新型コロナウイルスが流行し、病院では面会が禁止、もしくは制限されていて、愛する人の死に目に立ち会えないケースも。そんな中、在宅医療が注目されている。
一方で、国民の7割が自宅での最期を迎えたいと希望しているにもかかわらず、現状は8割が医療機関で亡くなっている。本書、『さいごまで自宅で診てくれるいいお医者さん2022年版 コロナで注目!在宅医療ガイド』(朝日新聞出版)では、自宅で平穏に亡くなるための基礎知識から、往診してくれる全国1,518の診療所リストが掲載されている。さらには、「おひとりさま」の生き方を発信してきた第一人者である社会学者・上野千鶴子さんへのインタビューも。心穏やかな終末期を迎えるための必読の書だ。
終末期を経て人は死に至るが、医学の発達とともに終末期がわかりにくくなっていると医師の長尾和宏先生は指摘する。そのため長尾先生は、患者の側から「先生、私、もう終末期じゃないですか?」と言い出してみることを提案している。平穏死を迎えるためには、終末期以降の過剰な治療を控えて緩和医療をしっかり受けることが大切のようだ。長尾先生は「平穏死」をひと言で言うとすれば「枯れる」ことと表現している。
人生とは水分含量の観点からいうと、水分がどんどん減っていくことです。...(中略)枯れてしぼんで水分含量が少なくなってドライになる。医学的には脱水という言葉。...(中略)平穏死の条件は脱水なんですよね。
他にも「平穏死」10の条件が載っている。例えば、「勇気を出して葬儀屋さんと話してみよう」や「転倒→骨折→寝たきりを予防しよう」、「救急車を呼ぶ意味を考えよう」などが挙げられている。
本書には、「おひとりさま」の第一人者である社会学者の上野千鶴子さんへのインタビューも掲載されている。上野千鶴子さんの著書『在宅ひとり死のススメ』(文春新書)が話題となっているが、当初出版社が提示したタイトルは「孤独死なんて怖くない」というものだったそうだ。
一般ウケすると思ったんでしょうね。でも私が見てきた高齢者の死は孤独とは全く違うものです。違うものは違うとちゃんと言いたいと思って、「在宅ひとり死」という言葉を作りました。
独居高齢者の中にも「余儀なくおひとりさま」と「選んでおひとりさま」があるという。「余儀なくおひとりさま」の中には友人も家族もいない本当に孤立した人も確かにいるが、介護保険や医療保険が彼らにちゃんとした最期を迎えさせてくれると上野さん。
かつて介護保険がなかったころには考えられなかった「在宅ひとり死」の選択肢が生まれ、不可能が可能になってきました。私はこれを世界に誇れることだと思っています。
一方、「さびしさ」という心の問題は制度では解決できない。人間関係は放っておいてできるものではなく、育てていくもの。趣味のコミュニティなどに積極的に関わって人間関係を育んでいきたい。
本書には他にも、在宅医療を始める前の基礎知識や往診してくれる全国1,518の診療所リストが掲載されている。これからますます広がっていくと期待される在宅医療。本書を読んで、QOLを高めるために必要な知識を得よう。
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