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「娘はかわいくないけど息子はかわいい」の根底にあるのは...?

「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました

 元祖毒親コミックエッセイ『母がしんどい』をはじめ、『キレる私をやめたい』や『男社会がしんどい』など、実体験を赤裸々に描いたコミックエッセイが人気の田房永子(たぶさ えいこ)さん。

 今年4月には、フィクション漫画『大黒柱妻の日常』を刊行。「共働きワンオペ妻」のリアルな奮闘ぶりに、フィクションでありながら、2児の母である著者の姿が投影されているかのようだった。

 さて、今回紹介する本書『「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました』(大和書房)は、2019年に刊行された田房さんのエッセイ(コミックエッセイではない)。

 タイトルを見て、男の子の育て方の本か、はたまたセックスレス解消法の本か......と想像が膨らんだが、そのどちらでもなかった。

 「男尊女卑な社会に怒り、男を憎んでいた女が妊娠したのは男の子だった! 著者自身の『男性観』を矯正すべく奮闘した1年間の記録」

 本書は、第2子の性別が「男」と判明した時に「なんか嫌......このままではいけない!」と思った著者が、「己の歪んだ男性観の矯正に挑むド直球エッセイ」である。

男を憎んだまま、男の子を育ててはいけない!

 幼少期から母親の過干渉に苦しみ、10代から痴漢被害に遭い、20代でセクハラを受け、30代で娘を出産した著者。

 「娘はかわいくないけど息子はかわいい」と知人が発言した時も、「母親に、兄弟と差別されてつらかった」と取材先で聞いた時も、母親たちの"悪行"に憤り、男たちを憎んではいるが、その2つは別々のことで、どこか他人事だったという。

 ところが、第2子を妊娠し、性別が「男」と判明。「男を憎んだまま、男の子を育ててはいけない!」――。本書は、著者のそんな思いから生まれた1冊。

■第一部

ファミレスでZさんに聞いた話 母親による子どもへの男女差別 前編・後編
もしかして、男の体がきらいなのか
男の子は、岡本太郎が好き?!
「男の子だから」「女の子だから」という非合理
息子は天才であって欲しい
娘をけなさなければいられない構造
「いい子シーソー」に乗ることを拒否した夫
働きたい気持ちに男女差なんてないという幻想
「男女平等」を信じてたのに、赤ちゃん産んだらこれかよ
保活で有利になりたくて、4~6月に産もうとした結果
親は自分の問題を子どもに肩代わりさせることができる
夫の容姿は超絶ほめる
「テレフォン人生相談」と依存的敵意
母は嘘をつく人
父への手紙
■第二部

産後の大暴れと父からの返信
モラルハラスメントと金
昭和生まれのヤドカリ性
夕飯作りを休みたい
息子の視線にドキッとするヤバい私
女がナチュラルに女の子を嫌うこと
私は男性を嫌悪などしていない! 前編・後編
男性を嫌悪するまでの道のりを辿る 前編・後編
被害と加害について
夫が私の漫画を読まない理由
5年前の保育園申請がトラウマでジェニーに走る
修羅場
上流・下流の法則
「別れてもいい」と思いながら、一刻も早く元に戻りたい 予想外の事態 「男はみんな性暴力加害者」と思う私に足りない視点が判明
そしてメンズハントへ
帰ってくる!
チャットで28歳の男性と話す
新しい関係
おちんちんワーク
夫とのセックスは週3回になるか
これから――セックスと性暴力と私の人生

「他人事」が「自分の問題」に

 「兄や弟と未だに差別されてつらい」と話す30~40代の女性のほとんどが、心身をすり減らし病気になる経験をする。「母親の"悪行"はなぜ起こってしまうのか、特別な原因があるのだ」と、著者は考えていた。

 しかし、いざ自身が保護者の立場になってみると、「息子がかわいすぎてマザコンにしちゃうのは仕方ない。正直、娘はかわいくない」というのは普通に語られていることだった。

 「私たち人間は根源的な潜在的な部分で、『男には甘く、女には厳しく』という感覚を共有しているのではないだろうか」
 「男を甘やかす社会と、母親たちの野放し感。これが『母親による子どもへの男女差別』と密接に関係しているのではないか」

 こう思った時、著者の子どもは娘1人だった。「だから他人事だった」のだが、1年後に妊娠。エコー写真で子どもの股間に睾丸がついているのを見た瞬間、一気に「自分の問題」となってふりかかってきたという。

 「『お腹の中の赤ちゃんが男の子』ということにショックを受けている自分にビックリした」――。著者の「男」に対する負の感情はどこからくるのか。この「男性観」をいったいどうやって矯正していくのか。自己分析風に綴っている。

 タイトルはずいぶん突飛な感じがするが、本書を読んで「自分のもやもやが言語化されている!」と感じる読者もいるだろう。刊行から2年経っても新鮮味がある。


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■田房永子さんプロフィール

 1978年東京都生まれ。2001年第3回アックスマンガ新人賞佳作受賞。母からの過干渉に悩み、その確執と葛藤を描いたコミックエッセイ『母がしんどい』(KADOKAWA/中経出版)を12年に刊行し、ベストセラーに。著書に『ママだって、人間』(河出書房新社)、『キレる私をやめたい』(竹書房)、『しんどい母から逃げる!!』(小学館)、『お母さんみたいな母親にはなりたくないのに』(河出書房新社)、『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』(上野千鶴子さんとの共著、大和書房)、『男社会がしんどい』(竹書房)などがある。


※画像提供:大和書房


 
  • 書名 「男の子の育て方」を真剣に考えてたら夫とのセックスが週3回になりました
  • 監修・編集・著者名田房 永子 著
  • 出版社名大和書房
  • 出版年月日2019年6月21日
  • 定価1,540円(税込)
  • 判型・ページ数四六判・328ページ
  • ISBN9784479393269

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