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「ちゃんと大好きなんだ」坂本美雨、話題の子育てエッセイで父との思い出を綴る

ただ、一緒に生きている

   ミュージシャンとして活躍する坂本美雨さんが東京新聞で2016年から連載している子育てエッセイが、大幅な書き下ろしを加えて書籍化された。6月22日発売の『ただ、一緒に生きている』(光文社)には、愛娘なまこちゃん(愛称)の0歳から幼稚園の卒園を見守った6年間が綴られている。

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   うっかり者の美雨さんと、しっかり者のなまこちゃん。感動したり落ち込んだり悩んだり。育児中の方には共感できるエピソードも多いだろう。

育児、を私はほとんどしていない

   本作のために書き下ろされた新作エッセイは、5タイトル収録されている。自らの両親や子供時代について語った「生い立ち」をはじめ「妊娠・出産」「猫と子ども」「旅について」「卒園・おしまいに」とボリュームたっぷり。子どもと一緒に読みたいおすすめの本や、多忙な育児中の心を癒してくれた音楽も紹介している。

「時おり、娘と歩きながら自分がお母さんだなんて、まるで演技でもしているみたいだなと不思議な気持ちになる。こんな日がくるなんて思ってもみなかった、の連続だ。」(妊娠と出産)

「もしかしたら、なんて不謹慎な、と感じられる方もおられるかもしれないけれど、妊娠がわかってから一番不安だったことは、ネコを愛するのと同じくらい自分は果たして人間の子を愛せるだろうか、ということだった。」(猫と子ども)

「娘は、どこで暮らしていくんだろう。空から見た、どこにも線なんか引いてない世界で生きて いってほしい。」(旅について)

「いつだったか、当日になって教授のライブに行けなくなったことがあった。純粋にライブを楽しみにしていたのか、ただ父に会いたかったのか、それはいつも混ざり合っていたからわからない。でもいかなければつながりが途切れてしまう気がした。胸がずきずきして、布団に潜ってわんわん泣いた。たまにこうして、ちゃんと大好きなんだと突き付けられた。(生い立ち)

「育児、を私はほとんどしていないと思う。ただ一緒に生きているだけ。一緒に育っている。本当に私は子どもに許されて生きている。娘に見せているのは、一番生々しい自分だ。」(卒園・おしまいに)

 「教授」と呼ぶ父・坂本龍一さんへの思いも、坂本さんにとって、母になって気づいたことの一つなのかもしれない。

必読! 佐治晴夫さんとの子育てトーク

   エッセイのほか、未公開写真も多数掲載されている。「母娘、美瑛の旅(カラーグラビア)」では、2022年のなまこちゃん卒園後におとずれた美瑛への旅に密着した。

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   また、理論物理学者・佐治晴夫さんとの対談も興味深い。坂本さんとは10年ぶりの再会となる佐治さんは、3 人のお子さんを育てた経験を持ち、宇宙や科学を通して教育にも深くかかわっている。そんな佐治さんと、「子育て」について、「親であるということ」について、そして「宇宙」について語り合う。

   多忙な育児の中での気づきがまっすぐに綴られている珠玉のエッセイ集。子育てにちょっと疲れた時に、読みたい一冊。

■坂本美雨(さかもとみう) さんプロフィール
ミュージシャン。1980年5 月1日生まれ。1997年「Ryuichi Sakamoto feat. Sister M」名義で歌手デビュー。音楽活動にとどまらず、ナレーション、執筆、演劇など表現の幅を広げる。2015年に長女を出産。自身の SNS では愛猫"サバ美"と娘との暮らしぶりをありのままにさらけ出している。


※画像提供:光文社


 
  • 書名 ただ、一緒に生きている
  • 監修・編集・著者名坂本美雨 著
  • 出版社名光文社
  • 出版年月日2022年6月22日
  • 定価1760円(税込)
  • 判型・ページ数四六判、240ページ
  • ISBN9784334953126

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