読むべき本、見逃していない?

鎌田實さんが人生で見つけた答え

鎌田式「にもかかわらず」という生き方

 アラフィフ女性向けのある月刊誌が、「心がときめく男性著名人」というアンケート調査を実施したという。その結果、「一緒に食事をしたいランキング」「抱きしめられたいランキング」で第2位に選ばれた人物とは......。

 医師・作家として多方面で活躍している鎌田實(かまた みのる)さんである。ランクインしたことについて、ご本人は「選ばれてしまった」「笑ってしまった」と書いている。

 「僕は若い時からずっと老け顔で、ハタチの頃から40歳と間違えられるような青年だった。中年クライシスの頃には、今よりも9キロ太っていてぶくぶくしていた。年老いてからのほうが、見た目がよくなったということかもしれない」

 本書『鎌田式「にもかかわらず」という生き方』(宝島社)は、鎌田さんが「人生100年時代の幸福論」を説いたのもの。「生老病死の悩みがあっても人生を楽しく過ごせるヒント集」であり、60~80代必見の一冊。

ずっと大事にしてきた言葉

 鎌田實さんは、現在72歳。東京医科歯科大学医学部卒業後、諏訪中央病院へ赴任。30代で院長となり、潰れかけた病院を再生させた。「地域包括ケア」の先駆けを作り、長野県を長寿で医療費の安い地域へと導いた。現在、諏訪中央病院名誉院長、地域包括ケア研究所所長。

 一方、チェルノブイリ原発事故後の1991年より、ベラルーシの放射能汚染地帯へ100回を超えて医師団を派遣し、約14億円の医薬品を支援 (JCF)。2004年からはイラクの4つの小児病院へ4億円を超える医療支援を実施し、難民キャンプでの診察を続けている(JIM-NET)。また、東日本大震災以降、全国の被災地支援にも力を注いでいる。

 メディアでよくお見かけするお医者さんとして親しみを持っていたが、国内外の支援活動をこれほど精力的に展開している方とは知らなかった。

 はじめに長引くコロナ禍について、「息が詰まりそうだ。とんでもなく厄介な時代がやってきてしまった。経済もズタズタになっている」と率直に書いている。

 「これから、価値の大転換が起きるだろう。新しい経済の形が生まれ、新しい生き方が模索されていく。どう生きたらいいのだろう? 僕の中には、今まで歩んできた人生で見つけた一つの答えがある」

 その答えというのが、逆境や苦難をプラスに転化させる「にもかかわらず」。鎌田さんが「にもかかわらず」という言葉をずっと大事にしてきたのは、父の影響だという。

そうやって生き抜いてきた

 「僕の両親は、僕を育てることができなかった」――。鎌田さんは自身の生い立ちについて、こう書いている。親戚でもない、どういう関係だったのか、いくら調べてもわからない鎌田岩次郎夫妻が「僕を拾ってくれた」と。

 岩次郎氏は、貧困と重病の妻という二つの困難を抱えていたにもかかわらず、「行き場のない僕を拾ってくれた」。そこに、「彼のすごさがあるように思う」と振り返っている。

 「子どもの僕は感覚によって『にもかかわらず』という父の生き方を理解し、その種を植え付けられていったように思う」

 鎌田さんが子ども時代、IQ検査を受けたときのこと。担任の先生から「鎌田は、頭があんまりよくないぞ」と言われたという。そんなことを面と向かって言われたら、くじけるかぐれるかしそうなものだが......。鎌田さんにとっては、その言葉も大事だった。

 「頭はよくない、にもかかわらず、人の二倍勉強をすればなんとかなるんじゃないかと思っていた。それからの人生を僕はいつもそうやって生き抜いてきた」

 人生、なにが幸いするかわからない。鎌田さんは「にもかかわらず」の精神で、逆境をプラスに転化させたのだ。「にもかかわらず」の生き方こそ、「今を生きるヒントになると思っている」。

根底には「希望」「信」「愛」

 本書は、年齢、病気、老化、お金、死をテーマに、人生を好転させるマジックワード「にもかかわらず」の極意を披露している。

第1章 高齢になったにもかかわらず(世界最高齢のプロDJ ほか)
第2章 病気になったにもかかわらず(ウィズコロナ時代のストレス対処法 ほか)
第3章 体が衰えたにもかかわらず(スーパースクワット ほか)
第4章 お金に悩んでいるにもかかわらず(相続を争続にするな ほか)
第5章 人は死ぬにもかかわらず(死ぬ意味 ほか)

 本書の読みどころの一つに、鎌田さんの幅広い交友関係がもたらす貴重なエピソードがある。

 第1章「『にもかかわらず』の極意」には、画家の原田泰治さん(80)、歌手の佐田雅志(さだまさし)さん(68)が登場。三人の名前からとった「三田(サンタ)会」を結成するほどの仲だという。

 原田さんは子どもの頃、小児麻痺になった。小学校へ上がる前までは、なかなか立ち上がれず這うだけだったが、そこで「虫の目」を持った。家は裕福でなく、山の中へ転居し、町を見下ろすところで生活したが、そこで「鳥の目」を持った。原田さんはいつも「希望」を持って生き抜いてきた。

 さださんは28歳の頃、ドキュメンタリー映画の撮影が難航して35億円の借金を背負ったが、自分を「信」じて生き抜いてきた。

 鎌田さんは、難病や末期がんの患者に正面から向き合い、必死に生きる彼らを「愛」してきた。

 「僕ら三人の根底には、『希望』『信』『愛』がある。この3つをごちゃ混ぜにしながら、自らを律し、スタイルをつくり上げてきた。(中略)これからどんな状況になったとしても、この『にもかかわらず』という生き方を身につけている人は強い」

下り坂のやりがい

 第3章「体が動かないにもかかわらず」には、「下り坂には下り坂のやりがいがある」という人生哲学が。

 「肩の力を抜いて斜面をひょいひょいと下りていく」鎌田さんもいれば、「上り坂をがんばっている」鎌田さんもいる。それでも、もっと長いスパンで人生を考えてみると、「結局は生まれた直後から緩い下り坂にあるのではないか」、その中で「うきうきするような上り坂をいくつつくれるかが勝負だ」と思ってきたという。

 「生まれてすぐに親から捨てられ、僕はずっと下りを生きてきた。でも、下りの中に、時々、面白い上り坂を経験してきた。これからも、この下りの中で、僕は新しい生き方を見つけていこうと思っている」

 多くの人は今、「下り坂」にいる感覚を共有していることだろう。それにもかかわらず、「上り坂」をつくるにはどうしたらいいのか? 鎌田さんの「新型コロナ時代の幸福論」はこうだ。

 「好奇心を持つ、朗らかである、笑う、そして太陽に当たりながら軽い運動をして、美味しいものを食べる。これが、幸福を感じながら、生き生きと生きるコツ」

 認知症、がん、老化、お墓、相続、お金、さらにコロナ......。不安の種は尽きない。にもかかわらず、鎌田さんは「何歳になっても人は変わることができる!!」としている。本書はそうした鎌田さんの人生哲学とともに、新型コロナに関する医学的な解説もあり、癒やしにもためにもなる一冊。



 


  • 書名 鎌田式「にもかかわらず」という生き方
  • 監修・編集・著者名鎌田 實 著
  • 出版社名宝島社
  • 出版年月日2020年12月23日
  • 定価本体1260円+税
  • 判型・ページ数B6変型判・224ページ
  • ISBN9784299005816

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