本を知る。本で知る。

英語を受験せずに京大合格した推理作家の驚異の英語勉強法

50歳から始める英語

 4月からの新年度、今年こそ英語を勉強しようとラジオやテレビの英語講座のテキストを買った人も多いのでは。月を追うごとに購読者は漸減するそうだ。かく言う評者も毎年、7月号あたりで買わなくなるのが常だった。「3日坊主」ならぬ「3月坊主」というところか。

京大を21世紀になり最初に中退

 今から約10年前、推理作家の清涼院流水さんが、英語検定試験TOEIC(現TOEIC L&Rテスト)で満点の990点を取り、その英語勉強法を、あるビジネス雑誌に連載しているのを読んだことがある。「すごいなあ」と思いながらも、清涼院さんは京都大学を「21世紀になり最初に中退した人」ということを知っていたので、もともと優秀な人だから少し勉強すれば満点くらい取れるだろう、とあまり気にもとめず読み流していた。

 先月末に出た本書『50歳から始める英語』(幻冬舎新書)を読み、それはまったくの誤解だったことを知った。清涼院さんは、中学・高校時代は学年最低点を連発する英語の劣等生で、大学入試も英語は受験しなかったというのだ。文章力だけで勝負する論文受験で京大経済学部に合格したことを明かしている。

 その後も英語を勉強することはなく中学1年にも負けるレベルだったという。

TOEIC5回連続満点で英語指導者に

 気分転換に始めた英語学習。TOEICを受けたところ595点だった。正しい勉強法を身に着け、3年目の2010年には満点の990点を獲得、以後5回連続して満点を取ったことから、英語勉強法に一家言もつようになった。英語指導者としてTOEIC学習サークル「社会人英語部」を手弁当で育て、500点未満だったメンバーの大半が平均900点を超えるまでにスキルアップしたという。

 各章から、なるほどと思った見出しを少し抜粋すると、こうなる。

・英会話スクールも高い英語教材も不要
・"魔法の英語本"など存在しない
・習慣こそ最高のトレーナー
・英語力底上げの最短距離はTOEIC活用
・英語を使ってなにをしたいか、で道は変わる
・インターネットと英語で可能性は無限大に
・英語の学習法は、ほかの外国語にも適用できる

日本の小説を多数英訳するまでに

 英語を自家薬篭中にした清涼院さんは、作家の森博嗣さんらと「THE BBB(Breakthrough Bandwagon Books)」をつくり、積極的に日本の作品を英語に翻訳し、海外に発信している。

 「社会人英語部」も2017年2月の第20回勉強会を節目に解散、小説執筆と英訳に本腰を入れた清涼院さんだが、「50歳を過ぎて、これから英語学習を始める方たちのために」という編集者からの依頼を受けて本書の執筆を引き受けたそうだ。

 英語を学ぶのに遅すぎるということはなく、「たとえあなたが今現在、何歳であっても、「正しい勉強法」を知ってさえいれば、結果は自動的についてくるのです」と激励する。

 「おぼえている英単語を増やし続け、きちんと理解できていない英文法を減らし続ける」ということに尽きるという。本業では「自分が書いているのは小説ではなく大説」だとして、「大説家」と自称する清涼院さんだが、こと英語学習にかんしては堅実で真面目だ。

 この勉強法を清涼院さんは、ポルトガル語とラテン語にも適用した。近著の『ルイス・フロイス戦国記 ジャパゥン』(幻冬舎)の執筆に、ある程度マスターした二つの言語は役立ったそうだ。

 アドラー心理学者の岸見一郎さんも4月1日付で紹介した『本をどう読むか』(ポプラ社)で「外国語の勉強は生き方も変える」と説いていた。

 人生100年時代、英語に限らず、外国語をマスターし有意義な人生を送りたいものだ。評者も「3日坊主で挫折しないための工夫」の項を読み、今年こそ外国語の勉強を長続きさせようと誓った。

 英語や英語勉強法について本欄では『日英語表現辞典』(ちくま学芸文庫)、『日本人が必ず間違える英単語100』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)、『英語教育幻想』(ちくま新書)を紹介済みだ。  

  • 書名 50歳から始める英語
  • サブタイトル楽しいから結果が出る「正しい勉強法」74のリスト
  • 監修・編集・著者名清涼院流水 著
  • 出版社名幻冬舎
  • 出版年月日2019年3月30日
  • 定価本体780円+税
  • 判型・ページ数新書判・202ページ
  • ISBN9784344985452
 

デイリーBOOKウォッチの一覧

一覧をみる

書籍アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

漫画アクセスランキング

DAILY
WEEKLY
もっと見る

当サイトご覧の皆様!
おすすめの本を教えてください。
本のリクエスト承ります!

広告掲載をお考えの皆様!
BOOKウォッチで
「ホン」「モノ」「コト」の
PRしてみませんか?