上橋菜穂子さんの新作長編『香君』(文藝春秋)が、3月24日に発売された。上橋さんが新たな世界を描いた物語としては、7年ぶりとなる。
『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、『獣の奏者』、『鹿の王』などで知られる上橋菜穂子さん。『香君』は、長編としては3年ぶり、新たな世界を描いた物語としては『鹿の王』以来7年ぶりとなる、ファン待望の新作だ。
主人公は、植物や昆虫たちが香りでおこなっているコミュニケーションを〈香りの声〉のように感じながら生きる少女・アイシャ。虫害で食糧危機におちいる人々を、香りの能力で救おうとする物語だ。
〈あらすじ〉
遥か昔、〈神郷〉から降臨した初代〈香君〉が携えてきたとされる奇跡の稲〈オアレ稲〉の力によって、多くの国を従え、繁栄を誇って来たウマール帝国。
その属国〈西カンタル藩王国〉の藩王の孫、15歳の少女アイシャは人並外れた嗅覚を持ち、植物や昆虫たちが香りで行っているコミュニケーションを〈香りの声〉のように感じながら生きていた。
祖父の失脚の後、彼女の運命は大きく変転していき、やがて、ウマール帝国を庇護する美しい活神である当代〈香君〉の元で働くことになる。
神授の稲〈オアレ稲〉によって人々は豊かな暮らしを謳歌していたが、実はこの稲には恐ろしい性質があった。
害虫はつかぬはずのオアレ稲に、あるとき不思議な虫害が発生し、この稲に過度に依存していた帝国は、凄まじい食糧危機に見舞われる。
アイシャは当代〈香君〉と共にオアレ稲の謎に挑み、人々を救おうとするのだが――
(公式特設サイトより)
『獣の奏者』では王獣と言葉を交わすことのできる少女を、『鹿の王』では謎の病・黒狼病にかかり、獣のような能力を持つようになった男を描いた上橋さん。壮大なスケールで、自然と人間とのかかわりや、国同士のかけひき、人の心の機微までを繊細に描き出す、ファンタジーの名手だ。今回はどんな世界を見せてくれるのか、上橋ファンならずとも引き込まれるに違いない。
■上橋菜穂子(うえはし・なほこ)さんプロフィール
1962年東京生まれ。文学博士。川村学園女子大学特任教授。1989年『精霊の木』で作家デビュー。著書に『精霊の守り人』をはじめとする「守り人」シリーズ、『獣の奏者』『鹿の王』など。野間児童文芸賞、本屋大賞、日本医療小説大賞など数多くの賞に輝き、2014年には国際アンデルセン賞作家賞を受賞。2020年、マイケル・L・プリンツ賞オナー、日本文化人類学会賞を受賞。医学博士・津田篤太郎との共著『ほの暗い永久から出でて 生と死を巡る対話』もある。
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