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支援ではなく、「まぜこぜの社会」を目指したい/東ちづるさんインタビュー(1)

わたしたちを忘れないで ドイツ平和村より

 障害のある方や、マイノリティーといわれる方などと一緒に、生きづらさについて共有し、考えていこうと活動を続ける人がいる。俳優・タレントの東ちづるさんだ。

 記者は、15年前にも東さんに話を聞いたことがある。今でも、あのころと変わらぬ笑顔と情熱で、彼女は社会を変えていこうと東奔西走を続けていた。

東ちづるさん(撮影:BOOKウォッチ編集部)

 BOOKウォッチでは、2回にわたって東ちづるさん(以下、東さん)のインタビユーをお届けする。
 障害のある方について、そして、生きづらさを感じている方へのメッセージ、同性婚、ドイツ平和村での活動(著書あり)など、多岐にわたる彼女の取り組みや、そこにかける想いを聞いた。

「大丈夫ですか?」じゃないのよ~

―― 本日は、よろしくお願いします。

 東さんに会ったら聞きたいと思っていたのですが、新型コロナウィルスの影響で、人と人とのかかわりが希薄化しているような気がします。困っている方がいても、「大丈夫ですか?」と、気軽に声がかけにくい気がしています。

 こちらこそよろしくおねがいします。
 親切な心は素晴らしいけれど、声のかけ方が違います。「大丈夫ですか?」じゃないのよ~。
  困っている方って、「大丈夫ですか?」と聞かれると、全然大丈夫じゃなくても「大丈夫です」と応えてしまいがちです。だから、具体的に話しかけたほうがいいです。
 「何かできることはありますか?」とか「お荷物お持ちしましょうか?」という声のかけ方がいいかもしれません。
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東ちづるさん(撮影:BOOKウォッチ編集部)

 ―― ついつい「大丈夫ですか?」って言ってしまいそうです。

 私もついつい「大丈夫?」って言ってしまうときもありますが、そういうときは「大丈夫じゃないよね~」とフォローします。
  「大丈夫じゃないです」って、耳慣れないですよね。いろんな意味で言いにくいのです。

―― わかりやすい例ですね。
  さまざまな方の気持ちや不自由さを共感してきたからこそ言える具体的なアドバイスだと思います。
  ところで、東さんが障害のある方の啓発活動を行っていこうと思ったきっかけは何でしょうか?

 かつて、情報番組で白血病の少年のドキュメンタリーを見たんです。その時に、取材を通して、番組は視聴者に何を伝えたかったのか、改めて考えることがありました。見た人の涙を誘う番組構成になっていた気がしてならなかったのです。
 一方で、取材に応じてくれた少年が伝えたかったメッセージは、ちゃんと伝わっていたのか、彼とご家族は出演したことを後悔してはいないか、ということも気になりました。
 当時、私も生きづらさを感じていたのかもしれませんね。
 そんな問題意識を抱き、泣かせるよりメッセージを伝えていきたいと思ったのが、活動のきっかけでした。

―― 東さんは有名人だから、やりづらさもあったのではないでしょうか。

 私が発言すると売名行為だとか出馬したいのかと批判する人もいました。しかし、私が発言することで、困っている方の思いを伝えることができると気付いてからは、たくさんの人とつながりながら前向きに取り組んでいます。

―― いろいろな素晴らしい企画や組織があっても、その存在自体がわからなければ、理解者も増えないですよね。

 そうなのです。そもそも、活動自体を知ってもらうことができなければ意味がないですよね。
 私も、当初は、自分が目立たないようにしていましたが、各方面の福祉的な活動をしている団体の皆さんから、ぜひ、前に立ってほしいといわれました。
 私にできることで、期待されることは、注目を集めるという役割だったのです。すごく悩みましたが、適材適所、私は私を活用しようと決心しました。
東ちづるさん(撮影:BOOKウォッチ編集部)

支援じゃなくて、まぜこぜ

―― 東さんは、一般社団法人Get in touch(ゲット・イン・タッチ 以下、Get in touch)の代表をされています。どんな活動をされているのでしょうか。

 Get in touchは、「どんな状況でも、どんな状態でも、誰も排除しない、されない"まぜこぜの社会"を目指す」という思いを掲げた団体です。
 障害、病気、国籍など、"ちがう"ということがハンディになる現実があります。そのことが顕著に明らかになったのが、東日本大震災でした。
 避難所では、身体が不自由な人や発達障がいの人、ご高齢の方などが、「別の避難所に行かれたほうが良いのでは?」と、やんわりと排除される現実がありました。
 社会が不安に陥った時、普段から生きづらさを抱えている人がより追い詰められてしまう。縦割りで動きがちの支援団体や企業、省庁などを、横でつなげていくような団体を作ろうと思ったのがきっかけです。
 「つなげていく」という意味から「Get in touch」です。

―― Get in touchは、どんな支援をされているのですか?

 そもそも、Get in touchは支援団体ではありません。もちろん、災害時や非常時など、瞬発的な支援が必要なときは、そういう活動もしますが、支援ではなく、マイノリティーのみなさんと一緒に、悩みや困ったことを見える化、体験化して、全ての人が暮らしやすい「まぜこぜの社会」をめざすという団体です。
 また、支援というと、する側とされる側というボーダーが生まれてしまうので、その点もケアが必要ですね。

―― ほかにも、エンタメ力を生かした取り組みもありますよね。

 シンポジュウムなどで啓発していくことも大事ですが、Get in touchはアートや音楽、映像、舞台などエンタメの力を活用して、講演やシンポジュウム、選挙に行かない無関心な層にもメッセージを発信していきたいと思っています。
 Get in touchが創造するエンターテインメントのワクワク、ドキドキのコンテンツに触れることで、既に自分は多様な社会で生きていることに気付いて欲しいのです。

―― なるほど。Get in touchは、障害のある方など、さまざまなメンバーで舞台などもされていますし、とても興味深い取り組みです。この続きは、第2回で詳しくお聞きします。なお、戦争で傷ついた子どもたちとの触れ合いについて書かれた著書『わたしたちを忘れないで―ドイツ平和村より』(ブックマン社)についても次回、お聞きします。

(第2回「「助けて」と、公助と共助を求めてください」に続く)

BOOKウォッチ編集部 編集長 木村寛明)




プロフィール
東ちづる(あずま ちづる)
1960年6月5日 生まれ。広島県出身。一般社団法人Get in touch代表。俳優、タレントとしてドラマや情報番組、講演、執筆など幅広く活躍。『わたしたちを忘れないで―ドイツ平和村より』(ブックマン社)など著書多数。動画配信として「スナック★げっと」や「生きづらさだヨ!全員集合!」、「まみちいの爆笑人生クッキング!!」なども精力的に活動している。


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写真は、東さんの著書『わたしたちを忘れないで―ドイツ平和村より』(ブックマン社)



東ちづるさんの配信動画

スナック★げっと
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さまざまなゲストを招き、テレビでは話しにくい裏バナシや本音を、酔いどれトーク


生きづらさだヨ!全員集合
生きづらさを感じているさまざま方が「私のまぜこぜ・生きづらさ」をトーク。

まみちいの爆笑人生クッキング!!
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熊谷真美さんと東ちづるさんによる、クッキングとトークのバラエティ番組

  • 書名 わたしたちを忘れないで ドイツ平和村より
  • 監修・編集・著者名東 ちづる 著
  • 出版社名ブックマン社
  • 出版年月日2007年7月 1日
  • 定価本体1,300円+税
  • 判型・ページ数四六判・235ページ
  • ISBN9784893084095

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