2022年3月24日、新潮社より、九州大学准教授の小笠原弘幸さんの『ハレム 女官と宦官たちの世界』(新潮選書)が発売された。
ハレムとは、かつてイスラム世界に存在した後宮のこと。いま日本ではこのハレム(日本では「ハーレム」とも表記)が密かなブームとなっている。たとえば、全世界で8億人が視聴している海外ドラマ『オスマン帝国外伝~愛と欲望のハレム~』が日本でも放映され、熱心なファンを生み、また宝塚歌劇団でも、オスマン皇帝スレイマン1世を主人公にした宙組公演『壮麗王』が人気を集め、ハレムを舞台にした篠原千絵さんの人気漫画『夢の雫、黄金の鳥籠』(小学館フラワーコミックスα)も、累計330万部を超える大ヒットとなっている。
ところが、これまで日本語で書かれた一般書で、ハレムを主題にした本は存在せず、今回出版される『ハレム 女官と宦官たちの世界』が、日本初のハレム研究本になるという。
これまでは「酒池肉林」、性愛と淫蕩のイメージで語られてきたイスラム世界の後宮・ハレム。その「禁じられた空間」では、実際に何が行われていたのか。奴隷として連れてこられた女官たちは、いかにして愛妾、夫人、母后へと昇りつめていったのか。ハレムを支配する黒人宦官と、内廷を管理する白人宦官は、どのように権力を手にしていったのか。600年にわたりオスマン帝国を支えたハイスペックな官僚組織の実態を、気鋭のオスマン帝国研究者として注目されている小笠原さんが、最新研究を駆使して描く。ハレムを描いた作品のファンにオススメの一冊だ。
■小笠原弘幸さんプロフィール
1974年、北海道生まれ。青山学院大学文学部史学科卒業。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。2013年から九州大学大学院人文科学研究院イスラム文明学講座准教授。専門はオスマン帝国史およびトルコ共和国史。主な著書に『イスラーム世界における王朝起源論の生成と変容』(刀水書房)、『オスマン帝国』(中公新書、樫山純三賞受賞)、『オスマン帝国英傑列伝』(幻冬舎新書)など。
■著者コメント
海外ドラマ『オスマン帝国外伝~愛と欲望のハレム~』や人気漫画『夢の雫、黄金の鳥籠』は、私も一ファンとして楽しんでいます。本書は、それらの作品も意識して、読者の皆さんがより深く楽しく作品を鑑賞できるように、ハレムという組織機構の解説や、登場人物の掘り下げ、時代背景の説明に注力しました。ぜひ本書を通じてハレムの魅力に触れていただければ幸いです。
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