本を読む子と読まない子とでは、学力だけでなく、一生を左右する「ある能力」に大きな差が出る――。
心理学者の榎本博明さんは、著書『読書をする子は○○がすごい』(日経BP)で、いまの日本の教育の在り方は、本を読む子と読まない子の差を広げ、教育格差を助長していると警鐘を鳴らす。
榎本さんによれば、子どもたちの学力の二極化はすでに進んでいるという。
当初はあまり差がなかったはずなのに、いつの間にか、知的好奇心が強く、いろんな本を読み、知識や読解力を身につけながら自分の世界を広げていく子と、知的好奇心が乏しく、本を読むことなくスマホばかりいじり、知識も読解力も乏しく、狭い世界に閉じこもっている子にわかれていく。
その要因の一つが、学校教育だ。
本を読めない、教科書も理解できない、自分の思っていることを文章にするだけの語彙力がない。そんな子どもや若者が多くなっているとされるが、それには学校教育が知識偏重教育から脱却する方向に傾いていることが関係しているのではないか。そうした状況で自由に漂う結果、語彙力に大きな差がつくようになっていると考えられる。
また、家庭でも「のびのび自由に育てたい」という教育方針が、逆効果になっている可能性もあるという。
自主性の尊重とか、個性の尊重といった言葉には、全面的に良いことであるかのような響きがあるが、じつは今ある能力差という個性をそのまま容認することにもつながり、学力の格差を助長する側面ももっていることには注意が必要だ。
知識の詰込み型ではなく社会に出て即戦力となるべく「実用性」を重視する、何事も子どもの「自主性」に任せる、というと聞こえはいいが、「学びたい」という強い気持ちのない子は、どんどん置いて行かれることになる。結果、「文学や評論に親しんで、想像力や思考力を磨き、また豊かな知恵を身につけた教養人」と、「実用文以外はほとんど読むことのない非教養人」の二極化が進んでいく。
榎本さんは、読書量の差は学力だけでなく、コミュニケーション能力にも大きな影響を与えるという。本を読み、登場人物の気持ちや発言の意図を正確にくみ取ったり、作者の意図をとらえたりできる子(=読解力のある子)とできない子(=読解力のない子)とでは、相手の気持ちや状況を理解する能力に差が出るというのだ。
たとえば、職場における人間関係のトラブルやクレーマーが増えていること、学校での暴力事件などにも、読解力が関係している。親切のつもりのアドバイスが相手を怒らせてしまったり、仕事の手順をうまく説明できなかったり、上司への報告が要領を得なかったり......。
本書では、こうした現状をふまえて、子どもの読書量を増やし読解力をつける方法を具体的に示している。
目次は以下の通り。
第1章 読解力の危機とは?
第2章 言語能力はどうやって身につくのか?
第3章 読書はほんとうに効果があるのか?
第4章 なぜ読解力が身につかないのか?
第5章 家庭の言語環境を整える
子どもに本を読ませるためには、まず親が本を読み、家に所蔵する本を増やすことが必要だという。親子で本を読むことが習慣になれば、「ママ、いま何読んでるの?」「この本、面白いよ」と会話も増える。家庭でのコミュニケーションが円滑になれば、子どもが社会に出た時に必要なコミュニケーション能力の素地を磨くことにもなるだろう。
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