累計40万部を突破した「お嬢さまシリーズ」の原点である『お嬢さまことば速修講座』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。1995年に発売されて以降、テレビや雑誌等の多数のメディアで紹介され、最近ではTwitterなどのSNSでも話題になっている。復刊の希望にこたえ、2017年に改訂版が登場。今年6月には電子書籍化もされた。
本書には、ディスカヴァー・トゥエンティワン創業者の干場弓子さんが序文を寄せているのだが、その内容が洒脱で面白い。
そもそも本書が生まれたきっかけは、「ブティックやレストランで大きな顔をしたい」という、担当編集者の「単純かつ不純な動機」だそうだ。しかし、干場さんは「このお嬢さまことば、思いのほか、奥が深い」と言う。
言葉はわたしたちの意識、価値観、対人関係、すべての生活行為、ファッション、インテリアにまで深く結びつき、相互に影響を与え合っているものだからだ。
(中略)
ことばづかいは、その人の価値観、所属する層を表示するものであると同時に、その人が無意識のうちに自分とまわりを欺くために用いられる道具でもある。となると、本書は、あえて意識的に、自分とまわりを欺き、お嬢さまを演じるための本であるとも言える。
そこで本書では、一般に「お嬢さま」と呼ばれる人々の会話を分析し、お嬢さまらしさを決定づけている要素を取り出す「マンウォッチング」手法をとっている。さらに、読むだけで自然にお嬢さま言葉が移るよう、「くどいほどのお嬢さまことば」で書かれている。
ただし、もし、読者が、お嬢さまことばを不純な動機で遊びつつ、かつ、その根底にあるもの、つまり、健全な自己肯定感であるとか、相手を尊重する立場と言うものをも、取り入れていこうとするのなら、あなたは、ほんとうのお嬢さまになってしまうかもしれない。
監修は、インテリアアーキテクトの加藤ゑみ子さん。「お嬢さまシリーズ」のほかにも、「和のルール」「美しく暮らす36の知恵」「収納のルール」「美的のルール」「自分を躾ける」など多数の著書がある。
たとえば、「どうも」という言葉。どんな場面でも使える便利な言葉だが、お嬢さまたるもの、決して使ってはならない。
お嬢さまをめざすあなたさまは、このようなとき、「どうも」などとおっしゃってはいけません。直ちに、お里が知れてしまいます。
お嬢さまは、「どうも」の代わりに「恐れ入ります」を使う。
たとえば、どちらかのお宅をお訪ねになるとき、中に勧められたら、「恐れ入ります」と言って、玄関に入ります。スリッパをお借りするときも、「恐れ入ります」。コートを預かっていただくときも、「恐れ入ります」。お召し物やおぐしをお誉めにあずかったら、「恐れ入ります」と言ってほほえみ、お茶をお勧めいただいたら、「恐れ入ります」と言って頂戴いたします。まことに、重宝なことばでございますこと!
なんならスマホやパソコンでも「どうも」と入力したら「恐れ入ります」と変換されるように設定しておくとよいかもしれない。
本書ではほかにも「すみません」の禁止、「存じます」の使用、「わたくし」と「さま」の徹底、「さようでございますか」の法と「ええ、ええ」の禁、沈黙とほほえみの術など「お嬢さまことば」を速習するための十五条を提案している。
お嬢さまことばは、自分を高めるためではなく、相手を高め、自分を落とさないために用いるのだという。平常心を保つことも、お嬢さまの要件だ。
相手がどんな人でも、まずはお嬢さまとして振る舞うこと。
あなたさまが、丁重に接することによって、お相手の方もまた、同じように接するお気持ちになられるからでございます。
相手を尊重する気持ちこそが、お嬢さまへの第一歩ということなのだろう。
徹頭徹尾、お嬢さまことばを貫く文章に笑いながら読み進めれば、いつの間にか、高級ブティックやレストラン、ホテルで「お嬢さま」としてのもてなしを受けられるスキルが身につく(かもしれない)。
周囲の人に「最近、なんだか雰囲気が変わったね」と言われたら、もちろんこう答えよう。
「恐れ入ります」。
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