コロナ禍で飲食店や小売業が大打撃を受けている。普通の災害と違って、回復のめどが立たないところがつらい。本書『巣ごもり消費マーケティング ~「家から出ない人」に買ってもらう100の販促ワザ』(技術評論社)は、マーケティング専門家によるアドバイス本だ。様々な業種が取り上げられているので、参考になる人が多そうだ。
著者の竹内謙礼さんは1970年生まれ。有限会社いろは代表取締役。大学卒業後、出版社、観光施設の企画広報担当を経て、2004年に経営コンサルタントとして独立。実店舗の販促やネットビジネスの戦略立案などに携わってきた。『ホームページの値段が「130万円」と言われたんですが、これって相場でしょうか?』、『楽天にもAmazonにも頼らない! 自力でドカンと売上が伸びるネットショップの鉄則』、『売り上げがドカンとあがるキャッチコピーの作り方』など著書多数。
コロナ禍は、竹内さん自身をも直撃したという。何しろ、消費者が外に出られない。買うのは絶対に必要なモノだけ。
「こうなると、自分の積み重ねてきたノウハウがいかに無力なものか思い知らされてしまう・・・今まで構築してきたノウハウは、経済が健全に回って、人々が正常な日常生活を送るからこそ成り立っているものだと、あらためて思い知らされた」
しかし、だからと言って、立ち止まっているわけにはいかない。「巣ごもりの消費者」にモノを買ってもらうにはどうすればいいか。これまでの商売のやり方を根底から見直しつつ、新たなビジネスモデルを構築することはできないか。
竹内さんは、経営コンサルタントとして、実店舗とネットマーケティングの両方のノウハウを構築してきた。そのため、実店舗に対して非対面のネット戦略を組み立てることができる強みがある。本書ではそのあたりを軸に、多数のアイデアを開陳している。
本書は以下の6章構成。
第1章 冷静になって検証すると見えてくる「巣ごもり消費」の攻略法 第2章 戦略は「短期」「中期」「長期」で考える 第3章 初心者でもすぐできる巣ごもり消費のネット活用法 第4章 巣ごもり消費で「売れるもの」「売れるサービス」 第5章 新型コロナの巣ごもりで販促が難しい業種の攻略法 第6章 巣ごもり消費対策「売れる販促物」のつくりかた
第1章では、「集客減」「景気低迷」「キャッシュ消滅」の3重苦をどうクリアするか、逆風の突破口はどこにあるのかを冷静に見つめなおす。それを受けて第2章では、時間軸を「短期」「中期」「長期」の3段階で設定し、それぞれの時期の対策を考える。
「短期」は目の前のキャッシュを取りにいく。そのために、セール系の企画に絞る。感染させない売場づくりを心掛け、SNSやダイレクトメールでは「がんばっています!」をアピールする。
「中期」は、事業をゆっくりと回し始める時期になる。「客層マトリクス」をつくり、新規に獲得したい顧客の客質を決める。そして「長期」で売り上げの安定を心掛ける。「巣ごもり」が終わるのは5~10年先というぐらいの覚悟が必要だ。
対応が難しい業種もある。代表格が飲食業関連だ。「第5章」で詳述されている。どうすれば、巣ごもり消費に勝てるか。店に来てもらえるか。本書では以下のようなアドバイスが並んでいる。
・「感染しない、させない」を最大限配慮した店作りをする ・テイクアウトは"お持ち帰りの食事"という認識で取り組むと失敗する ・レシピ動画でファンづくりをする ・告知と支払いの工夫で「買いづらい」という弱点を潰す ・スーパーやコンビニの弱点を徹底的に攻めていく戦略を立てる
このほか、対策が難しい業種としてスポーツジム、ヨガ、営業職、広告代理店、エンタメ業界、バー、クラブ、百貨店などが取り上げられ、攻略法が記されている。
評者はマーケティングについては門外漢なので、飲食業界に詳しい知人に本書を読んでもらった。感想を聞いたところ、「書かれている対策自体はオーソドックス。短期、中期、長期と段階を踏んで対策を考えるとか、顧客の感染症への警戒感を軸に、顧客をセグメント化するなどが参考になった」ということだった。「100の販促ワザ」が一覧で掲載されているので、その中のいくつかはどの業種でも参考にできるのではないか、とも。
ちなみに竹内さんの仕事も、3月からセミナーや講演会の仕事はすべてキャンセル。コンサルタント契約も打ち切りになり、4月に入ってもその状況が続いた。売り上げは昨年比7割ダウン。創業以来の危機になった。
しかし5月のGW明けからオンラインセミナーの案件が増え始め、社員研修やコンサルティングの仕事もZoomでやれるようになった。対面打ち合わせが減ったことで、事務所のミーティングスペースが不要となり、動画仕事が増えたことで撮影スタジオに改修。主宰している「タケウチ商売繁盛研究会」の入会者数も急増し、毎月配信のメルマガの読者数も右肩上がり。メルマガ開封率も23%から27%に上昇した。経営を立て直しつつあるようだ。
BOOKウォッチでは関連で、『観光ビジネス大崩壊 インバウンド神話の終わり』(宝島社)、『新型コロナと貧困女子』(宝島社新書)、『2020年世界大恐慌――資産家は恐慌時に生まれる』(第二海援隊)、『コロナ後の世界は中国一強か』(花伝社)なども紹介している。
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