「produce」とか「address」という英単語はそれぞれ「生産する」「住所」の意味で、日本語でもそのまま使われるほどおなじみだ。このほかにも、日本語化した英単語は数多いが、そのほとんどは第2、第3の意味を持っており、英米では単語によっては、その第2、第3の意味で使われることが多かったりするものもある。
本書『日本人が必ず間違える英単語100』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)は、大手商社の調査部長などとして「生きた英語」に長年触れてきた著者が、30年間かけて蓄積した膨大な用例から、日本人が最も間違えやすい単語をピックアップして解説したもの。
社内公用語の英語化を試みる企業が取りざたされ、大学入試ではリスニングを重視する方向で改革が進められるなど、英語をめぐってはにわかに「生きた英語」がトレンド化している。だが、言葉の一つひとつを聴き取れても、それらが頭のなかにある辞書と対応しなければ会話は中断してしまう。日本人の性質として、分からない言葉に接するとプチパニックに陥ることがしばしば指摘されるところだ。
分からない単語のことをあれこれ考えている間に、相手は構わず話を続けるし、リスニングの試験では勝手に音声を止めるわけにはいかない。そんな事態を避けるためにも「第2の意味」を知っておいた方がいい。本書にピックアップされた100語は、その基本というところ。著者は、自らの経験から、これら100語は、メディアなどで第2の意味で使われることの方が多いという。
著者は1981年に大学卒業後、伊藤忠商事に入社。米ハーバード大ビジネススクールでMBA(経営学修士)を取得し、ニューヨーク勤務、同社会長秘書、調査情報部長などを歴任。『50歳からの知的生活術』(ちくま新書)『ニューヨーク・タイムズ物語』(中公新書)『ローズ奨学生』(文春新書)など、経験を生かした著書も多数ある。
本書は「こんな動詞にこんな意味があったとは」「この名詞にこんな動詞の意味があったとは」「この形容詞にこんな意味があったとは」「この名詞にこんな意味があったとは」―の4章仕立て。それぞれ21~30語が並び、いずれも、大学入試の参考書で「必須」とされるものばかりで、字面には親しみがあるが、それだけに、第2の意味には意外性があり興味深い。解説も丁寧だ。
第1章「こんな動詞にこんな意味があったとは」で最初にピックアップされているのは、わたしたちが「買う」という意味でよく知っている「buy」。紹介されている第2の意味は「信じる、賛成する」。買うという行為は信じて行うからということか。「I don't buy your argument(あなたの意見には賛成できない)」などのように使う。
冒頭に挙げた「produce」は「生産する」という意味でおなじみだ。ところが、著者は米国であるとき、誰かとの面談のためその人物がいるビルを訪ね、受付で「Produce your ID, please」と、予期していなかった用法で、この言葉が使われ戸惑ったことがあるという。受付の人物は、その様子に「Show your passport」と言い直したので「提示する」の意味だと分かったという。
ピックアップされている動詞はほかに「check」「carry」「train」「pitch」など。第2章の「この名詞にこんな動詞の意味があったとは」で最初に取り上げられているのは「address」。「住所」のほかに名詞として「演説」の意味があることは知られているが、動詞としては「(問題などに)対処する」という意味で使われる。
英語コミュニケーション能力テスト対策のサブテキストとして、また、2年後の東京五輪でボランティアを計画している人たちの参考書としても役に立ちそうだ。
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