未来を変えるコンピュータともいわれる量子コンピュータ。ニュースでその名前を聞く機会も少なくない。一般に使われているコンピュータでも十分すごい領域にあるとは思うが、量子コンピュータはそれを超える高性能だということはイメージできる。
しかし、量子コンピュータは、実は計算速度が「爆速」というわけではなさそうなのだ。
では、いったい何がすごいのか。
『量子コンピュータが変える未来』(寺部雅能、大関真之 著、オーム社)によると、量子コンピュータは大きく分けて2種類の方式があるそうだ。
ひとつは「ゲート方式」。あらゆる計算が高速にできるタイプ。ただし、開発できているビット数は79量子ビットで、まだ多くはない。
もうひとつは「量子アニーリング方式」。あるものを「最適化することに特化」たタイプ。開発できているビット数は、2048量子ビットにのぼる。
なお、この量子アニーリングという考え方は、日本で生まれた技術なのだという。1998年に東京工業大学の西森秀稔教授と、当時博士課程で学んでいた門脇正史氏によるものだ。
この量子アニーリング方式の「最適化する能力」は、実は、ビッグータを実用化していくときに大幅な効率化をもたらすことで注目を集めている。そのため、多数の企業がビジネスでの応用を狙って研究を進めているというのだ。
量子コンピュータは、0と1の間の「中間の値」(0と1の重ね合わせの値)を持てるところが特徴的だという。
一般的なコンピュータは、0と1のHIもしくはLOWの電気信号レベルで計算をしていく。量子コンピュータは、その中間の状態を保持できるのだそうだ。
そのため、0と1の中間の値をセットしておき、そこから次の計算をさせるような効率化が図れるという。
詳しくは、本書にある解説に委ねるが、量子コンピュータは計算自体が高速(爆速)というよりは、計算の効率を上げて全体的な処理速度を向上させるという特徴があるのだそうだ。
本書には、量子コンピュータが得意とする最適化とはどういうものか、わかりやすい事例も交えて述べられている。
夕飯のおかずを買いに行くとき、今、冷蔵庫に何が入っているかという情報をインプットしておき、おかずは何が作れるか、何をどのくらい買えば、明日の献立にも無駄なく役立つかなど、目的の最適化を計算させるなど、量子コンピュータの得意とされる分野が紹介されている。もちろん、夕飯のおかずを製造メーカーの部品仕入れに置き換えれば、生産の効率化の話題になるのは想像がつく。
本書の著者は、東北大学大学院情報科学研究科の大関真之准教授と、株式会社デンソーの先端技術研究所の寺部雅能さん。お二人とも、量子コンピュータの専門家。本書の特徴は、理論の解説だけでなく、量子コンピュータについて13の企業にインタビューしていること。寺部さんの所属するデンソーだけでなく、京セラやメルカリなど幅広い企業の意見が興味深く掲載されている。
なお、本書によると、量子コンピュータは、まだよちよち歩きの赤ちゃんのようで、これからどんどん発展していく状態だという。いったいどんな成長を見せるのか、今のうちから知っておくためにも、本書は参考になるだろう。
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