断捨離、ミニマリスト、こんまりなどのワードはすっかり定着していたが、外出自粛がスタートしてからというもの、メディアで「整理」「収納」「片づけ」の文字を目にする頻度はグンと高まった。もともと多くの人が「物を減らしたい」「身軽になりたい」と思っていたところに、増えた在宅時間と「整理」「収納」「片づけ」を結びつけて推奨する流れができている。
次々と情報が出てくるが、「整理」「収納」「片づけ」を始めたそもそものきっかけが印象的だった一冊がある。本書『さよさんの「物の減らし方」事典――リバウンドしない整理収納術』(講談社)の著者・小西紗代さんは、冒頭の一行目にこう書いている。
「物の整理は人生の棚卸しです」
この一文には、小西さんが物を処分することになった人生の3度の節目が隠されていた。
小西紗代さんは、兵庫県神戸市在住。整理収納アドバイザー1級、風水鑑定士、生前整理アドバイザー準1級認定指導員。元幼稚園教諭。病気を機に退職後、2012年より整理収納アドバイザーとして活動開始。整理収納に加え、風水、デジタルを取り入れた「21世紀の開運収納術」でHappyとLuckyを呼び込む暮らし創りを提唱している。著書に『さよさんの「きれいが続く」収納レッスン――片づけやすさのカギは、グッズ活用術にある!』(講談社)、『さよさんの片づけが大好きになるベストアイデア』(宝島社)など。
さて、小西さんが物を処分することになった人生の3度の節目とは、一体何だったのか――。1度目は、阪神淡路大震災。実家の部屋は思い出の物が溢れる「物置状態」だったが、震災を機に写真以外を処分した。
2度目は、41歳でがんの手術をすることになった時。手術の同意書にサインしながら「こりゃヤバイ!」「もしも......があるかも」と、帰宅後すぐに物の整理に着手。手術まで一週間を切っていたが、使っていないバッグや衣類を処分。通帳や保険証券類は一ヵ所にまとめ、家族に伝えた。
3度目は、歳下の従妹が突然他界した時。しばらく落ち込んだが、生前整理の必要性を強く感じ、生前整理について学んだり、がん保険や生命保険に新たに加入したり、写真や思い出の物を整理した。
こうした危機感、切迫感が小西さんを突き動かし、いまではプロとして活躍しているというわけだ。現在は季節の変わり目に必ず衣類を整理し、物が新しく家に入ってくれば不要な物を処分しているというが......。
「それでもいつの間にか物が増えているのですから、意識していなければ、家中、物だらけになるのは必定です」
「物の整理は痛みを伴います。手放す痛みをゼロにはできませんが、それを越える『快適』が必ず待っています。あなたが持っている物は、あなたの生きてきた証です。一度、自分の持ち物と向き合い、人生の棚卸しをしてみませんか?」
このように部屋が片づかない理由、捨てられない心理にいったん理解を示した上で、プロの考え方と片づけの現場から生まれたメソッドを伝授する。
最初に、著者は「『整理』『収納』『片づけ』の意味を理解していますか?」と問う。言われてみれば、これらは同じような意味で使われていることが多く、特に意識して区別していなかった。「片づけ上手になりたい!」というその前に、言葉の意味から確認しておこう。
■「整理」とは、好きな物を「選んで残す」こと。物を手放す方法は、リサイクルショップに持っていく、フリマアプリを活用する、寄贈するなど。
■「収納」とは、使いやすく物を収めること。使う物と使う場所がマッチするよう、行動動線や家事動線上に収納する。物を置く高さも考慮する。中(膝の上~目線の高さ)は使用頻度が高い物。下(しゃがんで取り出さないといけない低い場所)は重い物。上(椅子や脚立に乗らないと取り出せない高い場所)は軽い物。
■「片づけ」とは、出した物を元の場所に戻すこと。毎日のルーティンワーク。
本書のサブタイトルに「整理収納術」とあるが、3つの言葉の意味の違いを知り、なぜ「片づけ」ではないのかがわかった。
本書の1つ目のパート「レッスン1 『整理』『収納』ができるメンタルになる!」は、「本気で家をきれいにするための3ヵ条」など「整理収納」の心得を説く。
2つ目のパート「レッスン2 絶対にリバウンドしない、さよさんの整理収納術」は、著者に寄せられた「お悩み」の「解決法」を提示する。続いて、その悩みを持つ人の自宅を訪問し、Before→Afterで変身させていく。対象となるのは、靴箱、キッチン、リビング・ダイニング、クローゼット。「NGポイント」「仕分けポイント」「収納ポイント」「おすすめグッズ」などを紹介している。
巻末には「物とのお別れ&手放し方事典」(アイテム別五十音順)もある。「これどうしたらいいの?」と相談を受けることの多い物について「譲る」「売る」「別の使い方をする」「捨てる」を解説する。
本書のページ数は128と少なめだが、実際は厚手の紙に写真と文字が大量に詰まっていて、かなりの情報量がある。そのため、具体的な整理収納術になかなかたどり着けないが、ここでは著者が「物の整理の中で、一番難しい」と確信している「衣類の整理」にふれておこう。
難しい理由は「また流行るかも」「まだ着られるかも」という未来の心配と、「○○の時着た服」という過去の思い出があり、「未来と過去に心奪われ、なかなか決断ができない」から。以下の服を基準に、持つ・持たないの判断をするのがいいという。
・痩せたら着る服(太った時に着る服)(未来)
・また流行るかもしれない服(未来)
・3年以上着ていない服(過去と未来) ※セレモニー、マタニティー用は除く
・値段が高かったため、着ていないが手放せない服(過去)
・思い入れ、思い出のある服(過去)
家の中を見渡して「なんでこんな物買ったんだろう?」と自分でも疑問に思うことはよくある。本書を読んで「さて、ちょっとやってみようか」と腰を上げる前に、必ず決めておくことが2つある。それは、「○時までにここを終わらせる」という「時間」と「範囲」。本気で家を整えたレッスン生は平均3kg痩せたというほど、整理収納作業はかなりの重労働。「人生の棚卸し」は、ほどよく根気よく続けるのがよさそうだ。
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