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「ずるい考え方」は魅力的やろ!!

まんがで身につく ずるい考え方

 真面目にやっているのに成果が出ない人がいる一方、うまいことやっている人もいる。両者の違いはなにか? それは意外にも、「ずるい考え方」を知っているかどうかだという。

 木村尚義さんの『まんがで身につく ずるい考え方』(あさ出版)は、「ずるい考え方」こと「ラテラルシンキング(水平思考)」を初めて学ぶのにピッタリな一冊。

 やけに厚かましいが「ずるい考え方」にやたら詳しいキツネが登場し、「ラテラルシンキング」をこう紹介する。

 「スタート地点からジャンプしていきなり答えに到達するようなもの つまりあらゆる前提から自由になれるから今までにないものが生まれる(中略)どうや? 魅力的やろ!!」

 本書は、2011年に刊行され7万部を突破した『ずるい考え方――ゼロから始めるラテラルシンキング入門』をコミック化したもの。

 木村尚義さんは、日本で最もラテラルシンキングの書籍を執筆しているラテラルシンキングの専門家。流通経済大学卒業後、ソフトウェア開発会社を経て、OAシステム販売会社に転職。その後、外資系IT教育会社で数多くの研修を行い、受講者は3万人を超える。2008年、株式会社創客営業研究所を設立。全国の企業、自治体、官公庁へ逆転の発想セミナーを実施。訪問企業は1000社以上。株式会社創客営業研究所代表取締役。アカデミーヒルズ六本木ヒルズライブラリー公認メンバーズコミュニテイ個人事業研究会会長。

ネズミが1位になれた理由

 「ラテラルシンキング」とは、日本では古くから一休さんのトンチ話で知られる考え方。これを活用すれば、「最小の力で最高の結果を導き出す」ことができるという。

 はじめに、ネズミが十二支に選ばれた話を例に挙げている。

 お釈迦様は、新年の挨拶に到着した順で十二支を割りあてると言った。お釈迦様が出したお題は「到着した順番は問うが、訪れる方法は問わない」。つまり、動物たちに「それぞれの能力を使え」というもの。

 「小さいから負けるに決まっている」と自覚していたネズミは発想を逆転させ、「小さい」を活かせる方法を探した。そして「足が遅いから」と誰よりも先に出発したウシの背中にちゃっかり乗って、ゴール手前で飛び降り1位となった。

 ウシの力を利用して1番乗りを果たしたネズミは「ずるい」ような気もするが......。

 「ネズミにしてみれば、どんなに、一生懸命にやっても、真面目にやっても勝ち目のない勝負。絶対に無理と思われていた逆境をひっくり返すネズミの姿は痛快じゃないですか」

 たしかに、お釈迦様は「他人の背中に乗ってはいけない」とは言っていない。与えられた条件のもと、ネズミが知恵をしぼった結果である。

 「ルールを犯さず最小の力で最大の効果を出す」。これこそが「ずるい考え方」、つまり「ラテラルシンキング」としている。

京都弁のキツネ現る

 まんがの主人公・杏奈は、神社の孫娘。百貨店企画部勤務。休日は巫女として神社を手伝っている。職場では仕事が行き詰まり、家では父と祖父のケンカが絶えず、悩みは尽きない。そんな杏奈の前に突然現れたのが、京都弁をしゃべる一匹のキツネだった。

 杏奈 「もっとうまく生きられたらどれだけラクなんだろう...」
 キツネ「もっと"ずるく"生きるんや」
    「発想の転換でもっとラクにゴールできるようにするってことや」

 発想を制約せず、たった一つの正しいとされる答えにとらわれず、あらゆる可能性から問題を解決しようとする「ラテラルシンキング」。各Chapterに登場する悩みを抱えた人物たちに、キツネはこの「ラテラルシンキング」を伝授していく。

Chapter1 ラテラルシンキングでワクワク感をつくりだせ!
Chapter2 相手が何を考えているか、シンプルに理解すれば、思いどおりに相手を動かせる
Chapter3 高すぎるハードルほど、くぐりやすい
Chapter4 視点を変えられたら一人勝ち

 百貨店の売り上げが落ち込む中、これまでと違ったアプローチで「靴のイベント」を考えることを求められる杏奈。強面のため、部下の女性たちに距離を置かれることを悩んでいる上司。仲良しだった友だちの態度が急変し、戸惑っている甥っ子。老朽化が進む神社の今後の方針をめぐり、ケンカが絶えない父と祖父。

 彼らはキツネの「ずるがしこさ」に翻弄されながらも、「ラテラルシンキング」を実践していくことになる。

スティーブ・ジョブズのカリグラフィ

 「ラテラルシンキング」には、メソッドも正解・不正解の枠組みもない。ただ「マネ」をすること。たくさんの具体例を見て、マネしているうちに「ああ、これ○○に似ているな」とパターンがわかり、コツが身についてくるという。

 具体例として、キツネは「ラテラルシンキング」で現状を打破した偉人たちのエピソードを紹介している。たとえば、スティーブ・ジョブズのカリグラフィ。

 ジョブズは大学に入学したものの、目的を見出すことができず退学。しかし、退学後も面白そうな授業はこっそり受けていたという。それがカリグラフィの授業だった。カリグラフィとは、専用のペンを使ってアルファベットをさまざまな書体で美しく書く技法。一見、カリグラフィとパソコンは無関係に思えるが......。

 その後、ジョブズは個人向けコンピュータ「マッキントッシュ」を生み出す。ただ、当時のディスプレイは機械的で無機質な文字しか表示できなかった。そこでジョブズは「パソコンで色々な書体が使えたら楽しいだろうな」とひらめき、「マッキントッシュ」のフォント開発にカリグラフィの知識を生かしたそうだ。

 後にジョブズは、スタンフォード大学の卒業式のスピーチでこう語ったという。

 「未来を見通すことはできない。むしろ過去を振り返って 経験から点と点を結びつけ なんらかの形をつくることが大切だ」

 ジョブズを例に、クラスメイトとの関係に悩んでいる杏奈の甥っ子に向けて、キツネはこんなアドバイスを送る。

 「アンタもクラスとかいう狭いコミュニティで悩むよりも やりたいことを見つけて飛び込んだほうが いつかその点がほかの点とつながって 想像もできひん新しい"なにか"をやり遂げられるかもしれへんで」

 このほか、松下幸之助は先の先を読んだある方法で売れなかった自転車用ランプをヒットさせた、ジョージ・ルーカスは監督の報酬額にこだわらない代わりにある条件を提示して「スター・ウォーズ」を製作したなど、「ラテラルシンキング」が炸裂したエピソードはいろいろある。

 「ラテラルシンキング」のコツは、「事例を無理矢理でも自分の状況に当てはめ、どんどん試すこと」だという。まんがを楽しく読みながら頭をほぐし、「ずるい考え方」をふだんの生活で実践すれば、仕事も人生もうまいこと回り出すかもしれない。



 


  • 書名 まんがで身につく ずるい考え方
  • 監修・編集・著者名木村 尚義 著、たかうま 創 作画、星井 博文 シナリオ
  • 出版社名あさ出版
  • 出版年月日2021年1月18日
  • 定価本体1300円+税
  • 判型・ページ数四六判・181ページ
  • ISBN9784866672571

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