文部科学省の調査(2021年)によると、小中学校における不登校児童生徒数は、全国で約19万6千人に及ぶという。ある朝、突然、子どもが学校へ行かなくなり、理由を尋ねてもはっきりした答えはない。「2、3日様子を見よう」と思っていたら、1週間が経ち、1カ月経っても一向に学校へ行く気配はない。苛立ち、焦り、なんとか学校へ行かせようとなだめたりすかしたり、叱責したり......。そんな悩める親たちの気持ちに寄り添い、自身の体験談をもとにブログでアドバイスをしているのが、不登校コンサルタントのランさんだ。
28歳で起業し、33歳で娘を出産したランさんはかつて、一家の大黒柱としてバリバリ働くワーキングマザーだった。ところが、娘さんが中学1年生の時に不登校になり、休職。毎日我が子と向き合う中で、数々の失敗を経験した。しかし、娘さんは今では「びっくりするくらい明るい大学生」になっているという。
ランさんは著書、『子どもが不登校になっちゃった!』(すばる舎)で、不登校から我が子を脱出させるために苦悩した約5年間の軌跡を赤裸々に綴っている。自らの体験談に加え、約500人もの親御さんたちの相談内容からわかってきた「不登校のリアル」や「不登校あるある」、「不登校回復までの7つのステップ」、「親のための不登校脱出思考トレーニング」など、具体的かつ実用的なアドバイスが満載だ。
たとえば、「不登校あるある」。その一つに、「行く行く詐欺・やるやる詐欺」がある。「学校に行く。塾に行く」と言ってたのに「当日ドタキャン」はお決まりのパターンだ。学校や塾の時間が近づいてくると「頭が痛い」と体調不良を訴えたり、「そろそろ準備して」と促すと「そんなこと言うから行く気なくした」と親のせいにしたり。振り回される親は疲れてしまう。
しかし、そんな行動にも子どもなりの理由があるという。ランさんによれば、「行く」という発言は、罪悪感からくるもの。それでも、どうしても行くことができないのだ。
子どもはウソを言っていません。やらないのではなく、できないのです。
行く行く詐欺、やるやる詐欺は、子どもの心が回復し、自分の将来に希望が持てた時になくなります。子どもはどうして良いか分からず不安なのです。(本文より)
ほかにも、「ごはんを食べない」「普通の会話はするのに肝心な話はしない」「生きている価値がない、どうせ自分はダメだと言う」など、「不登校あるある」の背景にある子どもの気持ちをていねいに解説している。
一方、不登校の子どもを持つママの「あるある3大ストレス」は、次の通り。
1.毎朝ブルーな学校への出欠連絡
2.ママ友に会うのがつらくなる
3.親とダンナの心ない言葉と余計なお世話
今まさに、我が子の不登校問題に直面している方は、いずれも思い当たるのではないだろうか。
ランさんによれば、不登校になりやすい親子の組み合わせがあるという。
<親の特性>
・きっちり子育てしている
・失敗させまいと子どもの先回りをし、あれこれ言う
・人の目や評価を気にする
・責任感が強い......など。
<子どもの特性>
・真面目
・優しい
・物分かりが良い
・一生懸命・がんばりやさん
・正義感が強い......など。
責任感の強い人ほど、しつけが厳しくなりがちで、あれはダメ、こうしなさい、できてない!...と、ついつい子どもを否定する言葉を発してしまう。一方、真面目でがんばりやさんの子は、大人の言いつけをきちんと守ろうとする。できたらできたで、大人の要求は上がる。それができないと、「自分はダメなんだ」と思い込んでしまう。自己肯定感の低下が、不登校につながりやすいのだという。
とはいえ、そうした親子の組み合せなら、ごまんとありそうだ。ランさんは、これに当てはまるからといって、「決して『私のせいでこの子は不登校になった』と自分を責めないでください」と説く。
本当にあなただけのせいであれば、あなたよりもっとしつけの厳しい親たちの子どもも学校に行けていないはずです。(本文より)
本書では、「親のための不登校脱出思考トレーニング」の方法が、4つのステップで紹介されている。不登校の問題が起こる原因と回復するプロセスを心理学の観点から理解し、子どもの自己肯定感を上げるための「聴く・話す」スキルを学ぶことができる。さらに、我が子の不登校に悩んだ経験のあるママたちからの、リアルな声も。
ランさんはあとがきで、「不登校はキラキラ輝く人生の始まり」だと書いている。出口の見えないトンネルの中にいる親御さんは、とてもそんな風には思えないかもしれないが、同じ苦しみを味わった人たちの声は、なんらかのヒントをくれるだろう。
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