新型コロナウイルスの影響であらゆる業種が苦境に立たされる中、日本人に根づく「もったいない」精神が発揮されている。たとえば、農水省や各自治体などが給食食材を販売してフードロス削減に取り組んだり、新潟のバス会社が休業中のカラオケ店に代わりバスで一人カラオケができるサービスを提供したり、である。
日常生活では、ここ数か月で在宅時間が長くなり、掃除、洗濯、料理など家事全般の回数が増えた。食費や電気代を節約しようと、「もったいない」精神を発揮して工夫を凝らしている人も多いだろう。ところが、その「もったいない」と思ってやっていた習慣こそが「もったいない習慣」だったとしたら......。
本書『こんなに損してる! もったいない112の習慣』(青春新書プレイブックス)は「掃除、洗濯、料理、家電、節約」にまつわる112の「もったいない習慣」を集めた1冊。それらを以下の12項目に分け、なにが間違っているのかを1つずつ解き明かし、代わりに身につけたい「得する習慣」を提案している。
・その習慣、本当にもったいない!
・その節約術はムダで逆効果!
・わざわざ高い買い物するなんて!
・ちょっと待った!まだ使える!
・そのやり方では劣化が進む!
・もっと節電できるのに!
・もっと節水・節ガスできるのに!
・その食べ方ではもったいない!
・その保存の仕方ではすぐ傷む!
・利用できるから、捨てちゃダメ!
・車や電車で損してしまう!
・そのお金の管理は大間違い!
112の「もったいない習慣」の中で、たとえば「バスタオル 柔軟剤を使って、ふかふかに」「乾電池が切れたら、入れ替える」「スニーカー 買ったらすぐに履く」「バナナ 南国の果物だから保存は常温で」などは一般的な習慣と思われる。一体なにが間違っているというのか?
まず、柔軟剤を使ってバスタオルを洗うとふかふかにはなるが肝心の吸水力が落ちる、乾電池は切れても手で包んで温めるだけで簡単に復活する、スニーカーは新品のうちに防水スプレーをかけると長持ちする、バナナは野菜室で保存すると1週間経ってもOKという。1つにつき1、2ページを使って解説しているため、実際はもう少し詳しい。これらは生活に取り入れたいところだ。
一方、ティッシュやトイレットペーパーは商品によって枚数や長さが違うため値段が安いものが必ずしも得とは限らない、アプリの使い過ぎや充電中の使用で熱くなったスマホを冷蔵庫で冷やすと本体内部に結露が生じて故障する可能性があるなどは、人によって「すでに知っている」あるいは「そんなことしたこともない」と分かれるところだろう。評者はスマホを冷蔵庫に入れたことはなかった。
本書のすべてが「目から鱗」とはいかないかもしれないが、すでに実行していても初めて理由を知ることもある。「掃除、洗濯、料理、家電、節約」の豆知識が蓄積されていくのを感じるだろう。
編者のホームライフ取材班とは、「暮らしをもっと楽しく! もっと便利に!」をモットーに、日々取材を重ねるエキスパート集団。取材対象は、料理、掃除、片づけ、防犯など。巻末には「主な参考文献」と、官公庁や企業などの「主な参考ホームページ」を多数掲載している。
ここでは、これからの季節に役立つ冷房に関する2つを紹介したい。
1つ目は「冷房時、風は下向きにする」という「もったいない習慣」。冷気が人に直接当たったほうが涼しいからと、風が下に向かって吹く設定をしていると、電気代は相当無駄になるという。
冷たい空気は下にたまり、温かい空気は上がっていくため、エアコンの冷気も同様、部屋の下側だけ冷えていく。しかし、エアコンが温度を感知するのは本体周辺のため、まだ設定温度まで冷えていないと感知して無駄にパワーを使い続けてしまうのだ。では、「得する習慣」とは?
「冷房の風向きは水平が正解。こうすると、冷風は人のいるところまで自然に下がり、エアコン周りも冷えやすいので、早めにパワーが落ちて節電できる」
2つ目は「エアコンの室外機は特に省エネ対策しない」という「もったいない習慣」。エアコンの設定温度を少し高めにする、扇風機と併用するなどの節電を心がけている人は多い。しかし、じつは非常に有効なのにほとんどの人がやっていない省エネ対策が、エアコンの室外機を冷やすことだという。室外機の温度が上がると、熱を放出しにくくなり、電力が余分にかかってしまうのだ。では、「得する習慣」とは?
「簡単かつ効果があるのが、室外機とその周りに打ち水をすること。周囲の温度が35℃から30℃に下がると、電力を約20%も抑えることができる。よしずをかけて直射日光をさえぎる、周囲からものを移動して風通しを良くする、といった有効な対策も併せて行おう」
本書は「掃除、洗濯、料理、家電、節約」の観点から、見直すことの必要性を謳っている。これまでの当たり前を見直す時期にさしかかっているいま、タイムリーな1冊と言える。
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