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「新しい形の家族」めざすryuchell。著書で明かしていた違和感とは?

こんな世の中で生きていくしかないなら

 タレントのryuchell(りゅうちぇる)さんが8月25日、自身のインスタグラムで妻のpecoさんと「新しい形の家族」になることを発表した。

 メディアを通して、これまでの生き方や夫としての自分について語る機会が増えるにつれて、「"本当の自分"と、"本当の自分を隠すryuchell"との間に、少しずつ溝ができてしまった」と告白したryuchellさん。どんな葛藤があったのだろうか。

 心中は計り知れないが、昨年10月に発売された著書、『こんな世の中で生きていくしかないなら』(朝日新聞出版)の中では、「イクメン」と呼ばれることや、「自己肯定感」という言葉に違和感があったと明かしている。

とにかく「ありのままの自分」を隠していた

 『こんな世の中で生きていくしかないなら』は、ryuchellさんが自身のバックグラウンドをたどりながら、多様性や自己肯定感、人間関係、子育てなどについて率直に綴った初の著書だ。

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 幼いころから「人と違う」と言われ続け、中学時代には「女子っぽい」とからかわれないように、「なめられない男子」になるために、とにかく「ありのままの自分」を隠していたというryuchellさん。悩みながらも自分を大切に生きてきた、と綴っている。

 Chapter1「「自己肯定感」なんて簡単に言うけどさ......」では、自己肯定感を持って生きることは大切だという考えから「子育ての主軸にしている」とする一方で、世の中の風潮に違和感を覚えていたことがうかがえる。

 様々な取材で何度も「自己肯定感」について聞かれ、その度に「大人になってから自己肯定感を身につけることや、自分を好きになることは、とても難しいことだと思う」と答えてきたryuchellさん。しかし、記事になったときには「自分を愛することから始めよう」などのキラキラした言葉に変わってしまっていたという。

自分を愛することって、そんなに簡単なことじゃない。自己肯定感の形成は、子どものときに、周りの大人たちがどんな接し方をしてきたかが大きく影響すると言われている。だから、大人になってから自己肯定感を手に入れるのは、並大抵のことではない。

 自分を好きになれない人に向かって「まずは自分のことを愛することから始めよう!」などと言うのは綺麗事なのでは? とryuchellさんは問うている。

「ジェンダーレス男子」「イクメン」に抱く違和感

 「多様性」のアイコンのような扱いを受けることにも、抵抗があったようだ。ryuchellさんはテレビに出始めた頃、「ジェンダーレス男子」と言われるようになった。言葉だけがひとり歩きしているような感覚があり、違和感を抱いた。カテゴライズすることで、「パーソナルな部分」が見落とされてしまうこともある。ただ、「りゅうちぇるがテレビに出てくれて、『男の子でもこんなふうに生きていっていいんだ』って思えてラクになった」という嬉しい声も届くといい、「結果的に悪いことばかりではなかった」と前向きにとらえている。

 また、「イクメン」という言葉に対しても苦手意識があるという。「イクメン オブ ザ イヤー2018」を受賞したときも、実はモヤモヤしていた。「イクメン」という言葉は、父親が育児をすることが"特別"という印象を与えてしまうからだ。育児をする父親が特別という世界ではなく、当たり前の世界になってほしい、とryuchellさんは言う。

 ryuchellさんは本書で、「こんな世の中を生きていくための5つの武器」として「諦めること」「割り切ること」「逃げること」「戦わないこと」「期待しないこと」を挙げている。生きづらさを抱えながらも、pecoさんという一番の理解者とお子さんと共に「新しい形の家族」を築いていくというその決断を、応援したい。


※画像提供:朝日新聞出版


 
  • 書名 こんな世の中で生きていくしかないなら
  • 監修・編集・著者名りゅうちぇる 著
  • 出版社名朝日新聞出版
  • 出版年月日2021年10月 7日
  • 定価1,320円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・200ページ
  • ISBN9784023319677

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