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ラブレターが消えた?『鎌倉殿』新ヒロイン「比奈」は、史実からどう変わったのか

ミネルヴァ日本評伝選 北条義時 これ運命の縮まるべき端か

 6月5日、大河ドラマ『鎌倉殿の13人』第22話では、第21話で亡くなってしまった八重(新垣結衣さん)の後を引きつぐ形で、物語後半のヒロインの一人になると予想される比奈(堀田真由さん)が登場して話題を呼んだ。

 主人公である北条義時(小栗旬さん)の史実における正妻である比奈の登場に期待が高まる一方、初登場の時点で二人の関係の描かれ方にも注目が集まっている。今回は、史実における比奈と義時の関係について紹介する。

義時のラブレターを二年間無視

 実は、2代執権・北条義時の正妻であるにも関わらず、比奈(史実で使われる名前は「姫の前」)は、鎌倉幕府の公式歴史書『吾妻鏡』にはほとんど登場せず、その素性を知ることができる記述はわずか一文しか残っていない。

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『現代語訳 吾妻鏡〈5〉征夷大将軍』(吉川弘文館)

 『現代語訳 吾妻鏡〈5〉征夷大将軍』(吉川弘文館)によれば、それは次のような記述だ。

 二十五日、甲午。姫の前と称する幕府の官女が、今夜初めて江間殿(北条義時)の邸宅に渡った。これは比企藤内朝宗の息女で、時に、権威無双の女房であった。格別に(頼朝の)お気に入りで、また容姿がとても美しいという。ところが江間殿がこの一、二年の間、彼女にひかれて頻りに消息を書かれたが、一向に受け入れられなかったところに、将軍家(源頼朝)がこのことを聞かれ、離別はしないとの起請文を(義時から)取って、(義時のもとへ)行くよう、その女房(姫の前)に命じられたので、(姫の前は)起請文をもらい受け、結婚の儀に及んだという。

 二十五日とは、1192年9月25日のこと。同じ第22話で描かれた後白河法皇の死(1192年)や、曾我兄弟の敵討ち(1193年)と時代は変わらないので、年代としては史実通りだ。頼朝のお気に入りで容姿がとても美しいという部分も吾妻鏡の記述に沿っているが、二人の出会い方はまったく違う。

 大雑把に解釈すれば、義時は、「権威無双」で「容姿がとても美しい」比奈に、2年近くラブレターを送り続けていたが、相手にされなかった。それを知った頼朝が恋のキューピッドになり、「決して離婚しない」という誓約書を義時に書かせて、二人の仲を取り持った......というのが吾妻鏡に書かれている出来事だ。だがドラマでは、義時はついこの間まで八重にベタ惚れだったことになっている。

 しかも、「頼朝のお気に入り」の女性に義時がアプローチするという構図は、八重との関係の中で既に描かれている。

悲劇的な離婚はどう描かれるのか

 また、比奈はのちに、義時と悲劇的な別れを経験することになる。

 比奈の実家である比企一族は、頼朝亡き後、義時ら北条氏と対立するようになる。そして1203年、比企一族は義時の父・時政(坂東彌十郎さん)の謀略によって一族郎党皆殺しにされてしまうのだ。

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『 ミネルヴァ日本評伝選 北条義時』(ミネルヴァ書房)

 その頃比奈がどんな風に過ごしていたのかはよく分からないが、『北条義時』(ミネルヴァ書房)や『北条重時』(吉川弘文館)によれば、どこかのタイミングで義時と離婚し、別の男性と再婚したことが確認されているという。この離婚のタイミングがいつになるのか、義時が比企一族の滅亡にどう関わるのかは、ドラマの中でキーポイントになるかもしれない。

 もし義時が妻の実家を容赦なく滅ぼし、事件の前に自主的に離婚を切り出す――という展開になれば、義時がなぜそんなに冷酷な行動をとったのかが焦点になるだろう。逆に、義時は時政の陰謀に巻き込まれただけで、やむを得ず比奈と離婚することになった――という展開なら、義時・時政親子の確執と、義時・比奈の夫婦関係がストーリーの中心におかれることになるのでは......と、あれこれ想像を巡らせるのも楽しい。

 義時は、妻を平然と切り捨てる冷酷な男なのか、それとも、父に夫婦の絆を壊される悲劇の人なのか。三谷幸喜さんの脚本がどのように二人の関係を描くのか、今後の展開から目が離せない。


  • 書名 ミネルヴァ日本評伝選 北条義時 これ運命の縮まるべき端か
  • 監修・編集・著者名岡田清一(著/文)
  • 出版社名ミネルヴァ書房
  • 出版年月日2019年4月11日
  • 定価3,300円(税込)
  • 判型・ページ数四六判 304ページ
  • ISBN9784623086047

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