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50代でも、「自分探し」していい。希望もらえる、遅咲き女優の言葉!

還暦のシンデレラガール

 映画『カメラを止めるな!』、連続ドラマシリーズ『ルパンの娘』など、引っ張りだこの個性派俳優・竹原芳子(どんぐり)さん。

 「関西の古い芸人さん」「どこかの劇団のベテラン俳優」などと「誤解」されることもあるそうだが、50歳で吉本NSC、57歳で初演技......と、じつは遅咲き。いろんな仕事や習いごとをして、50代半ばを過ぎても、「自分探し」を続けていたという。

 初の著書『還暦のシンデレラガール』(サンマーク出版)は、竹原さんのこれまでの話と、自分で自分を機嫌よく保つ方法を書いたもの。

 「そうか、生きたいように、生きてええんや――でこぼこ道を、歩いて走って転がって。やっとそう言えるまでの、私の話を書きました」

寄り道、迷い道、でこぼこ道

 本書は「Introduction 先のことはわからんけど、歩き出したら何とかなるやろ。」「第1章 バブルを止めるな!」「第2章 チャレンジを止めるな!」「第3章 『自分』を止めるな!」「第4章 カメラを止めるな!」「第5章 奇跡を止めるな!」の構成。

 「モノにならなかったら、『向いていないこと』がわかってラッキー。」「人生の底に足がついたら、大事なものが見えてきた。」「年齢、容姿、すべてを自分が受け入れたら、歯車が回り始めた。」「右へ行っても左へ行ってもきっと『いいこと』が待っている。」など、生きるヒントがあちこちに。

 人より長めの「自分探し」をしてきた竹原さんの異色の経歴が面白い。

 仕事は、証券会社の営業、裁判所の臨時事務官、派遣での宝くじ売り場の販売員、店頭でのドリンク販促のためのマネキン......。習いごとは、水泳、社交ダンス、フラワーアレンジメント、コーチング、乗馬、話し方、落語......。どれも「自分には何が向いてる? 何ができる? 手に職をつけなければ!」「もしかしたらこれが仕事になるかも」という一心だった。

 「私はずっと、私ができること、私自身をずっと、探してきたのかもしれません。この、一見無駄とも思える私のあれこれは、全部、無駄ではなかった。今、こうして好きな仕事をして、朝、窓を開けて『おはよー! 今日も生きてるでー! 最高や!』と本気で思える自分にたどり着いたのは、今までやってきた寄り道、迷い道、でこぼこ道のおかげ」

遅めに訪れた、奇跡

 夢中で働いた証券会社を33歳で辞め、人材派遣会社に登録した。「全部お試し。いろんなことをやってみよう」という姿勢で経験を積み、40歳からの10年間は裁判所に勤務した。

 やみくもに「行き当たりばったり」を繰り返しているように見えるが、裁判所勤務時代に受講した「話し方教室」、「落語講座」、50歳でチャレンジした吉本NSC......と、今につながるものもあった。

 竹原さんの「人生探しの大のテーマ」は、「自分が本当に輝く場所で手に職をつけること」。しだいに「表現する仕事がしてみたい」という思いが込み上げ、55歳にして、俳優を目指すことにした。

 初めて出演した映画『カメラを止めるな!』は、最初は上映されるかどうかもわからない作品だったそうだが、異例の大ヒットを記録。「60手前で、人生にこんなことがあるなんて!」――。東京国際映画祭に参加したときの心境を振り返っている。

 「私の人生は、魔法の馬車に迎えに来てもらえるようなスムーズなものではなかったけれど、いろんな出会いと運に助けられて、こうして自分のベタ足で、レッドカーペットを踏むことができました。(中略)シワが多めでとびきり笑顔の、アラカンのシンデレラガール。それが私です。遅めに訪れた、奇跡でした」

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 ある程度の年齢になったときに「自分は何者にもなれなかった......」と思ったことがある人は、結構いるのではないだろうか。

 いや、そもそも「ある程度の年齢」という設定をなくしてしまえば、そんな思いをしなくていい。「ある程度の年齢」と思い込んでいたその先で、まさかのシンデレラストーリーが始まるかもしれない。本書を読んで、竹原さんはそんな希望を感じさせてくれる存在だと思った。

 「物語のシンデレラは若い娘さんでしょうが、還暦のシンデレラ。めっちゃくちゃええやん! いくつだろうが、迷っていい。いつまでだって、探していい。せっかく生きているんだから、好きなように生きたらいい」

■竹原芳子さんプロフィール

 1960年大阪府生まれ。短大卒業後、証券会社で店頭営業職に就き、主任まで務める。40歳で裁判所事務官(臨時的任用)に。47歳で落語を習い始め、50歳のとき、かつて見た大河ドラマで織田信長が「人間50年」と火の中で舞うシーンがあったことにハッとする。「信長やったら死んでる年や、やりたいことをやろう」と吉本NSCに入所。間寛平座長の「劇団間座」に入団。57歳のとき、ある映画の舞台挨拶に感銘を受け、ロビーに置いてあったチラシの「シネマプロジェクト」に参加。それが、映画『カメラを止めるな!』出演につながった「還暦のシンデレラ」。映画の大ヒット後、連続ドラマシリーズ『ルパンの娘』やバラエティ番組にも多数出演。「科学的分析不可能なおもしろさ」と評され、唯一無二の存在感を放つ個性派俳優。現在フリーで活躍中。本書が初めての著書。


※画像提供:サンマーク出版



 


  • 書名 還暦のシンデレラガール
  • 監修・編集・著者名竹原 芳子 著
  • 出版社名サンマーク出版
  • 出版年月日2022年1月30日
  • 定価1,540円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・174ページ
  • ISBN9784763139689

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