去年(2019年)、『50歳から始める英語』(幻冬舎新書)を出した作家の清涼院流水さんが、続編にあたる本書『三日坊主でも英語は伸びる』(同)を書いた。「大人のやり直し英語学習」には、飽きっぽさ、三日坊主こそ力になるという「目から鱗」の学習法を紹介している。
京都大学卒の清涼院さんだが、大学入試は英語を受けなくてもいい論文試験で入ったため、英語は中学生レベルだったという。小説執筆の気分転換に英語学習を始めた。TOEICを受けたところ595点。3年目の2010年には満点の990点を獲得、以後5回連続して満点を取ったことから、英語勉強法に一家言もつようになった。英語指導者としてTOEIC学習サークル「社会人英語部」を手弁当で育て、500点未満だったメンバーの大半が平均900点を超えるまでにスキルアップしたという。
日本人作家の小説を英訳して世界中の電子書店で販売しており、著者、英訳者、編集者として手掛けた英語作品は100を超える。
そんな風に大人になってから英語に目覚め、翻訳するほどの力をつけた清涼院さんは、自分の飽きっぽい性格こそが、成功の秘訣だったと思うようになった。「正しい勉強法」を用いたから成功したと思っていたが、実は挫折し続けたからこそ成功できたのではと気づいたのだ。三日坊主を武器とする「三日坊主メソッド」を解説した本書の構成は以下の通り。
第1章 いつも自分の気持ちに正直に 第2章 自由で気楽な英語学習を 第3章 ストレスを避けて少しずつ英語力を高める 第4章 さらに英語力を高めたくなったら 第5章 英語力を高め続けていくためのヒント
4月になると毎年、NHKの英語番組をやったり、英語放送を聴いたりしては長続きしない評者のような人間にぴったりだと思い、読み始めると心強い言葉が並んでいる。
まず、第1章では英語学習の選択肢は無数にあるから、「これなら、できるかも」そして、「やってみたい」と思うことから始めればいい、と書いている。
前著で紹介した「険しい近道」を選ぶのも、本書の「楽しい回り道」を通るのもよし、としている。
そして、やりたいことのレパートリーをひとつずつ増やしていけばいいと。
なるほどと思ったのは、学習をコントロールするための記録術だ。清涼院さんは英語本Aに取り組み始めたら、スマホのメモ帳、あるいはリアルな手帳や日記などに、「英語本A Day 1,0.7%:9/30」などと記録する。これは英語本Aに取り組み始めた9月30日に、全体の0.7%(300ページある本の最初の2ページだけ読んだ状態)まで進んだことを意味する。
三日坊主で間隔が空いても、%の数字が進捗状況として蓄積されていくことは、目で見る学習効果となるという。学習の前進の「見える化(可視化)」だ。
三日坊主で「やりかけの学習」がいくつか同時進行しても困らない。清涼院さんは、常に100冊以上の本を少しずつ読み続けているという。10年以上実行して効果を実感し続けている方法で、英語学習に限らず、有効だそうだ。
第2章では、モチベーションを維持する方法をいくつか提案している。
・英語関連のものを部屋に飾るだけでも意味はある ・英単語と英文法は、やりたくなければ気にしない ・興味のない英語の技能は切り捨てても困らない ・気が向いた時にだけする、気楽な趣味でいい
第3章では、「最初から大きなコストをかけなくてもいい」として、NHKの英語番組の活用を勧めている。4月を逃してもスタートできるし、今はストリーミングもしているので、スマホがあればいつでも聴くことができる。
またYouTubeでも無料でかなり本格的な英語学習ができるそうだ。英単語、英文法、英会話、リスニング、リーディング、スピーキング、ライティング、TOEICなどで検索すると、無数のチャンネルがヒットする。
英語学習の進展を感じたら、レベルを測定するためTOEICテストの受験を勧めている。清涼院さんが2019年に出した『きみと行く 満天の星の彼方へ』(リチェンジ)は、TOEICを受けたことがない男女が、試行錯誤しつつ高得点者になる過程をつぶさに描いた小説だ。TOEICが英語学習の王道だという持論には変わりがないという。
BOOKウォッチでは英語や英語学習法について、清涼院さんの『50歳から始める英語』のほか、『日英語表現辞典』(ちくま学芸文庫)、『日本人が必ず間違える英単語100』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『英語教育幻想』(ちくま新書)などを紹介済みだ。
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