2020年度から、小学校で「プログラミング教育」が必修化されるそうだ。特別に必修科目ができるわけではない。算数、理科など、すでにある教科の中で、コンピュータの基礎となる「プログラミング」についての考え方を学び、いろいろ体験してもらう、ということのようだ。
とはいえ子どもからいろいろ聞かれた時に、ちゃんとこたえられるだろうか。心配な親も少なくないに違いない。本書『決定版 コンピュータサイエンス図鑑』(創元社)は、とりあえず一家に一冊あれば、親としての体面を保てる本だ。
「図鑑」とあるように、何か小難しいことを書いているわけではない。全体はビジュアル重視。各ページに多数のカラーイラストが並ぶ。
「1 さあ始めよう」「2 コンピュータサイエンスとは?」「3 ハードウェア」「4 コンピューテーショナル思考」「5 データ」「6 プログラミングのテクニック」「7 プログラミング言語」「8 ネットワーク」「9 ウェブサイトとアプリをつくる」「10 デジタル世界での振る舞い」「11 ソーシャルメディア」「12 デジタル世界の課題」「13 コンピュータの未来」の13章に分かれている。
同じことを本格的にレビューしようとすると、相当難しくなる。子どもの頭では付いていけない。親もギブアップだ。本書は各章の中にさらにいくつもの項目が並び、それぞれを見開きで解説しているので、関心があるところだけ眺めることも可能だ。
たとえば、「3 ハードウェア」の中にある「ゲーム機」という中項目。そこには、「ゲームで遊ぶ」「コントローラ」「ゲームのジャンル」「コンピュータとゲーム機」というさらに小さな4項目があり、イラスト入りで説明が続く。「深く知ろう」というコラムもあって、「初期のコンピュータゲーム」についてのミニ解説も。当時「衝突」「爆発」「シューティング」などのゲームが多かったのは、プログラミングもプレイも簡単だったからだそうだ。親として知っておけば役立つ。
もちろん、ページをめくるにしたがって、だんだん中身は高度化する。「アルゴリズム」「ビットとデジタル化」「二進表記」・・・。「画像の符号化」や「音声と動画の符号化」という項目もある。画像や音声がどのような仕組みでコンピュータ内に取り込まれ、認識されるのか、これまたカラー図解で示されている。
英語教育も低年齢化が進んでいるが、「プログラミング教育」が厄介なのは、親の方にその基礎がないということだ。何しろ自分が義務教育で習っていない。パソコンやスマホは使えても、その原理を知らない親が大半だ。本書などでポイントを押さえておけば、子どもに説明できるかもしれない。
子どもの知的好奇心は際限がない。いつのまにか「図鑑」「事典」「地図帳」「名作全集」などに親しんでいる子どもは少なくない。学校で教わる範囲以上のものや、学年を飛び越えた知識に自発的に手を伸ばしているのだ。「プログラミング教育」が必修化となれば、授業内容を超えることを知りたがる子どもは少なくないだろう。家に本書などがあれば、子どもは勝手に手に取って読み進めるかもしれない。
本書ではMicrosoftのビル・ゲイツやFacebookのマーク・ザッカーバーグらはもちろん、「暗号化」の項目でコンピュータの父と言われるアラン・チューリング、「論理ゲート」では米国の数学者クロード・シャノンなども顔写真付きで紹介されている。子どもたちにとっては目標にもなる。
本欄では『クロード・シャノン――情報時代を発明した男』(筑摩書房)、『数学する身体』(新潮文庫)などを紹介ずみだ。
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