今年は家で過ごす時間が増えた。家が居心地のいい空間でなければ、ステイホームはなかなかしんどい。混沌としたコロナ禍に、せめて家だけは安全安心が保たれた空間であってほしい......。
生活評論家・沖幸子さんの本書『50過ぎたら、住まいは安全、そうじは要領』(祥伝社)は、累計17万部突破の「50過ぎたら」シリーズ最新刊。「時間のかかる整理、疲れるほどのそうじ 50代になったら、もうやめませんか?」――。本書は、そうじのカリスマが教える「あなたの心と体を守る住まい方・暮らし方」「"知恵"を生かして生活のストレスを上手に解消!」する方法が満載。
「明るい将来に向かって、よき暮らし方への転換のヒントにしていただければ幸いです」
沖幸子さんは、家事サポートサービス「フラオ グルッペ」代表。大学客員教授(起業論)、経済産業省や厚生労働省などの政府審議会委員も務める。神戸大学卒業後、ANA、洗剤メーカーを経て、ドイツ、イギリス、オランダで生活マーケティングを学び、グローバルな視点を持つ暮らしのデザイナー・女性起業家としてテレビ、ラジオ、雑誌などで活躍中。「そうじのカリスマ」として知られ、家事・暮らしが楽しくなるエッセイや評論は「沖マジック」として話題に。著書に『ドイツ流 掃除の賢人――世界一きれい好きな国に学ぶ』(光文社)、『50過ぎたら、ものは引き算、心は足し算』(祥伝社黄金文庫)などがある。
在宅時間が増えるなか、中高年以上の自宅でのつまずき、ケガが増えているという。原因は、ものが多すぎたり片付いていなかったりすること。50代に差し掛かると徐々に体力の衰えが始まり、かつてのイメージで大丈夫と思って行動していると、たとえ自宅でも思わぬケガをすることにつながるという。
本書は「1章 要領のよいそうじの工夫」「2章 安全・安心に住まう」「3章 ものとの"よい関係"で快適に過ごす」「4章 ストレスを軽くするさりげない知恵」の構成。安全安心な自宅環境のつくり方、快適で満たされた暮らし方を綴った96項目は「なるほど」の連続である。そうじを生業にする著者ならではの「清潔×安全×心の豊かさ」の実用エッセイとなっている。
コロナ禍をどう受け止めるか。それはその人次第で幾通りにもなりうる。そんななか本書のプロローグを読んで、沖さんのように捉えられたらいいなと思った。
「人生はよく旅にたとえられることがあります。旅同様、人生にはいろいろと予期せぬ出来事が起こるものです。今回、私たちの生活に急に舞い降りてきた新型コロナ禍も、不安や恐怖をもたらしました。でもその反面、地に足のついた暮らし方について、真面目に"考える機会"を与えてくれたような気もします」
巣ごもり生活、ステイホームによって、家で家族と過ごしたり、家事に関心を持ったり、庭仕事やまわりの自然との新しい出会いを楽しんだりと、「個人の豊かな生活とは何か」を考えることが多くなったのではないか。その反面、家を快適にする住まい方について、どうすればよいのか戸惑う人も少なくないのではないかと、沖さんは感じている。
「これからの社会は、慌しさに流されるばかりの状態から立ち止まり、『ほどほど』の大切さや『心に豊かさのある生活』といった、日本人になじむものを上手に取り入れていく必要がある気がします」
清潔にシンプルに暮らし住まう心豊かな習慣は、昔の日本人にとって当たり前。今は失いつつあるものだが、もともと自然と身についていたものだったという。
「本書では暮らしの基本に立ち返り、そうじの仕方や住まい方を見つめ直すうえで、簡単にやれること、負担なく楽しくできること、海外の習慣だけれど日本人にも合うおすすめのもの等々、私なりに実践してきたことを紹介してみたいと思います」
本書の巻頭には、沖さんの自宅のカラー写真が掲載されている。どの部屋のどの角度をとっても、モデルルーム並みの清潔感が漂う、洗練された空間ばかり。とてもまねできそうもないと思ったが、意外にも1つ目の項目は「潔癖主義はやめると決める」だった。
「何事もやりすぎないこと。人生は、すべてにおいて少しのゆとりを持って生きたほうが心も体もラクです」
最初に決めることは「完璧主義をやめる」こと。時間内でやれることを決め、汚れやホコリは溜めず、あとは気にしないことが、のんびりと快適に過ごせるようになるコツ。この心構えはコロナ対策にも通じるという。
「基本的なことをきちんとやれば、あとはコロナと共存しながら自然体で生きていくしかありません」
「ウイルスを駆除して清潔にしなくては」と"しなければいけない"ことばかりを見てしまい、"今できること"を見ていない人は、自覚のないうちに視野が狭くなり、いつの間にかエネルギーが枯れてしまうという。
コロナ対策はもちろん大事だが、「現実のホコリまみれの部屋こそ、そして今のあなたの心のなかこそ、まずはクリーンにしたほうがいい」と、冷静だ。沖さん自身、コロナの予防対策は「自分のなかで線引きをあらかじめ決めました」という。そうじはコロナ対策と似ていて、「ポイントを押さえれば、まあまあ快適に安心して暮らせるもの」と、割り切っている。
あれもこれも紹介したいところだが、ここでは「そうじのカリスマ」の「要領のよいそうじの工夫」から。沖さんのおすすめは"ながらそうじ"。これは他のことをしているついでに"ながら"気分でするもの。沖さんが実践している一例は以下のとおり。
・歯磨き×洗面台そうじ......歯を磨きながら、洗面台の水滴や鏡の汚れをさっと拭く。
・トイレ×トイレそうじ......使ったあとに、柄付きタワシでこすっておく。
・料理×キッチンそうじ......フライパン料理のあと、レンジ台まわりを拭く。
・入浴×お風呂そうじ......湯気が立ち込めて、汚れがゆるんで浮き上がっているうちに、熱いシャワーを天井から壁に向かってかけておく。
家事をためると頭がこんがらがってセカセカしてしまうもの。なにかをしながら済ませてしまえば、キレイな状態が保てるうえに気が楽だ。ほかにも「瞬間そうじで負担減」「住まいのそうじスケジュール」「部屋のなかの危険から身を守る!」「70%収納を目指す」「"定量""定番""定位置"」「心配を和らげる方法」など、暮らしの質をよくする知恵があふれている。
「今回のコロナ禍は、自分の受け取り方次第では、現在の自分や暮らしを再発見する、ちょうどいい機会になるような気がするのです。......この機会に、明日へのよき暮らしのヒントのあれこれを、少しでも前向きに挑戦してみていただきたいのです」
沖さんが日々親しんでいる"古くて新しい"暮らしのレシピは、そうじが好きでなくても、50を過ぎていなくても、コロナ禍を生きる今読んでおきたい一冊。再び感染者が増加傾向にあるなか、「もういい加減疲れた......」という人がいったん立ち止まり、広い視野で暮らしを見直し、よりよくするためのガイド本になるだろう。
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