本はネットで購入するのも便利でいいけれど、本屋をぶらついていると、思わぬ出会いがあるのが魅力的だ。棚に並んだタイトルに、店主のセンスや思いを感じることも。
いま、町の書店が減っていく一方で、個性的な店も増えている。大正大学地域構想研究所が出版している「地域人 第75号」(大正大学出版会)では、そんな「町の本屋さん」を大特集している。
「本屋は続くよ」と題した特集では、広島、神奈川、栃木、香川、福岡、新潟の本屋さん37軒に丁寧に取材している。また、巻頭インタビューとして、東京・荻窪にある本屋「Title」の店主・辻山良雄さんのインタビューも掲載されている。
深夜にふと、書店に行きたくなる。そんなニッチなニーズに応える書店が広島県尾道市にある。それが「古本屋弐拾dB」だ。夜11時から午前3時までの深夜営業の古本屋で、もとは病院だった建物を本屋に改装したそうだ。
店名について、店主の藤井さんはこう語る。
「店名の20デジベルはかすかに聞こえるレベルの音です。本のかすかな声に耳を傾けたいと思って付けました」
「尾道空き家再生プロジェクト」が運営するゲストハウスで働くうちに、自分も何か「店をやりたい」と思うようになったという。空き家だった物件を紹介され、古本屋を開こうと決意。ゲストハウスに泊まった台湾の人から、台北では酒を飲んだ後に「誠品書店」に行くという話を聞き、「そういう文化もいいなあ」と惹かれたそうだ。「お客さんと話すことで、いろんな情報をもらっています」と藤井さん。この店を訪ねるために、尾道へ旅行に行きたくなる。
東急東横線の妙蓮寺駅から徒歩2分にある本屋「生活綴方」は、ボランティアによる「お店番」のシステムがあるユニークな書店だ。オープン当初、出版社「三輪舎」を経営している中岡さんが出版仕事のかたわらに監修・運営を担当していた。しかし、「このままでは本業を圧迫しかねない」と思いついたシステムが、この「お店番」だ。
今では50人近くが日替わりでお店番をしているという。お店番をする人のアイデアによって様々なミニイベントも開催される。詩人が当番のときはレジを舞台に朗読したり、声楽家が当番の日はオペラが聞こえてきたり。
店名の由来は、大正から昭和初期にかけて、子どもたちが、自分たちの生活を作文で表現する教育「生活綴方運動」にちなんでいるそうだ。
「綴」には「言葉を連ねる」と「本を綴じる」という意味がある。暮らしに豊かさを与える本を「売るだけではなく作る」という思いを込めて名づけた、という。
実際に10点近い作品が「生活綴方」で生まれている。ぜひ、お店番も経験してみたい。
村上春樹の小説『海辺のカフカ』(新潮社)の舞台にもなった香川県高松市にもユニークな書店がある。その1つが「なタ書」。古書組合に属さず、客からの買い取りだけで棚を構成しているという。
店主の藤井佳之さんは、「キキ」という愛称で親しまれている。店名の由来は昔の恋人の名前からとったそうだが、キキさんは質問を全力ではぐらかす、天の邪鬼で取材者泣かせという話で店名の由来についても本当かどうかはわからない。
コロナ禍を受けて昨年4月には、本を自転車で届けるサービス「Uber Books」を始めた。
「SNSなどで書店が大変な状況が伝わってきたなかで、『考えたら何かできることはあるよ』というメッセージを送ったつもりです」とキキさん。本に関する幅広い知識を持ち、来店客の質問に細やかに答えてくれる。
地域の文化を支える役割をも担っている町の本屋さん。豊かな時間を過ごしに出かけたい。
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