読むべき本、見逃していない?

介護離職する前にひとまず思い止まろう!

介護離職はしなくてもよい

 本書『介護離職はしなくてもよい』(花伝社)を、いささか複雑な思いで読んだ。なぜなら、評者はある意味で介護離職したからだ。離職したからこそ介護で出来たこともある。一方、経済的な損失は大きかった。50代、60代の人にとって切実な親の介護をどうするかという問題に本書はさまざまな示唆を与えてくれるだろう。

親の介護の話ばかり

 本書の説明に入る前に、いささか評者の個人的な感慨にお付き合いいただきたい。友人らが集まると、メインの話題はまず親の介護の話になる。親の介護をしている者は、その大変さをくどく。「田舎から認知症の母親を引き取ったら、翌日家内が家を出て行った」(彼が食事作りをするため、役員にもかかわらず定時退社せざるを得ない)、「うちは田舎の母親を千葉の施設に入れたけど、わがままがひどくて、しょっちゅう呼び出される。家内はノイローゼになりそうだ」(コロナ対応を口実に面会回数を減らした)。すでに両親を看取った者はすまし顔で拝聴する。

 親が田舎を離れ上京を嫌がることも多い。誰もが知る大企業子会社の社長を辞め、北関東に住む姉と分担し、月半分は東北に住む母親と一緒に暮らす友もいる。頑として施設への入居を拒否するため、軽自動車を買い、買い物から料理、雑用いっさいの面倒をみている。入浴の世話もしているというから頭が下がる。

 ざっくり言って、介護離職をしたのは60代はじめの評者の周辺で1割ほどだろう。残りの人はなんとか仕事と両立させながら、介護をしていた、もしくは介護を続けている。

介護の制度から注意点まで網羅

 本書は、突然親の介護が必要になった現役世代を想定して書かれているため、制度から介護における具体的な注意点まで、知識ゼロから学ぶことができる。親の介護にあたった人の事例も収録しているので、介護の発生から介護休暇の取得、その後の対応を知ることが出来る。

 著者の濱田孝一さんは1967年生まれ。経営コンサルタント。立命館大学卒。旧第一勧業銀行に勤務。その後は介護職員、社会福祉法人マネジャーを経て、2002年にコンサルティング会社を設立。現在は「高住経ネット」の主幹として、高齢者住宅、介護ビジネス、介護人材育成などのコンサルティング、講演、執筆を行っている。

介護に必要な4つの余裕

 子供が親の介護を行うためには、4つの余裕が必要だという。「気持ちの余裕」「時間の余裕」「体力の余裕」「金銭の余裕」だ。この中で一番大切なのは、「気持ちの余裕」だと書いている。

 本書は以下の構成。

 序章 介護離職が激増する社会――後後期高齢社会の衝撃
 第1章 突然の介護に慌てない――介護休業制度の活用
 第2章 介護休業制度を上手く活用しよう――介護休業取得事例
 第3章 在宅生活を続ける場合の家族の役割・注意点
 第4章 老人ホーム・高齢者住宅を選択する時の注意点
 第5章 「介護と仕事の両立」「介護と経済の両輪」の時代に向けて

介護休業制度は家族が介護するための休業ではない

 第1章の「介護休業制度は家族が介護するための休業ではない」というタイトルに、まず驚くだろう。なぜなら、親の介護は突然発生するため事前準備が出来ないからだ。また、介護期間も想定出来ない。

 介護休業は、対象家族1人に対して93日間休むことが出来る(介護休暇は1年に5日)。分割も可能だ。長期休暇になるので、事前に上司や労務と相談して、原則2週間前までに、申請しなければならない。

 3カ月で介護が終わるとは到底思えない。だから、介護休業の取得者がいた事業所の割合はわずか20.2%にすぎない(令和元年、雇用均等基本調査)。

 したがって、介護休業は「気持ちの余裕」を確保するための休業だと、濱田さんは説く。また、介護休業は「介護が必要になってから検討」では遅い、とも。

 大事に至らない前に、介護プランを検討するための時間に介護休業を充てるべきだと書いている。自宅で生活出来るのか、「高齢者住宅・老人ホームが良いか」の判断、また施設に入る場合の施設選びの時間に充てたい。

「突然の親の介護」の心構えを

 「突然の親の介護」に向けての心構え・想定のポイントを挙げている。

 1 異変を早期に察知・発見する
 2 帰省時にはモニタリングを行う
 3 自分の介護休業についてシミュレーションを行う

 評者は母親の介護が必要になる前に離職し実家に帰り、母と二人暮らしを始めた。時間的な余裕がその後の介護プランの作成に役立ったかもしれないと思っている。いざ介護が必要となったら、つるべ落としのように母は衰え、最期を迎えた。

 BOOKウォッチで紹介した本では、『ミッシングワーカーの衝撃』(NHK出版新書)が、介護離職の危険性に警鐘を鳴らしている。親が80代、子どもが50代。介護が大変になって、子どもが仕事を辞める。生活費は親の年金に頼ることになる。親が亡くなると、生活費もなくなる。しばらく働いていないので、勤めようにも仕事がない。介護問題が絡んで、正社員→非正規→ミッシングワーカーというコースをたどっている人が少なくない、と指摘している。

 仕事と介護を両立させるヒントに満ちた本として、『認知症介護と仕事の両立ハンドブック』(経団連出版)がお勧めだ。「仕事と介護の両立」「別居介護」「遠距離介護(中距離介護)」のノウハウが書かれている。このほか、『マンガ 介護する人・される人のきもちがわかる本』(朝日新聞出版)、『子育てとばして介護かよ』(株式会社KADOKAWA)などを紹介済みだ。

  • 書名 介護離職はしなくてもよい
  • サブタイトル「突然の親の介護」にあわてないための考え方・知識・実践
  • 監修・編集・著者名濱田孝一 著
  • 出版社名花伝社
  • 出版年月日2020年10月30日
  • 定価本体1500円+税
  • 判型・ページ数四六判・211ページ
  • ISBN9784763409447

オンライン書店で詳しく見る(購入もできます)

デイリーBOOKウォッチの一覧

一覧をみる

アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!

おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

出版社の皆様!

御社の書籍も、
BOOKウォッチに
掲載してみませんか?