ビジネスで成功するには、未来のニーズをつかむことは欠かせない。しかし、今わかっている情報から想像できる未来では、プレーヤーも多く、突出したゲームチェンジは難しいだろう。そのような状況下、斜め上の未来を予測する手法が注目を集めている。
その手法の一つが、SFプロトタイピングだ。
SFプロトタイピングは、マイクロソフト社でも採用されているイノベーションを生み出す手法のひとつ。その内容について詳しく書かれた書籍が『SFプロトタイピング──SFからイノベーションを生み出す新戦略』(宮本道人 難波優輝 大澤博隆 編著、早川書房)だ。
本書の冒頭に紹介されているSFプロトタイピングの定義は次の通り。
「SFプロトタイピング。それはサイエンス・フィクション的な発想を元に、まだ実現していないビジョンの試作品=プロトタイプを作ることで、他者と未来像を議論・共有するためのメソット」
SFプロトタイピングは、抽象的に未来を予測するのではなく、例えば、特定の意思などの特徴を持つキャラクターから具体的に未来を考察する手法などがあり、そこではキャラクターの意思や社会状況が反映されたシミュレーションがもたらされるという。
本書によると、SFプロトタイピングは、未来から逆算して今を考える手法(「バックキャスティング」的な手法)として紹介されている。
対義語として紹介されているのは「フォアキャスティング」。現在の情報から実現度の高い未来を想定していく手法だ。本書によると、「フォアキャスティング」では、斜め上の未来は想像しにくいという。
本書は、大部分が対談形式でつづられている。WIRED Sci-Fiプロトタイピング研究所の小谷知也氏や三菱総研の藤本敦也氏など、その分野のプロパーが興味深い発言を行っている温度感そのままを伝える構成だ。
個人的に面白いと思ったのは、インテグリカルチャー株式会社を設立した羽生雄毅氏が中二病について語っているページ(p.75以下)。想像力を発揮するとき中二病は排除しない方がよいと思われるが、「中二病的なドリブンが本当はあったはずなのに、それが潰されちゃう」ことで、プロジェクトはつまらなくなってしまうことが著者の宮本道人氏との対談で語られている。羽生氏は「中二病するなら宇宙規模で」とツイッターでも発信しているという。
本書を読み始めると、前述の「バックキャスティング」のように、冒頭から理論的な展開になっていて、想像していたファンタジックな部分だけでなく、ビジネスのリーディングカンパニーが注目する意味もよくわかってくる。
本書を読むと、SFが描く未来から逆算して斜め上の未来を予測する手法が見えてくる。
孫正義氏は世界初の感情を持つロボット「Pepper」の発売時に、自身への鉄腕アトムの影響を述べたそうだ。
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