お食事、おしたく、お片づけ、遊び方、ほめ方、叱り方......。子どもが自分から動いてくれたらどんなにラクか! 毎日忙しくて育児本をじっくり読めない! そんなママパパのためにまとめられ、発売後すぐに重版された注目の一冊がある。
本書『子どもに伝わるスゴ技大全――カリスマ保育士てぃ先生の 子育てで困ったら、これやってみ!』(ダイヤモンド社)は、「『うまくいった』とSNSで大反響!」の子育てがラクになる135の言葉を収録したもの。著者のてぃ先生は、今年で12年目となる現役の男性保育士。
「保育のちょっとしたコツや、僕が保育士として子どもと関わるなかで試して効果が高かったことをつぶやいた、ツイートなどをもとにまとめた、子育ての困りごと解決法大全です」
帯に「もう『はやくして』と言わなくてOK!」とある。「はやくして」と言わない日はないママパパが多数派と思われるが、いったいどんな「スゴ技」を使うのか?
てぃ先生(読み方は「T」先生)は関東の保育園に勤務するかたわら、その専門性を活かし、子育ての楽しさや子どもへの向き合い方などをメディアなどで発信している。全国での講演は年間50回以上。他園で保育内容のアドバイスを行う「顧問保育士」など、保育士の活躍分野を広げる取り組みにも積極的に参加している。
「ちょっと笑えて、かわいらしい子どもの日常」をつぶやくTwitterのフォロワー数は50万人超。著書『ほぉ...、ここがちきゅうのほいくえんか。』(ベストセラーズ)は15万部超のヒットとなり、コミックなどを含む著書の累計は50万部を突破。最近YouTubeへの投稿を始め、チャンネル登録者数は26万人を超えている(2020年12月2日時点)。「カリスマ○○」はよく見かけるが、保育士の世界にもカリスマがいるとは知らなかった。
てぃ先生がTwitterを始めたのは8年前。当時は「育児」「親」「子ども」という話題が注目されるときは、必ずと言っていいほど「虐待」「保育園が足りない」「お金がかかる」などのネガティブなことばかりだったという。「このままだとみんな子どもが嫌いになっちゃうんじゃないかな、子育てしたくなくなっちゃうんじゃないかな......」と心配したてぃ先生。「子育てのいいところを伝えたい」と、保育中の子どもたちのかわいくて楽しい日々のエピソードをつぶやくようになった。
ある日、「こういうときはこうするといいよ!」と保育士なら当然知っているようなことをつぶやいたところ、親御さんから大きな反響が。「ああ、僕たち保育士が当たり前にしていることでも、一般のママパパは知らないことがあるんだな」と気づき、そこから子育てのハウツーもつぶやくように。Twitterフォロワー数、YouTubeチャンネル登録者数の増加とともに、子育てで困っている人の多さを実感しているという。
本書は、子育てがラクになる135の言葉が以下の10章に分類されている。Twitterを並べるだけではない、ていねいな補足説明。ジャンル別に検索しやすい目次。豊富なイラスト。ポイントとなる部分の太字表記......など、忙しいママパパも要点をサクサクつかめるつくりになっている。
第1章 おしたくで困ったら、これやってみ!
第2章 お片づけで困ったら、これやってみ!
第3章 お食事で困ったら、これやってみ!
第4章 起こす・寝かすで困ったら、これやってみ!
第5章 しつけで困ったら、これやってみ!
第6章 遊び・お友だちで困ったら、これやってみ!
第7章 伝え方で困ったら、これやってみ!
第8章 叱り方・ほめ方で困ったら、これやってみ!
第9章 子どもの心と体
第10章 ママとパパに伝えたいこと
コラム from YouTube
本書で紹介されているコツやハウツーの共通点は「子どもが自分から動いてくれるようにする」こと。ちょっとめんどうでも、たとえば子どもが「おもしろい!」と思える工夫をすることで、かえって手間がかからずに子どもは動いてくれるのだという。
「子育てってたしかにたいへんなことが多いです。だから、困ったときにやってみることの引き出しが多ければ多いほどいいんです。(中略)『てぃ先生の引き出し』を開けて、そこからどんどん真似してくださったら、僕としてはとってもうれしいです」
本書は基本的に、保育園に通う年齢の子ども向けと言える。ただ、あえて「何歳児向け」と表記せず、「『自分の子どもに効果がありそう!』と思ったものは、どんどん試してみてください!」と、広くすすめている。何歳になっても、子どもの根っこにある本質は共通しているということかもしれない。
子育て奮闘中のママパパの困りごとは、この一冊である程度解決できるのでは? と思うほど、本書はありとあらゆる困った! をカバーしている。ここではまず、もう「はやくして!」と言わなくて済む方法として、いかにも子どもが喜びそうな「はやく外に出て! 玄関で交通カードをピッ!」を紹介しよう。
電車好きな男の子(3歳)のママから、子どもが「朝なかなか玄関から出ない」と相談されたときのこと。「駅の改札の交通カードをタッチする部分を紙に描いて玄関に貼って、カードも一緒に作ったらどうですか?」とアドバイス。カードには「おうちはつ ○○いき」の文字や電車のイラストなどをかく。相談者のママは苦笑していたが、翌朝「先生! 笑うほどすぐ出てくれました!」との報告が。子どもの「遊び心」をくすぐると効果絶大のようだ。
次に、「○○しなさい! 子どもが自主的に取り組む『手伝うね』の言葉」から。子どもに何かしてほしいときは「○○しなさい!」よりも「手伝うね」と言ったほうが自発的に取り組みやすくなる。たとえば「お片づけしなさい」より「お片づけ"手伝うね"」。これで自然と「主役はあなた」と暗に伝えることができ、「命令されたこと」ではなく「自分の役割」という認識に変化するという。我が身を振り返ると、子どもに対してつい命令口調になってしまうこともしばしば......。カッとなってガッと言う前に、「手伝うね」のフレーズを思い出したい。
これに関連して、「きつく叱りすぎる 自分の『心の天気』が晴れになるときを待ってみる」から。自分の「心の天気」を意識すると、子どもと接するときに役立つという。
「心の天気は晴れているほうがうまく伝わりやすくて、雨やくもりのときは過ぎ去るのを待つのが得策。叱るときだからこそ、晴れのときを選ぼう。人間の怒りは『最大6秒』。6秒間待ってみると、雨は曇りに、曇りは晴れになる」
読んでいるうちに、自分には余裕がない、心は雨天と曇天つづき、自分の子育ては大丈夫なのかと、不安に感じる親御さんもいるかもしれない。最後に、てぃ先生が「皆さんにどうしてもお伝えしたいこと」を引用しよう。たとえば今日、子どもに対して感情的に叱ってしまった場合。「今日は20点だったな」「また感情的に叱っちゃった。本当にダメな親だな」と考えてしまうかもしれないが......。
「親御さんはいろんなことがありますから、その日にできる限りの精一杯、というものがあります。(中略)20点なんじゃなくて、その日一生懸命やったんだから、それはその日の100点なんですよ」
子育ての困りごとの解決法と一緒に、ママパパの心にじんわり染み入るメッセージがあちこちにある。もしいま、もっと子育てがんばらなきゃ! と気負っていたとしても、本書を読み終えるころ、いい具合に肩の力が抜けているのを感じるだろう。
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