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50代独身、一人っ子。離れて暮らす親が孤独死したら

父がひとりで死んでいた

 遠く離れた実家で、父が孤独死していた――。東京でフリーランスエディターをしている如月サラさんはある日、予想もしなかった知らせを受ける。

 本書『父がひとりで死んでいた 離れて暮らす親のために今できること』(日経BP)は、父の孤独死から約1年間にわたる行動や心の動きを書き留めたエッセイ。

 如月さんは50代独身、一人っ子。警察による事情聴取、コロナ禍での葬儀、実家の片付け、残されたペットの世話、認知症になった母の遠距離介護......。ショックに立ち尽くす間もなく突如直面した現実を切り抜けていく日々を、克明につづっている。

 本書は「日経xwoman ARIA」で大反響の連載を書籍化したもの。未発表のエッセイ、自身の経験をもとに「離れて暮らす親のために今できること」をまとめた情報コラムも収録。

 父が亡くなり母は施設へ...残るは無人の一軒家と維持費問題
 シングル、一人っ子、フリーランス。亡き父が残した老猫4匹をどうする?
 仕事との両立は、これからどうなる?

嫌な予感がした

 今年1月、ひとり暮らしの父(84歳)が、遠く離れた実家の自室で倒れて亡くなっているのが見つかった。死後1週間が経っていた。

 その半年前、母(82歳)が「レビー小体型認知症」と診断され、その日のうちに緊急入院。それから父はひとりで暮らしていた。

 元気で明るく気丈者だった母が認知症になり、如月さんは衝撃を受ける。それから母のことばかりを気にかけ、「父はひとりでなんとか元気にやってくれている」と信じていた。

 母が入院して父が亡くなるまでの約半年間、コロナ禍もあり、1度も実家に足を運ぶことはなかった。父との意思疎通は、月1回、母の入院費の支払額を連絡するときだけだったという。

 その日、何度か電話をかけたが、父は出なかった。「嫌な予感がした」......。実家の鍵を預けてある叔母に様子を見に行ってもらい、父は発見された。

 「心の準備をする暇もなく、いきなり現代のさまざまな問題を抱えることになってしまいました。親の介護はゆるやかに始まるもので、もう少し先のことだろうと高をくくっていたのです」

この間、学んだこと

 主治医の判断もあり、母には父の死を告げなかった。「もっと父を気にかけていればこういう事態は避けられたのではないか」と自身を責めた。ひとりで受け止め、対処しなければならない事実が、重くのしかかった。

 そこで、今の気持ちをそのまま「note」に書くことにした。誰かに読んでもらうためではなく、書くことで心が少し軽くなったという。

 「この間、学んだことがあります。それは、自分の気持ちを他の人と共有することが何よりのケアだということ。そして、誰もがいつか直面するであろう介護や相続について、親が元気なうちから備えておかなければならなかったということです。(中略)この本が、今まさに渦中にいる方の心を少しでも軽くすることができる友達のような役目を果たせますように。そして、これからに備えたい人の道案内となれますように」

 まだ父がいるような気がするのに、実際は誰もいない実家で、如月さんは号泣する。現実の過酷さが痛いほど伝わってきた。

 訪れるかもしれない日々を予習するような、心構えをしていくような、本書はそんな読み心地。「あのとき読んでおいてよかった」と思える1冊になるだろう。


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■目次

はじめに
第1章 ある寒い冬の日、遠く離れて暮らす父が孤独死していた
第2章 自室でひとり死んだ父は、最期まで生きようとしていた
第3章 父亡き後に残された老猫4匹 東京への移動大作戦を敢行
第4章 「ごめんねえ、お父さん」遺影を見て認知症の母は言った
第5章 父が亡くなり母は施設へ 残る無人の一軒家と維持費問題
第6章 住む人のいなくなった実家は驚く速さで荒れ果てていった
第7章 「号泣するなんて恥」父の死を悲しむ自分が許せなかった
第8章 私には緊急連絡先がない ひとり老いてゆく未来を考えた
第9章 無人の実家に通いながら考えた、これからの仕事のこと
第10章 一番仲良しの叔母が亡くなった そう知った認知症の母は
第11章 故郷を遠ざけてきた私を、友人たちは近くで支えてくれた
第12章 父の死が紡いでくれた新たな「縁」 生きてゆく力になる
終章 父がひとりで死んでいた――ひとり娘から父への手紙
おわりに

■如月サラさんプロフィール

 エディター、エッセイスト。大学卒業後、出版社で女性誌の編集者になる。心理学者・精神医学者ユングの「40~50歳頃は人生の正午」という言葉に出合い感銘を受け、50歳で大学院修士課程に入学。中年期女性のアイデンティティについて研究しながら執筆活動を始める。「note」で父親の孤独死について書いたエッセイ「父がひとりで死んでいた」がきっかけとなり、著書を出版。6匹の猫たちと東京暮らし。


※画像提供:日経BP


 
  • 書名 父がひとりで死んでいた
  • サブタイトル離れて暮らす親のために今できること
  • 監修・編集・著者名如月 サラ 著
  • 出版社名日経BP
  • 出版年月日2021年12月20日
  • 定価1,650円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・160ページ
  • ISBN9784296111459

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