「もったいないばあさん音頭」をご存知だろうか。評者は夏祭りで見たことがあるが、覚えやすく、踊るのが癖になりそうな振り付けだ。
真珠まりこさんの絵本『もったいないばあさん』シリーズは、そのキャッチーなネーミング、一度見たら忘れないばあさんの容姿、音頭のインパクトが強い。評者が抱いた第一印象は、面白そうな絵本だった。
しかし、『もったいないばあさんと 考えよう 世界のこと』(2008年)、『もったいないばあさんと 考えよう 世界のこと 生きものがきえる』(2010年)では、貧富の差や生物多様性などについて描かれている。真珠さんが絵本をとおして伝えるテーマは、現実に起きている地球規模の問題だった。
新刊『もったいないばあさん かわをゆく』(講談社の創作絵本)は、川を舞台に「水の循環、命のつながり」をテーマにしている。
ぼくがペットボトルを川に捨てしようとしていると、「もったいなーい」と、もったいないばあさんが現れた。みんなやっているのに、どうしてだめなの?
もったいないばあさんは「それが わからないなんて もったいない みに いこう」と言い、「やまの うえの もりの おく かわの はじまり」へぼくを連れて行く。
そこで生まれた「かわの あかちゃん」。かわのあかちゃんはここからどこへ行く? もったいないばあさんとぼくがついて行くと......
かわのあかちゃんは、小さな川、滝、大きな川、海へと流れていく。その途中、ゴミ袋から出られなくなり泣いている虫のあかちゃん、川から海へ流れたゴミを食べてしまい泣いている生きもののあかちゃんがたくさん。
その光景を目にしたぼくは、ある行動にでる。果たして、ゴミだらけの水中を漂うかわのあかちゃんは、どこへ行きつくのか?
海洋プラスチック問題について、ニュースで目にする機会が増えた。今年(2019年)6月、環境相が来年までにレジ袋有料を義務化する考えを示したが、本書はそうした最近の流れとリンクする内容となっている。
本書ではここまでの理解になるが、真珠さんのブログを見ると、真珠さんが日本にとどまらず世界規模でこの問題を捉えていることがわかる。
本書が制作された背景には、真珠さんのインドへの旅がある。昨年1月、ガンジス河の名前が始まる場所・デバプラヤッグから河口・ガンガサゴールまで旅したことから発想を得たという。今年6月、ガンジス河の神さま・マザーガンガに本書完成の報告とお礼をするため、再びインドを訪れた際の様子が詳しく綴られている。
昨年『もったいないばあさん』はヒンディー語に翻訳、出版されたという。インドは環境汚染が深刻だが、「『もったいない』は思いやりや敬意など深い意味が込められた言葉。インドで意識改革の役に立てればうれしい」と真珠さんは話している(2018年1月14日付毎日新聞)。
ものや自然を大切にしないのは「もったいない」――。もったいなばあさんというユニークなキャラクターを媒介に、真珠さんは世界に発信している。
真珠まりこさんは、神戸生まれ。大阪とニューヨークのデザイン学校で絵本制作を学び、1998年『A Pumpkin Story』(Greene Bark Press,USA)でデビュー。2000年に同書の翻訳版『かぼちゃものがたり』(学研)を出版。04年に出版された『もったいないばあさん』は、毎日新聞、朝日小学生新聞などさまざまなメディアで紹介されている。
08年より、地球の問題と世界の子どもたちの現状を伝える「もったいないばあさんのワールドレポート展」を開催し、全国を巡回展示。命の大切さを伝える「もったいない」をキーワードに、ガイド役のもったいないばあさんとともに、子どもたちにわかりやすく伝える活動をしている。09年より、環境省・地球生きもの応援団メンバーを務める。
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