何にも乱されず、凛として穏やか。そんな内面をつくってくれるのが、茶道だ。しんとした空間で、相手のことだけを思ってお茶を点てる。その心得と礼儀作法が、美しい心を育ててくれる。
さらには、生活習慣・所作・コミュニケーション力・「和」の知識・健康などなど......お茶は、私たちにさまざまなよいことをもたらしてくれるのだ。
でも、茶道ってなんだか敷居が高そう......。そんなあなたにおすすめしたいのが、『「お茶」を学ぶ人だけが知っている凛として美しい内面の磨き方』(実務教育出版)。裏千家茶道家の竹田理絵さんが、心を育てる茶道の本質を、ていねいにわかりやすく教えてくれる。
ここでは特別に、第1章全文を11回の連載形式でご紹介する。今回は第5回。茶道の稽古では、最初に「道具の清め方」を習うという。そこに込められた心とは。
1回目から読む
(以下、本文より)
道具と一緒に心も清める ――素直な心になる
茶道のお点前では、「袱紗(ふくさ)」という一枚の布で道具類を清める動作があります。
袱紗には道具だけでなく、自分自身の心も清めてくれる効果があります。
お茶のお稽古をする時に一番最初に習うのが、この「割稽古(わりげいこ・袱紗による道具の清め方)」です。
割稽古は基本であると共に、数多くの種類があるお点前の流れの中で欠かせないものです。先入観なく、真っ白な素直な心で教わることで、きちんとした型を覚えることができるのです。
学生の頃からお稽古に通っていた生徒さんが会社に就職したての頃、「先生、私、茶道をやっていて良かったです。会社の先輩が、『教えた仕事を素直にきちんと覚えてくれるから、とても助かる』と褒めてくれました。
お稽古の時に先生から『素直な心で習いなさい』と教えてもらい、お道具と一緒に自分の心も清めて素直になろうと思っていたからで、とてもありがたいです」と、嬉しい報告を受けました。
素直な態度で、物事をありのままに受け止めることは、仕事も人間関係も円滑に運ぶ大切な要素になります。
何かで行き詰まった時、家の中や会社のデスク周りを綺麗にすることがあると思いますが、その時に自分の心も清めるつもりでやってみてください。きっと、物事がうまく進み始めると思います。
■竹田理絵(たけだ・りえ)さんプロフィール
茶道家(裏千家教授)、株式会社茶禅代表取締役。
神楽坂生まれの三代目江戸っ子。青山学院大学文学部卒業後、日本IBMに入社。日本の伝統文化の素晴らしさを伝えるため、退社後、株式会社茶禅を設立。銀座と浅草に、敷居は低いが本格的な茶道を体験できる茶室を開設する。世界30ヵ国の人々に日本の伝統文化を伝え、のべ生徒数は3万人超。また、10ヵ国以上の国々に赴き、さまざまな場所で茶道の点前を披露してきた。2017年、ブルネイ国王即位50周年時にブルネイにて茶会を披露。各国首相や大使館、官庁、VIP、一部上場企業からの信頼も厚く、お茶会を多数実施。千利休から学ぶビジネス研修は経営者が注目し、企業研修にも取り入れられている。ハーバード大学等、茶道を取り入れた教育・教養研修実績多数。初めての著書『世界のビジネスエリートが知っている 教養としての茶道』(自由国民社)は3.3万部を超えるベストセラーになった。
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