12月19日発売の「AERA(アエラ)2022年12月26日増大号」(朝日新聞出版)の巻頭特集は「サッカー日本代表『世界は近かった』」。
日本中に熱狂を巻き起こしたサッカーW杯。特集では、代表の活躍という「光」とともに、人権問題や環境問題、放映権料の高騰など「影」にも深く切り込んでいる。
強敵ドイツ、スペインを破り感動を呼んだサッカー日本代表。ただ、今回のW杯でも8強入りは果たせなかった。もっと強くなるためには何が必要なのか。サッカー元女子日本代表の丸山桂里奈さんは「若手が伸びて選手層に厚みがでるといい」と語り、元男子日本代表の本並健治さんは「個人のレベルがより上がらないと4年後は厳しい」と檄を飛ばす。
だが、「4年後は厳しい」のは日本代表だけではない。私たちがワールドカップを視聴する環境も、このままでは維持できない可能性があるという。広島経済大学経営学部教授の濱口博行さんは、「この先、放映権の購入がネットにシフトし、DAZNのような有料放送が中心になるとすれば、視聴できる人とできない人との間で分断が進むことになる」と懸念している。
今大会、日本のテレビ局で試合の放映権を購入したのはNHK、テレビ朝日、フジテレビだけ。2014年ブラジル大会まではNHKと民放が組み「ジャパンコンソーシアム」という形で一括購入していたが、今回は離脱する局が出た。また、昨年のアジア最終予選では日本代表のアウェー戦中継が地上波から消え、有料の動画配信サービス「DAZN」でしか見られなかった。変化の原因はともに、「放映権料の高騰」にあるという。
W杯の放映権料は1998年フランス大会までは非常に安く抑えられていたが、FIFA(国際サッカー連盟)の内紛などをきっかけに急騰した。
その結果、 02年日韓大会の放映権料の総額は98年フランス大会の約100億円から1千億円へと跳ね上がり、そこから放映権料はうなぎ登りで膨らみ続けました。高すぎる放映権料に、若い世代のテレビ離れで経営状況が苦しいテレビ局は二の足を踏む。一方で、「ABEMA」など広告収入でテレビを上回るネット業界が放映権を購入したわけです。(濱口さん)
公共放送が盛んな欧州では、五輪やW杯など重要なスポーツ中継は無料で見られるべきだとする「ユニバーサルアクセス権」という考えが、社会に浸透しているという。濱口さんは「日本でもその意識を高め、『すべての人が見られるW杯に』を真剣に考える段階にきている」と、警鐘を鳴らしている。
特集では、著名人へのインタビューも掲載。ベストセラー『人新世の「資本論」』で知られる経済思想家・斎藤幸平さんも登場した。斎藤さんは11月18日、ツイッターでW杯のボイコットを宣言したという。
斎藤さんはボイコットの理由として、「開催国のカタールで外国人労働者に対する人権侵害があること、同性愛が法律で禁止されていること、そして気候危機の問題意識から」としている。人口約293万人のカタールが、W杯のために収容人数最大10万人規模のスタジアムを新たに7つ建設し、そのために数百人の労働者を犠牲にしたことについて、「わずか1ヵ月の金儲けのために払われた犠牲としては、あまりに大きい」と嘆く。
また、W杯が盛り上がるほどに、人権問題や環境保護といった重要な課題が不可視化され、商業主義に屈していく「スポーツ・ウォッシング」という現象にも言及。W杯へさまざまな抗議が行われた欧州に対して、日本では特に「スポーツ・ウォッシング」が顕著だったと指摘する。
一方、日本サッカー協会の田嶋幸三会長は「サッカー以外のことで問題視するのは好ましくない」と発言。解説が人気を集めた元日本代表の本田圭佑さんや内田篤人さんも、今大会が抱えている問題には一切コメントしませんでした。なにも政治的な話題ではないのです。その一歩手前の「人権を守ろう」「地球を大切に」というのはスポーツの前提ですから、影響力ある人たちにも声を上げてもらいたかったですね。(斎藤さん)
特集ではこのほか、福田正博さんや芸人ワッキーさんから日本代表への愛ある提案や、現地で取材した記者によるW杯振り返りなど、さまざまな記事を掲載。
表紙は、俳優の町田啓太さん。大活躍だった今年を振り返り、出演した様々な作品について語っている。
映画「太陽とボレロ」では「楽しむことは最強なんだと感じさせてくれた」、初のゴールデンタイム主演を務めたドラマ「テッパチ!」では「もう頭が燃えるんじゃないかと思うくらい考えました」と回想。また、以前は「寝る時間が少なくてもいいので仕事がしたい」と思っていたが、今では「自分をないがしろにしてはいけない]と思うようになったという。「頑張れるときもあれば頑張れないときもある。周囲が補い合えたらいいな」と、素直な気持ちを吐露していた。
このほか、連載「向井康二が学ぶ 白熱カメラレッスン」では、「海の写真の撮り方、教えてほしいんよね」という向井さんと、日頃から海でポートレート撮影をしている舞山秀一さんが、千葉の九十九里浜での撮影に挑戦。連載「松下洸平 じゅうにんといろ」は、新たなゲスト木村多江さんとの対談が、今号から4回続く。今春のドラマ「やんごとなき一族」で初共演し、親子役だった2人が、互いの印象を語り合っている。
今号では、以下の記事も掲載。
中国 ゼロコロナ後の混乱と恐怖
物価高の師走を歩く 生きるだけで精一杯
食品業界の「3分の1ルール」見直し加速
部活やクラブで「ノーモア暴力」 子の未来預けられない
保育士の暴行の背景 人権意識を欠き危うい保育に
ソニーな人たち⑥最前線に立つ現場主義
羽生結弦 八戸の「悲愴」とファンへの"GIFT"
宇野昌磨が圧巻 GPファイナル優勝
コロナ禍の冷凍グルメ最前線 楽したい時も贅沢したい時も
品田遊(ダ・ヴィンチ・恐山)×上田信治
大宮エリーの東大ふたり同窓会 ゲスト・宮田裕章
棋承転結 森下卓九段
現代の肖像 新井和宏・eumo代表取締役
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