし、仕事を休んでいる。暗いトンネルの真っ只中にいる彼を、出口でそっと待つ話......。
ここでは48篇の中から、「最近、なんにも報われない」の一部を紹介しよう。
「やっぱり! なんかトラブると思ってた!」。某メーカーで制作物の進行管理を担当する仕事に就き、5年になる彼女。店頭配布用のキャンペーンチラシ制作を「急ぎで」と頼まれていた。
あっちの部署が早めの納期を設定してきたのに、なかなか詳細が決まらなかった。それでも彼女はデザイナーや印刷会社に頭を下げまくり、予定通りの納品になんとかしてこぎつけた......はずだった。
完成したピカピカのチラシを見て、「あっちの部署」の担当者は言った。「あ、キャンペーン期間が変更になったの忘れてた」。ガクッ。1万枚のチラシが......。制作し直す時間もなく、結局、チラシの配布はなくなった。
「最近、なんにも報われない。自分をすり減らして頑張っても、どこからも『ありがとう』の言葉ひとつ返ってこない。必要な人だと思われたくて、東奔西走していたら、いつの間にかそれが当たり前になっちゃった」
これは、スーさんが前に勤めていた会社の後輩から、ずいぶん前に聞いた話。「嗚呼、やるせない」。
しかし、仕事というのは「頑張りを誰にも理解してもらえず、涙がにじんでくるようなこと」の繰り返しだったりして、「自分が、どこにも配られない役立たずのチラシみたいな気分」になった経験が、スーさんにも何度もあるという。
「こういうときは、自分のことをいつも以上に大切にしたほうがいい。感情が求めるものを、注意深く観察しよう。カラオケや、友達との弾丸トークで発散したいのか、それとも、傷ついた心にそっと毛布を掛けるように、癒やされたいのか」
何かあった時に話を聞いてくれて、受け入れてくれる誰かがいればいいのだが、そんな人はそう滅多にいないもの。「自分で自分をなぐさめる方法」をいくつか持っておくことだと、スーさんは書いている。
人と会ったり、美味しいものを食べたり、映画や音楽に浸ったり。癒やしにもいろいろあるが、読書もその1つ。本書でぜひ、あなたのつかれた頭と心をときほぐして。
■目次
最近、なんにも報われない
一歩を踏み出せばなんとかなるかもよ
自分への期待を裏切る自分
婚活のしんどさについて
取り返しのつかない失敗を乗り越える方法
洗い物をしながら母を思う
なんのために生きているか
ケイミ先輩が教えてくれたこと
なりたい自分をイメージするなんて
人の気持ちを矮小化すると致命傷になるよ
トンネルの出口であなたを待つ
働く人の輝きと強さの話
おつかれ、若かった頃の私。
名前がついて腑に落ちる
思い出し怒りに満足する夜もある
上手に休むのも能力だ
ようこそ、風の時代
白黒つけない生き方
面倒と感動の全面対決
「おつかれさま」に込めた気持ち
毛足の長いじゅうたんの上で
落ち込みと立ち直りのあいだ
つまんないのだ飽きているのだ、自分と日常に
不本意な扱いを受けた
辻褄が合わなすぎる
ギリギリのライン、大丈夫?
ダメージを克服しようなんて考えなくていい
自室にハワイを手繰り寄せるには
そういう性分
自分と他者との境界線
なにをしても許されてしまう人をうらやむ
自分ではどうにもならないこともある
彼にピッタリな子はほかにいる
ダメダメな日の妄想術
弱った自分からの脱却イニシエーション
好きでもない人に好かれなくていい
私はしあわせジャンキー
美味しいねえと楽しいねえ
洗顔ほど面倒くさいものはないよ
「必要とされている」と「利用されている」は別モノだ
この人と一緒にいれば......
仕事でいちばん大切なこと
失敗が私を作ってきた
仲良くなりたかったら本音を言うしかないのだ
悪口大会の教訓
一度、ぜんぶ止めてみたらいいのよ
「私なんかが」の呪い
しあわせについてのネオ心理
おわりに
■ジェーン・スーさんプロフィール
1973年、東京生まれ東京育ちの日本人。作詞家/コラムニスト/ラジオパーソナリティ。TBSラジオ「ジェーン・スー 生活は踊る」、ポッドキャスト番組「ジェーン・スーと堀井美香の『OVER THE SUN』」のパーソナリティとして活躍中。『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』で第31回講談社エッセイ賞を受賞。著書に『生きるとか死ぬとか父親とか』『これでもいいのだ』『ひとまず上出来』『きれいになりたい気がしてきた』など多数。
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