自分と深く関わりがある出来事ではないのに、なぜか印象に残っている。そんな記憶はあるだろうか。
小説家の恩田陸さんにとってそれは、1994年にたまたま見かけた「2人の女性が橋から飛び降り自殺をした」という短い三面記事だった。最新刊『灰の劇場』は、小説家デビュー当時からの恩田さんの「宿題」をきっかけに生まれた作品だ。
物語の主人公である小説家の「私」は、デビュー当初目にした小さな「三面記事」がずっと心に引っかかっている。なぜ2人は心中をしたのか、そして、どうして私はこの記事がこんなにも気になるのだろうか。疑問を抱えて日々を過ごしていた「私」は、ある日、編集者から当時の「三面記事」を渡される。それがきっかけで、「私」の日常は、心中した2人の女性に侵食されていく――。
現実と虚構の境目で揺れ動く主人公の心情に引きずり込まれていく。恩田陸ワールドの真骨頂だ。
『灰の劇場』を読んだ書店員からは、
「これは私の話ではないだろうか? 読んでいる間ずっと、そんな気にさせられていた」
「今一番、あなたはどう思った?って誰かと話したい小説」
「結末まで一歩も動かず、ただ物語の行方を見守ることしかできない、圧倒的衝撃作!」
といった、興奮の声があがっている。
また、同時発売される「文藝別冊 恩田陸 白の劇場」(河出書房新社)は、恩田さん初の総特集ムックだ。桐野夏生さんとの特別対談や、大森望さんによるロングインタビューほか、豪華執筆陣によるエッセイ、書評などを収録している。
ほかにも、『灰の劇場』のスピンオフ小説「灰の劇場 0-(ゼロマイナス)」、「灰の劇場0+(ゼロプラス)」や、単行本未収録作品の「ジョン・ファウルズを探して」、「ソウルのカササギは王宮で鳴く」など、ここでしか読むことの叶わない作品も多数掲載しており、読みごたえがある。
今までの恩田作品や、最新刊『灰の劇場』を楽しむための副読本として、小説と一緒に手にしたい。
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