ロシアによるウクライナ侵攻は、いまだ悲惨な状況が続いている。戦争とは何か、平和とは何かを親子で考えることができる絵本が、2022年6月3日に発売された。ウクライナの絵本作家が作った、『戦争が町にやってくる』(ブロンズ新社)だ。
本書の制作は2015年。2014年に勃発した、ロシアのクリミア侵攻とウクライナ東部の戦争を受けて、作者のロマナ・ロマニーシンさんとアンドリー・レシヴさんが「この国で何が起こっているのか」「戦争とは何か」を子どもたちにわかりやすく伝えようと、この絵本を作った。
刊行から7年、ウクライナは再び戦場となってしまった。繰り返される悲劇の中で、この絵本のもつ意義はいっそう大きくなるだろう。
『戦争が町にやってくる』は、刊行された2015年に、優れたグラフィックデザイン・ブックデザインの児童書に贈られる「ボローニャ国際絵本原画展 ラガッツィ賞」を受賞した。その後フランス、スロベニア、韓国、中国、アメリカ、アラビア、チェコなど世界各国で翻訳され、今回の日本語版で15言語目の翻訳出版となった。作者の2人には、実際に軍事活動が行われている地域の子どもたちから何十通もの手紙や絵が届いているという。
〈あらすじ〉
美しい町・ロンドで、人々は花を育て、鳥や草木に話しかけながら楽しく暮らしていた。
ところがある日突然、ロンドに「戦争」がやってきた。「戦争」を知らないロンドの人々はおろおろするばかり。
電球のような体をもち明るく光るダーンカ、風船のような体をもち探しものが得意なファビヤン、紙の翼で空を飛ぶことができるジールカの3人は、知恵をしぼってロンドを暗闇から救い出そうとする。
「やさしく、勇気のあるダーンカとジールカとファビヤンは、
最初は、戦争にはなしかけて、でていってくださいとたのみました。
ところが、戦争はしらん顔で、まえへまえへとすすむばかりです。
戦争がつれてきたおそろしい機械が、また攻撃をはじめました。
カタカタ、ヒュッと音をたてながら、火花をまきちらし、するどい石をなげつけるのです。
石がひとつ、ダーンカの胸にあたりました。
それも心臓のまうえに。
ダーンカの全身にクモの巣のようなひびが走りました。
火花がジールカにふりかかると、たちまち翼が燃えあがりました。
黒い花がファビヤンの目の前にのびてきて、足にとげがささりました。
戦争は、だれひとり、みのがしません。
ロンドの人々が育てている赤いひなげし(ポピー)は、11月11日に戦死者を追悼する「リメンバランス・デー」のシンボルだ。1918年のこの日に第一次世界大戦が終息したことを記念して、毎年イギリス王室が参列して黙祷がおこなわれている。
いつの時代も人々は平和を願っているが、一方で、毎日世界のどこかで戦争・紛争が起こっている。未来をになう子どもたちと一緒に、いまこそ戦争と平和について考えてみてはいかがだろうか。
■ロマナ・ロマニーシンさん、アンドリー・レシヴさんプロフィール
絵本作家、アーティスト。ともに1984年生まれ。ウクライナのリヴィウを拠点に活動する。リヴィウ国立美術大学を卒業。アートスタジオAgrafka主宰。2011年、ブラチスラバ世界絵本原画展(BIB)で出版社賞を受賞。2017年『うるさく、しずかに、ひそひそと』でBIB金牌を、2018年『うるさく、しずかに、ひそひそと』『目で見てかんじて』 (共に、広松由希子 訳/河出書房新社)でボローニャ・ラガッツィ賞を受賞。世界が注目する新進気鋭のユニット。
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