中学受験をする子どもを持つ親向けの書籍は数多く出版されているが、受験にチャレンジする小学生にエールを贈る本は少ない。そこで紹介したいのが、中学受験専門カウンセラーの安浪涼子さんがまとめた『中学受験にチャレンジするきみへ』（大和書房）だ。
本書は、受験の当事者である子どもたちが志望校へと合格できるように勉強面とメンタルをアップさせるためのダブル必勝法を凝縮したもの。心のモヤモヤや心配が少しでも軽くなるよう工夫がなされているので、気になる箇所だけパラパラとめくるのも、何度も読み直して自分を鼓舞するのもオススメである。
著者の安浪さんは、今までに数多くの受験生をサポートしてきた実績がある。その経験から、志望校に合格する子の行動やメンタルの共通点を見出してきた。実際に受験生が抱える悩みに沿ってたっぷりと回答をしているので、子どもたちに寄り添ったQ＆Aに出会えることだろう。
本書の中から、Q&Aの一部を紹介しよう。
■「勉強はいつ、何時間したらいいですか？」
勉強をいつ、何時間したらよいかは、人それぞれです。１週間のスケジュールや集中できる時間が、人によって異なるからです。そこで、まずは、「いつ勉強したらいいか」の時間帯から考えてみよう。
それには、空いている時間の整理をしてみるといいです。
1. 登校前
2．下校後から塾に行くまで（塾のある日）
3．塾から帰宅後（塾のある日）
4.下校後（塾のない日）
5.土曜日
6.日曜日
こんなふうに、「いつ勉強するか」は、自分のスケジュールに合わせて、できそうな時間帯を考えて決めていくと、勉強がやりやすくなります。
次に、「何時間したらいいか」ですが、ここ、大事なポイントです。
勉強は「時間」にこだわらないほうがいいです。たとえば、４時間勉強してもだらだらと進めて中身があまりなければ、内容はうすくなります。逆に、勉強時間が短くても集中してやれば、内容は濃くなります。つまり、時間よりも質が大切だということ――。 （一部略）
また、「どうしたら『やる気』が出ますか？」といった質問に対しては、なぜやる気が出ないのか、その根本から考えてみる。
やる気を阻害する要因の一つに「イライラ」が挙げられる。この「イライラ」こそ受験勉強をする上で多くの小学生のやる気をそいでいるそうだ。その理由として「問題が解けないとき」「親に叱られたとき」さらには「とくに理由はないけれど」などが挙げられた。まずはイライラの正体を明らかにし、どのように自分のメンタルと向き合っていくか、本書では具体的に提示している。
そのほかにも、「勉強をしていても親にもっと勉強をしなさい」といわれる、「ついテレビやゲームで遊んでしまう」「ケアレスミスばかりしてしまう」などの悩みも取り上げている。受験を乗り越える上で知っておきたい情報が盛りだくさんだ。
中学受験は小学校の勉強より遥かに難しく、今まで以上の学習量をこなさなくてはならない。まずは勉強をしている自分を褒めて、孤独な戦いではないことを知ってほしい。
目次は下記の通りである。
はじめに
第1部 勉強のこと
【勉強】【算数】【国語】【理科】【社会】【テスト】【塾】【志望校選び】【過去問】
「算数がとにかく苦手です」「計算ミスがなくなりません」
「国語の記述のしかたがわかりません」「テストの時間配分がうまくできません」
「塾の授業が全然わかりません」「行きたい学校が決まりません」
「過去問はいつからやればいいですか」など
第2部 メンタルのこと
【入試】【メンタル】【人間関係】【生活】
「不安であまり眠れません」「イライラします」
「全部落ちたらどうしよう...」「おなかが痛くなったらどうしよう...」
「他の子と比べられてつらい」「受験しない子たちから仲間外れにされる」などなど。
おわりに
■安浪京子（やすなみ きょうこ）さんプロフィール
株式会社アートオブエデュケーション代表取締役、算数教育家、中学受験専門カウンセラー。神戸大学を卒業後、関西、関東の中学受験専門大手進学塾にて算数 講師を担当、生徒アンケート100%の支持率を誇る。プロ家庭教師歴約 20年以上。きめ細かい算数指導とメンタルフォローをモットーに、毎年多数の合格者を輩出。中学受験、算数、メンタルサポートに関するセミナーや講演会を多数開催。算数力をつける独自のメソッドは多数の親子から支持を得ている。「きょうこ先生」として親しまれており、様々なメテ?ィアて?悩みに答えている。最新刊は『親がやるべき受験サポート』（佐藤ママとの共著）、著書に『最強の中学受験 「普通の子」か?合格する絶対ルール』など多数。
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