ギャーッ! という怪談とまではいかないけれど、思い返すと「あれ、なんだったんだろう......」と腑に落ちない話。べつにおばけとかではないけれど、日常の中でちょっとぞわっとした話。そんな話を、イラストレーターの三好愛さんは「怪談未満」と名づけた。
夏が過ぎ、怪談シーズンが終わったあとは、『怪談未満』(柏書房)でぞわっとするのはいかが?
本書には三好さんの実体験にもとづく「怪談未満」が27篇おさめられている。各エピソードには、愛らしいけれどどこか不穏な三好さんのイラストが添えられていて、「怪談未満」の世界観をより演出する。
誰もいないはずの新居の、冷蔵庫と収納棚の隙間に、なにかモフッとしたものがある「モフッとしている」。
恋人と二人暮らしの部屋のリビングの出窓から、バス停の様子を観察する「私たち劇場」。
飛行機で飲むコンソメスープと祖母の死の記憶がなぜか結びついてしまっている、「死ぬこととあたたかなスープ」。
幽霊も妖怪も出てこないけれど、なんだかぞわっとする。そんな不思議な感覚がきっとクセになるはず。本書後半の第二部は、妊娠・出産・子育てにまつわる「怪談未満」が集められている。「自分の中に自分以外のなにかがある」という感覚の不思議さは、妊娠を経験した方なら共感できるのでは。
〈三好愛さんのコメント〉
生きてるとたまに起こるもやもやとしたできごとを、誰にともなく伝えるように「怪談未満」として書き綴ってみました。文章を書いたご褒美的な感じで、それぞれのエッセイの挿絵を仕上げていったんですが、特に気に入ってるのは胎盤を擬人化した絵です。文章と絵、合わせてパラパラとめくっていただけると嬉しいです。
日常の中にひそむちょっと奇妙な世界へ、連れていってもらおう。
■もくじ
第一部 日常の不気味
モフっとしている
あえぎ声の輪郭は
幽霊の手
お母さんじゃないもの
ランドセルの不思議
言葉で伝えるときのこと
恐怖のエレベーター
妖怪! ギャラリーおじさん
ポータブル神様
私たち劇場
Kさんがもう一人
なりすましの走馬灯
トイレの先生
死ぬこととあたたかなスープ
においのいきどまり
忘れてしまう
人と家電と死番虫
第二部 産むことの不思議
なにかいる
名前と離れて
松重豊が憎い
怪しい戌の日
胎盤のもくろみ
赤ちゃんがループする
ミルクの雪山
がんばれがこわい
人間から人間が出てくること
もやもやのゆくえ
■三好愛(みよし・あい)さん
イラストレーター。東京都在住。装画と挿絵を数多く手がける。主な仕事に伊藤亜紗『どもる体』、藤野可織『私は幽霊を見ない』、川上弘美『某』、高橋源一郎『誰にも相談できません』、宮部みゆき『魂手形 三島屋変調百物語七之続』。クリープハイプのツアーグッズなども手がける。初の著書『ざらざらをさわる』(晶文社)は「キノベス!2021」15位にランクイン。
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