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「異次元の視点」で発想を転換すると人生は面白くなる!物理学者のスーパー科学エッセイ。

物理学者のすごい思考法

   物理と聞くと学生時代を思い出し、難しそうだなと思う方も多いだろう。今回紹介する本は、物理学者の日常での頭の中がテーマ。エスカレーターの乗り方やギョーザの適切な作り方など、日常のあるあるを物理学者の視点で紐解くとどうなるのだろうか。

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   2021年2月5日に発売された『物理学者のすごい思考法』(集英社インターナショナル)が人気だ。

   本書は、超ひも理論、素粒子論を研究する橋本幸士先生によるエッセイ集だ。物理学者としての日常生活の中で、自身のものの考え方がユーモアを交えながら綴られている。物理学的思考法がテーマだが、物理についての知識がない人でも楽しく読むことができる。本書から、とても親しみやすく魅力的な一部を紹介しよう。

 皆さんの周りでは、いろいろな問題が日々発生しているでしょう。そして、解決に頭を悩ませているかもしれません。物理学は、現象に現れる問題の原因を見つけ、問題が起こる仕組みを論理的に考え、そして問題のないシステムを提案する学問です。ですから、物理学でふんだんに用いられる物理学的思考法が、皆さんのお役に立つかもしれないのです。
 皆さんは、発想の転換を必要としているかもしれません。物理学的思考法は、現象をまったく異なる視点から見る、ということを含みます。この本で取り扱っている「異次元の視点」が生む発想の転換は、皆さんの人生を豊かにしてくれるかもしれません。
 皆さんが教育に関心をお持ちなら、お子さんの論理力や理系力を教育しこれからのビッグデータの時代を生き抜いてほしいと思われるでしょう。科学者になりたいと希望する小学生も大変多いようです。この本には、私個人がどうやって科学者になったか、つまり物理学的思考をどう培ってきたか、が書かれています。

   目次は以下の通りだ。

第1章 物理学者の頭のなか
エスカレーター問題の解/無限の可能性
経路積分と徒歩通勤/スーパーマーケットの攻略
時間は2次元?/ギョーザの定理 ほか

第2章 物理学者のつくり方
数学は数学ではなかった/レゴと素粒子物理
迷路を書きつづける/シャーロック・ホームズ
鉄道から宇宙へ/別人格の自分に出会う ほか

第3章 物理学者の変な生態
奇人変人の集合体/理学部語
歩数計を欺く/踊る数式
ニンニクの微分/研究という名の麻薬 ほか

   中身をさらに紹介しよう。

   エスカレーターで駆け上がる人がいるので片側に立つ人が増える問題。著者は、エスカレーターを1列にする、段差を2倍にして駆け上がるのを防ぐなどの技術デザイン的な解を考えてしまうのを楽しむ。しかし、実際に問題が解決されている香港の例は、著者の予想とは異なる結果だったという。エスカレーターの速度が高速なので、人々が歩くことが難しいのだという。受験問題と違って様々な観点からの解決法があるのだ。

   他にも、自転車のチェーンロックについても著者は思考を巡らせる。4桁の暗証番号であることが多い。1秒に1個の数字を試すなら、総当たりで1万通りなので3時間ですべての組み合わせを試すことができる。これが3桁だと1000通り。17分ですべての組み合わせを試すことができるので、たやすく番号を当てられてしまう。3時間というのが著者に言わせれば絶妙な時間だという。3時間アルバイトをしても自転車を買うお金を貯めることは難しいが、自転車置き場で3時間もチェーンロックを触っていると泥棒だとバレてしまう。なるほどとうなずいてしまう。このような日常の数字に思いを馳せて楽しむことができるのは羨ましい気もしてくる。

   ちなみに、本書で提唱されているタコ焼き半径の上限については、理工系YouTuberラムダ技術部氏と共同研究し、論文プレプリントの形で発表されている。「たこ焼きをその形状が安定なまま巨大化させるためには扁平にしないといけない」という予想を、オイラー・ラグランジュ形式を用いた作用最小化問題として数学的に書くことを試み、実験的検証を行った研究とのこと。身近な出来事の中に研究テーマが存在しているのだと驚かされる。

   スーパーマーケットやギョーザ、レゴなど、親しみやすい話題が満載だ。物理学者ならではの思考法に驚きと笑いが溢れる1冊。物理学的思考法を生活の中に取り入れてみたくなる。

■橋本幸士(はしもと こうじ)さんプロフィール
大阪大学大学院理学研究科教授。1973年生まれ、大阪育ち。専門は理論物理学、超ひも理論、素粒子論。1995年京都大学理学部卒業、2000年京都大学院理学研究科修了、理学博士。東京大学、理化学研究所などを経て現職。著書に『超ひも理論をパパに習ってみた』『「宇宙のすべてを支配する数式」をパパに習ってみた』、共著に『ディープランニングと物理学』(すべて講談社)など。


※画像提供:集英社インターナショナル

 
  • 書名 物理学者のすごい思考法
  • 監修・編集・著者名橋本 幸士 著
  • 出版社名集英社インターナショナル
  • 出版年月日2021年2月 5日
  • 定価924円(税込)
  • 判型・ページ数新書判・224ページ
  • ISBN9784797680676

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