10月も近づき、もう次の年の手帳の話かと思い、手にしたのが本書『ジブン手帳公式ガイドブック2021』(実務教育出版)。最近、名前を聞くことが多いと思ったら、手帳総選挙で1位になったり、文具屋さん大賞手帳賞を受賞したり、評価が高まっていた。出版から10周年を記念した特別版として発行された。
「ジブン手帳」は、大手広告代理店に勤務する佐久間英彰さんが、自分で作った手帳をもとに、「ジブン手帳2012」として自費出版したのが始まりだ。Amazonと少数の書店、文具店で発売、全部売り切るが大赤字になった。雑誌で取り上げられ、手帳ランキングの26位に入った。名だたるメーカーのなかに個人名で載ったのが感無量だったという。
2年目からはコクヨから発売された。本体価格3800円と高額だったが、ユーザーがついた。4年目には同好会が発足、グッドデザイン賞を受賞、単著の手帳本も出版した。日本経済新聞の「何でもランキング」で1位になった。
6年目から関連グッズやガイドブックも発行。10周年を記念して、ついに1日1ページ手帳を出すことにした。佐久間さんが結婚を機に、ウィークリーのスペースだけでは書ききれなくなったからだ。
でも1日1ページ手帳は自由過ぎて、どこに何を書いていいのか定まりにくく、後で探しにくい。そこで思いついたのが、T型のセンタータイムラインだ。情報の置き場所をあえて分けることで、書きやすく見やすいデザインにしたという。
左右に分かれたスペースをどう使うかは、ライフスタイルに応じて、アイデア次第でさまざまだ。たとえば、ToDo管理と予定管理、予定とひと言、予定と写真日記などを左右で使い分けることを提案している。
女優の黒沢リコさん、You TuberのNOGAさん、和気文具の今田里美さんの3人が、1日1ページ手帳を使った実例を紹介している。黒沢さんは右を予定に、左を趣味の料理の写真の記録に使っている。
従来の月、週単位の「ジブン手帳」を職業ごとにどう使っているかの実例が多く登場する。システムエンジニア・一般事務職、営業・サービス・専門職、学生・主婦・クリエイティブ職ごとに4人が自分の手帳を公開している。
マーカーやシール、手描きのイラストなどでビジュアルに記録されている。共通しているのは、予定を書き込むだけではなく、実際に何をしたか、何を食べたかなど行動が書かれていることだ。ライフログとして後から見返すことで、自分をより客観的に把握し、次につなげることができる。
ある主婦はこう書いている。
「子どもが産まれて24時間体制の生活になったのをきっかけに、ジブン手帳を始めました。ログを記録して振り返ることで、1日をよりスムーズに過ごすためのヒントが見つかります。子どもの生活リズムが把握しやすく、ジブンのための時間も取れるようになりました」
このほかに、手帳の使用アイデアで人気のインスタグラマー3人が登場している。「好みのフォントを駆使してシンプルで見やすい手帳に」(ねこねこさん)、「ToDoが管理しやすい付箋活用使用法」(大内美優さん)、「手作りシールを使った簡単で続けやすい手帳術」(兎村彩野さん)などが参考になるだろう。
もともと「ジブン手帳」は、過去、現在、未来をマネジメントできる3分冊スタイルとして企画された。いろいろなフォーマットやサイズ、タイプがあり、関連グッズも多い。
手帳はいまやすごいことになっているのだなあ、という感想を持った。
これまでも手帳は何度かブームがあった。バイブルサイズのものが流行ったり、ある有名人が企画したものが売れたり。「ジブン手帳」は、一般人の佐久間さんが自分の使いたい手帳を模索しているうちに、現在のラインナップに成長したのがすごいところだ。
評者は手帳本が好きで、これまで何冊も買い求めてきた。二十数年前、当時はまだ無名だった経営者が、自分の実現したい夢を手帳に書き込んでいるのを読んだ。その人はIT分野で成功し、今や誰もが知る企業グループの総帥になった。今もまだ夢を書き続けているのだろうか。
コロナ禍で在宅する日々が続き、手帳の予定欄は空白が増えたという人も多いだろう。予定ではなく、どう生きたかを記録するツールとして、評者も「ジブン手帳」に心が動いた。
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