ペットの緊急事態に備える本『もしものためのペット専門医療』（幻冬舎）が11月1日に発売された。人間と同じようにペットの平均寿命も延び、生活習慣病やがん、認知症を患うペットが増えている。ペットのいる家庭に備えおきたい病気と医療にまつわるトピックがぎっしり詰まった1冊だ。
著者は、獣医師の中村泰治さん。自身が運営する動物病院グループ全体で年間3000件を超える手術を行い、動物の高度医療をめざしている。
本書の「はじめに」から著者の言葉を抜粋して紹介しよう。
日本獣医師会の発表によると、1980年の犬猫の平均寿命は3～4歳でした。
1990年頃には約10歳、現在では13～14歳と40年の間に10歳も寿命が延びています。
ペットが長生きし、大事に飼われるのは喜ばしいことですが、高齢化による病気のリスクは高まりました。
「がん」や「認知症」、「心臓病」、「関節疾患」など、高齢になるとかかりやすい、人間と同じような病気がペットにも起こるからです。
動物病院の場合は、1人の獣医師が内科から外科まですべてを診る「ひとり総合病院」状態が一般的だったが、動物の寿命が延び、飼い主の要望も多様化するのに対応するために、高度医療を担う施設や専門分野に特化した病院の増加、施設間で連携し紹介しあう体制づくりなど、人間のような医療体制が求められているという。
そんな診断や治療の最前線を紹介している。また、ペットの「こんなとき、どうする？」という悩みにも、症状別にわかりやすく解説している。
目次から、第１章のトピックを見てみよう。
第1章 がん、認知症、生活習慣病......
高齢化で、ペットの病気が増えている
・愛玩動物からコンパニオンアニマルへ
・犬猫の頭数は子どもの数をはるかに上回る
・大きく変わる飼育環境
・ワクチンが普及し、感染症による疾患も減少
・多様化するペットの食事
・病気療養に使用する療法食も充実
・法改正で動物殺害が厳罰化
・ペット関連市場は1兆6000億円に拡大
・犬は14.48歳、猫は15.45歳、ペットの寿命が大幅に延びた
・高齢化で過去にはなかった病気が増加
・死因第1位はがん
・人間同様に起こる認知症
・豊かな食生活と運動不足が引き起こす生活習慣病
・軟骨がすり減る関節疾患も増加
・過去にはなかった病気を発見できる時代に
本書は、「ペットに対しても高度で専門的な知識を提供できれば、これまで以上に命を救うことができる」と奮闘を続けてきた中村さんの動物愛をベースにまとめられた。高度医療だけに頼るのではなく、動物の様子を細かく診て、飼い主から話をよく聞くことをモットーにしている動物医療への向き合い方も伝わってくる。
飼い主の意識×医療従事者の意識×治療技術の3つを掛け合わせてこそ、動物医療は進歩すると、中村さんは説く。
全体の目次は下記の通りだ。
はじめに
第１章 がん、認知症、生活習慣病......
高齢化で、ペットの病気が増えている
第２章 専門家の治療にたどりつきにくい動物医療の現状
第３章 「高度・専門医療」 がペットを救う
第４章 循環器科、整形外科、脳神経科......
ペットを救う高度・専門医療の実際
第５章 ペットの存在がますます人々を支える時代へ――
おわりに
各章には、気になるトピックが満載されている。いくつか紹介したい。これは？と思ったところから読み進めてみては。
・猫に多い尿路結石
・症状を訴えることができない犬や猫たち
・専門医へのスピーディなアクセスがペットの命を救う
・咳がサイン! 命に関わる心臓の病気
・小型犬や超小型犬に多い骨折の治療
・骨折の大半は「家の中」で起きている
・いつもと違う歩き方をしていたら要注意
・100匹いれば5匹はてんかんを発症する
・小型犬に多い水頭症
・日本はペット飼育の後進国
ペットの医療をどこまで求めるかは、飼い主によって違ってくる。ただ、どんな治療をどのように受けられるのか、普段どのようなことに気をつけたらよいのか、動物が発しているサインに気づけているかなど、参考になることはたくさんある。家族の一員であるペットの健康寿命を守るため、できることは多いのだと気づかされる。
■中村 泰治さんプロフィール
1995年日本大学卒業。獣医師。得意とする科目は、一般外科、腎泌尿器科、脳神経科。師匠の教えである「見る・触る・聞く」の初心を忘れずに「異変にいち早く気づく」姿勢と大学病院のような高度な検査や治療を両立することで「少しでも助けられる命を増やしたい」を信念としている。
当サイトご覧の皆様！
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります！
広告掲載をお考えの皆様！
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか？
