2022年9月23日、鎌倉鶴岡八幡宮から徒歩1分の参道にオープンした、〈英国アンティーク博物館 BAM鎌倉〉。建築設計・デザインを手がけたのは、世界的建築家の隈研吾さんだ。
〈BAM鎌倉〉がどのようにしてつくられたのか、そして〈BAM鎌倉〉の見どころがふんだんに詰まった1冊『隈研吾 鎌倉に小さな英国アンティーク博物館をつくる訳』(成山堂書店)が発売されている。
〈BAM鎌倉〉では、シャーロック・ホームズの部屋や、ヴィクトリア時代を再現した豪華絢爛な部屋など、館長・土橋正臣さんこだわりの空間が楽しめる。隈さんと土橋さんが〈BAM鎌倉〉をつくり上げる過程を撮影したのは、写真家の森日出夫さんだ。
本書Chapter1では、隈さんのインタビューと隈さん・土橋さんの対談を通して、タイトルの通り〈BAM鎌倉〉をつくった「訳」を探る。そして、Chapter2では〈BAM鎌倉〉の建物自体の建築のこだわりを解説。Chapter3は、4階まである〈BAM鎌倉〉の各フロアの内装のガイドになっている。
【Chapter 1】鎌倉と英国を結ぶヒトとモノの深い繋がり
・鎌倉――英国 アンティーク博物館 隈研吾
・対談(隈研吾×土橋正臣)過去と未来を繋ぐ建築
隈さんによる外観のデザインは、鎌倉彫からインスピレーションを受けたという。木を削った刃物の跡をイメージし、武士のつくった都らしさを表現した。
実は、隈さんと鎌倉、そしてイギリスには、思わぬ繋がりがあるのだそう。隈さんにとって鎌倉は、中学・高校時代を過ごした思い出深い場所。さらに隈さんは、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館(V&A)の分館である、デザイン美術館・V&Aダンディー(スコットランド)の設計を手がけたのだ。
(依頼を受けたとき、)日本を代表する古都にイギリスのアンティークという組み合わせがすごく素敵だなと思ったんですよ。
(「隈 研吾スペシャルインタビュー『英国アンティーク博物館BAM鎌倉』を語る! Interviewer:館長 土橋正臣」より、隈さんのコメント)
隈さんと土橋さんの対談は、YouTubeでも公開されている。
【Chapter 2】BAM建築とは、最新技術を施した鎌倉彫のファサードによる木質化
・土地の話、ファサードと鎌倉彫、家具職人の技術
・シンプルな3つの文字に込められた伝統と新しさ
・KENGO KUMAデザインの茶室
〈BAM鎌倉〉の4階には、隈さんがデザインを手がけた小さなティールームがある。1900年頃にスコットランドで活躍した建築家チャールズ・レニー・マッキントッシュの代表作「ウィロー・ティールームズ」にインスピレーションを受けてできた空間だ。しかも面白いことに、マッキントッシュは日本の美術に大きな影響を受けていたという。
隈さんが手がけたティールームには、〈BAM鎌倉〉建設時に土地から見つかった800年前の木材が使用され、ティールームでありながら日本古来の茶室のような味わいに。まさに英国と鎌倉の歴史が詰まった空間だ。
掛け軸のような窓からは、鶴岡八幡宮の本殿と鳥居がばっちりと見える。さらにその向こうに見える裏山は、英国のナショナルトラストの思想に影響を受けた小説家・大佛次郎によって、都市開発から守られたのだそうだ。こんなところにも、鎌倉と英国の思わぬ繋がりが。
【Chapter 3】ようこそ、英国のアンティーク博物館「BAM鎌倉」へ、各フロア解説
古き良きそれぞれの時代の英国を味わえる、こだわりの4フロア。各フロアのテーマや、アンティークの背景を解説している。ぜひ本書を片手に、〈BAM鎌倉〉を訪れてみてほしい。
・1st Floor ヴィンテージフロア
エントランスに鎮座するロンドンタクシー
グランドフロアに張り巡らされた鎌倉彫モチーフの天井
・2nd Floor ジョージアンルーム アンティークシルバーの歴史、ハープ
・3rd Floor シャーロック・ホームズの部屋
・4th Floor ヴィクトリアフロア 英国女王の作り上げた繁栄の歴史
■隈研吾(くま・けんご)さん
建築家。東京大学建築学科大学院修了。1964年東京オリンピック時に見た丹下健三の代々木屋内競技場に衝撃を受け、幼少期より建築家を目指す。大学では、原広司、内田祥哉に師事し、大学院時代にアフリカのサハラ砂漠を横断し、集落の調査を行い、集落の美と力にめざめる。コロンビア大学客員研究員を経て、1990年、隈研吾建築都市設計事務所を設立。 これまで30か国を超す国々で建築や2020東京オリンピックの国立競技場の設計をして、国内外で様々な賞を受けている。(日本建築学会賞、フィンランドより国際木の建築賞、イタリアより国際石の建築賞、ほか)その土地の環境、文化に溶け込む建築を目指し、ヒューマンスケールのやさしく、やわらかなデザインを提案している。また、コンクリートや鉄に代わる新しい素材の探求を通じて、工業化社会の後の建築のあり方を追求している。
■土橋正臣(どばし・まさおみ)さん
BAM鎌倉 館長、英国アンティークコレクター。1966年生まれ。長崎大学薬学部大学院修了。ファイザー中央研究所の研究員を経て、2007年株式会社ファーマブリッジを設立。また、大学院卒業後に初訪問したイギリスの文化に衝撃を受け、2012年鎌倉アンティークスを設立。英国アンティーク輸入やイギリス関連イベントのコーディネートを手掛ける。日本一のロンドンタクシーコレクターとして、本物のブラックキャブを年代別に所有する。また、古き良きものを継承する啓蒙活動の一環「No Antique No Life」として、長年の夢であった「英国アンティーク博物館BAM鎌倉」を鎌倉に建設。
■森日出夫(もり・ひでお)さん
写真家。横浜市生まれ。JPS(日本写真家協会)所属。長年撮り続けた横浜の港・街・人を「森の観測」と名づけ、それらの作品を写真集や個展に多数発表している。独自の感性で森の「記憶」を記録する。
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