本書『頭を「からっぽ」にするレッスン』(辰巳出版)は、2011年に『からっぽ! 10分間瞑想が忙しいココロを楽にする』(同)として刊行されたものを再編集、改題したものだ。日本での発売は9月19日。9年前の本がなぜ? と思われるかもしれないが、ある世界的有名人が本書の原著を取り上げ、世界各国でベストセラーになったからだ。入手した新版をもとに紹介しよう。
その有名人とは、マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏だ。彼は2018年のベスト本に挙げ、こう推薦している。
「25歳のころの私なら鼻で笑っていただろうが、今の私は妻のメリンダともども瞑想にすっかりはまっている。大学時代に仏僧を志したプディコム自身のエピソードから始まる本書は、瞑想のしかたを時に楽しく愉快に解説してくれる。マインドフルネスを試してみたい人にはパーフェクトな入門書だ」
さらに今年(2020年)には、お勧めの本として、こう書いている。
「瞑想にずっと懐疑的だった私だが、今ではできるだけ時間を見つけて――許すかぎり週3回は――瞑想している。私を宗旨替えさせたのは、この本と著者であるアンディが作った<ヘッドスペース>のアプリだ。元仏僧のアンディは、つかみどころのない瞑想の概念についても、多くのわかりやすいたとえやイメージを使って説明してくれる。日々、ストレスを解消し心を集中させるしばしの時間が誰にとっても必要なこの時代に、はじめての1歩としてうってつけの1冊だ」
合理主義者として知られるゲイツ氏が、ここまで入れ込んでいるのだからと信用する人が多いのだろう。実際、本書の構成は以下のように、きわめて実践的であり、「瞑想」という言葉が連想させる宗教っぽさはほとんど感じられない。
第1章 まずは「からっぽ」を知るために 第2章 10分間瞑想をはじめる前に 第3章 10分間瞑想をはじめてみましょう 第4章 「10分間瞑想」を日常にするためのヒント 第5章 マインドフルネスの極意 第6章 日々をマインドフルに過ごすために 第7章 マインドフルネスのキーワード 第8章 マインドフルネスで人生を好転させた体験談
著者のアンディ・プディコム氏は、イギリス保険医療委員会公認の臨床瞑想コンサルタント。元仏僧。大学在学時に僧を志しアジアに旅立つ。世界各地の寺院や僧院で修業を積んだのち、チベットの僧院で正式な仏僧となるが、2004年にイギリスに帰国。その後、瞑想普及のための団体〈ヘッドスペース〉を創設。「瞑想を誰にとっても身近なものにし、なるべく多くの人に瞑想にしたしんでもらいたい」との理念をもち活動に励んでいる。
基本となる「マインドフルネス」の概念について、こう説明する。
「マインドフルネスは、ただ目を閉じて座るという形を越えた、瞑想のテクニックの中心となる要素です。マインドフルネスとは、気をそらさずに『今、ここ』に存在することを意味します。心を落ち着け、一切のこだわりも予断も捨てて自然な意識を保つということです」
そして瞑想は、ただマインドフルネスを実践するために最適なコンディションをつくりだすテクニックにすぎません、と書いている。本書が勧めるのは10分間瞑想だ。
始める前の注意、導入時に意識すること、より深く瞑想するための呼吸法などを詳しく解説している。
「できれば朝一番の習慣にする」「10分で終わらせる」など長続きさせるためのポイントも書いている。
マインドフルネスは、瞑想だけによってもたらされるものではないようだ。食事をしながら、歩きながら、運動しながら、走りながら、寝ながら、眠りながら、とさまざまな状況での取り組みを解説している。
「からっぽ」という概念を禅で言うところの「無の境地」と理解すれば、さらに著者の元仏僧という体験を踏まえれば、マインドフルネスとは禅を西洋式に言語化、科学化したものと評者は理解した。
本書ではイギリスの国立医療技術評価機構により瞑想がさまざまなストレス治療に使われていることやカリフォルニア大学ロサンゼルス校、マサチューセッツ大学医学部など多くの大学が瞑想の医学的効果を検証していることを紹介している。
新型コロナウイルスの感染拡大によって、先行きが見えない今、気分や感情をコントロールすることが大事だろう。本書はその手助けになる1冊かもしれない。
BOOKウォッチでは関連で、『眠れないあなたを救う「睡眠ファースト」』(主婦の友社)、ヨーガについて書かれた『善く死ぬための身体論』(集英社新書)、『ゾーンの入り方』(集英社新書)などを紹介済みだ。
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