「人生は旅だというが、確かにそんな気もする。自分の体を機関車に喩えるなら、この車窓は存外面白い」──。
星野源さんの大ヒットエッセイ集『いのちの車窓から』が文庫化され、2022年1月21日に角川文庫で発売される。
2017年に単行本が刊行された同書は、雑誌『ダ・ヴィンチ』で2014年12月号より連載されている同名のエッセイシリーズの第1巻。星野さんの哲学と魅力が詰めこまれた内容は好評で、単行本版は累計40万部を突破している。
収録されているのは、単行本書き下ろしを含む、2014年から2017年に執筆されたエッセイ30篇。
ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の撮影秘話や、念願だった紅白出場、大ヒット曲『SUN』、『恋』ができるまで。さらにこっそり別人としてツイッターをやっていたエピソードや、「自分が人見知りである」と自ら言うことをやめたきっかけなど、約2年間に渡り、星野さんが見てきた風景、感じてきた想い、経験、成長のすべてが文章に描き出されている。
また、今回の文庫版では、エッセイ約2本半分に相当する、10ページにもわたる長い「文庫版あとがき」が追加されている。2021年末に書き下ろされたこの「あとがき」は、「いのちの車窓から」最新回とも言える内容だ。カバーもデザイン:宮古美智代/イラスト:ビョン・ヨングンで新装される。
エッセイの一つ「人間」で星野さんは、舞台で共演した中村勘三郎さんの「たくさんの人に拍手もらって帰るでしょう。 でも、家に帰ってシャワーを浴びながら髪の毛洗ってるとねえ、本当にひとりなんだ」という言葉に、表面からはうかがい知れないスターの孤独を見出す。それが、アルバム『Stranger』に収録された「化物」の歌詞に昇華される。
その勘三郎さんが亡くなり、「人間は死んだら終わりなんや」と嘆いた笑福亭鶴瓶さんが、2年後に「人間は、死んでも終わりじゃないんです」と言う姿に、2年間にあった想いと、憤りと、決意を垣間見て、帰り道でひとり泣く。
ドラマに紅白と怒涛の毎日を送るなかで、星野さんが丁寧に描写しているのは、周囲の人々、日常の景色、ある日のできごと......。そして、その背後にある、普通なら見過ごしてしまうような細やかな感情だ。
ささやかなやり取りにも誠意をもって向き合うことで、日常が姿を変えて鮮やかに描き出される。そんな星野さんの生活への姿勢が、一篇一篇に鏡のように映し出されている。単なる日記にとどまらない、音楽家や俳優としての星野さんのファンにもオススメすることができる珠玉の一冊だ。
大物芸能人との交流が多い星野さん。ミュージシャンの細野晴臣さん、俳優の大泉洋さんとの交流を描いたエピソードも登場し、星野さんのファン以外にも見どころの多い作品となっている。
とくに、今年5月に結婚を発表した新垣結衣さんとの、国民的ドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で共演した際の交流を描いた「新垣結衣という人」は必見だ。星野さんが、眼鏡が曇ったときに......、「恋ダンス」の振り付け練習で......、と2016年当時の新垣さんの一挙手一投足を取り上げて「本当に素敵な、普通の女の子である」と、あらゆる方向から絶賛している。そのベタ褒めぶりを、ぜひ本を買って確かめてほしい。
文庫化に際して『ダ・ヴィンチ』2022年1月号(2021年12月6日(月)発売)では、文庫に関するロングインタビューも掲載。『ダ・ヴィンチ』毎年恒例、その年の本のランキングを発表する「BOOK OF THE YEAR」特集号では、星野さんが表紙を飾る。
■星野 源(ほしの げん)さんプロフィール
1981年、埼玉県生まれ。俳優・音楽家・文筆家。
俳優として、映画『罪の声』で第44回日本アカデミー賞優秀助演男優賞受賞。音楽家としては、多くのドラマ、映画の主題歌を担当するなど幅広く活動し、2020年にソロデビュー10周年を迎えた。また、著作に『よみがえる変態』、『働く男』、『そして生活はつづく』。幅広い活動が評価され、2017年に第 9 回伊丹十三賞を受賞。
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