コロナ禍でもう半年以上テレワークをしている人もいるだろう。心身の不調や将来への不安を感じることはないだろうか? 本書『テレワーク時代の「心のケア」マネジメント』(方丈社)は、テレワーカーが抱える重大リスクへの対処法を解説した本だ。
新型コロナウイルスの感染予防対策として、テレワークを導入する企業が倍増した。しかし、十分な準備がされていなかったため、そのひずみが「テレハラ(テレワークハラスメント)」や「テレワークうつ」という形で表面化しているという。
著者の和田隆さんは、メンタルヘルス対策、ハラスメント防止を支援するメンタルプラス株式会社代表取締役。企業や官公庁などで2500回以上の講演実績があり、東京消防庁消防学校講師などを務める。著書に『最新パワハラ対策完全ガイド』『パワハラをなくす教科書』『仕事のストレスをなくす睡眠の教科書』(いずれも方丈社)などがある。
本書は、「第一部 テレワークの働き方を考える」「第二部 テレワークが抱える重大リスク」「第三部 心のケアの仕組みを再構築する」の三部構成。
以下に挙げる本書のポイントが気になる人には参考になるだろう。
〇テレワークを導入している企業の労働生産性は、導入していない企業よりも1.6倍高い。 〇テレワークでは人が育ちにくい。 〇テレワークはモチベーションの維持が困難。 〇出社しないと太陽光を浴びないため、うつ状態になりやすい。 〇テレワークうつにならないためには、孤立しないこと。 〇テレワークという働き方に適応できない人が必ず出てくる。 〇テレワーク中は発言型セクハラ、発言型パワハラのリスクが高い。 〇テレワークを希望する日が多くなるのはメンタル不調の兆候。
どうだろう? 予想に反してネガティブな指摘が多いことに驚くだろう。コロナ対応で急速に導入されたテレワークは、新種のハラスメントを生み、社員の健康リスクを拡大させるというのだ。
「テレワークを導入している会社や上司がすべきことは、オンラインとオフラインのバランスを調整しながら、自律的に仕事ができるように刺激を与えるなど、テレワークをサポートすることです」 「テレワーカーのテンションが落ちていると感じたら、あえて出社してみることをすすめてみる。あるいは誰か人に面会することを提案してみる」
テレワークが健康に与える影響はいくつかある。まず、通勤がないので運動不足になる。外出しないと太陽光を浴びないため、脳内の神経伝達物質の一つであるセロトニンの分泌が低下し、うつ状態になりやすくなる。また、生活習慣の乱れは、精神を不安定にしやすい。
和田さんが担当する相談室にも、不眠や不安、うつ症状を訴える相談者が増えたという。「テレワークうつ」にならないためには、孤立しないこと、会社が「心のケア」に注意を払うことが大切だと指摘する。
企業は、テレワークは通勤の必要がなく自由度も高いので、多くの従業員が受け入れるものととらえているかもしれないが、「従業員全員がテレワークに対応できるわけではないと認識しておくべきでしょう」と書いている。
テレワークだからこそ見抜けるメンタル不調の特徴を挙げている。
・テレワークを希望する日が多くなった ・最近、夜遅い時間に会社のPCがONになっている ・業務進捗表をメンバーと共有しなくなった ・社内のSNSコミュニケーションに参加しなくなった ・メールの文章にまとまりがなくなった ・ウェブ会議システムの操作ミスが多くなった ・ウェブ会議でビデオ画面をOFFにするようになった ・背景画面を設定するようになった ・画面を見ないでうつむいている ・部屋が散らかっている ・服装、髪型、姿勢が乱れてきた
メンタルヘルスケアの対策として、和田さんは7分間の「ラインケア1on1」を提案している。「面談」という言葉を使わず、2週間に1回程度、部下の様子を把握することだ。仕事の成果以外の話に限定して、基本的にアドバイスはしない。「勤怠」「人間関係」「感情」「生活面」に関することを共有するのが目的だ。
コロナ禍のテレワークでは、「テレハラ」という新語も登場したという。テレワーク中に私的なことに対する不適切な発言、「君の家は通信環境がよくないので効率が悪い」といった否定的な言動、過度な監視、報告や連絡の強要など、テレワーカーの就業環境や生活環境を害する言動だ。
これらはセクハラやパワハラとして顕在化すると指摘している。テレワークでは身体接触型のセクハラは不可能だ。ウェブ会議中に「後ろに下着のようなものが映っているけど、隠したほうがいいよ」「会社に出勤するときとはメイクが違うね」「いま彼氏は来ていないよね」など不用意な発言もセクハラになると警告している。
テレワークだから起きやすい発言型パワハラにも注意が必要だ。上司は部下を対等なパートナーと認めて尊重する、「ワンダウン」が防止につながるという。
2020年6月1日に施行された「パワハラ防止法(正式名称「改正労働施策総合推進法」)」により、企業のパワハラ防止措置が義務化された。しかし、和田さんは厚労省が定めた10項目の指針は、テレワークに対応していないと指摘する。
「過大な要求、過小な要求、個の侵害」の3つが、テレワーク時代に増えるパワハラだと予測、企業が独自のガイドラインを追加するよう提案している。
BOOKウォッチでは、関連で『テレワーク導入の法的アプローチ』(経団連出版)、『超基本 テレワークマナーの教科書』(あさ出版)、『おうち仕事術 テレワークを最適化する50のテクニック』(翔泳社)などを紹介済みだ。
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