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鉄砲伝来は種子島より「琉球」が早かった!

琉球王国の象徴 首里城

 世界遺産の首里城が2019年10月31日未明に焼失し、沖縄県民のみならず、多くの人に衝撃を与えた。短期間のうちに支援金が県内外から集まった。2026年の再建を目指して動き出したという報道もある。本書『琉球王国の象徴 首里城』 (新泉社、シリーズ「遺跡を学ぶ」145)はその首里城についてわかりやすく解説したもの。意外な歴史的事実なども明かされ、興味深い。

中国の築城技術を学ぶ

 多くの読者にとって初耳のような話を二つ、本書から披露しよう。

 一つは石垣の話。日本の城と言えば重厚な石垣が思い浮かぶ。登場するのは16世紀後半からだという。ところが沖縄の城(グスク)の石垣はもっと古い。14世紀前半から中葉にできていたという。日本の石垣に先んじること約2世紀も前だ。

 これは大陸の影響だという。当時の沖縄(琉球)は、大交易時代を謳歌し、諸外国との交易が活発だった。とりわけ中国との交易が盛んで、先進的な築城技術を受け入れていた。首里城の石垣には、近くでとれる琉球石灰岩が用いられていた。

 もう一つは鉄砲伝来。日本史では1543年、種子島に漂着したポルトガル人が日本に伝えたことになっている。ところが、15世紀築造のグスクから、鉄砲を発射するための「狭間」(城壁にあけた鉄砲などを射つための穴)や弾丸が見つかっているのだという。15世紀前半には琉球で火器兵器が使われていたことは間違いないようだ。首里城の城壁南側にも「狭間」がうがたれていた。

地下に日本軍の司令部

 著者の當眞嗣一さんは1944年、沖縄県西原町生まれ。琉球大学法文学部史学科卒業。 沖縄県教育庁文化課課長、沖縄県立博物館長、沖縄考古学会会長などを歴任、現在、グスク研究所主宰。おもな著書 『琉球グスク研究』『沖縄近・現代の考古学』(琉球書房)、『沖縄の城ものがたり』(共著・むぎ社)、『考古資料より見た沖縄の鉄器文化』(沖縄県立博物館)、「沖縄から発信する戦跡考古学」(『歴史評論』615)など。本書は以下の構成。

 第1章 首里城をとり戻せ
 第2章 グスクの時代
 第3章 琉球王国の象徴・首里城
 第4章 琉球王国の終焉と首里城

 首里城は500余年にわたって存続し、琉球王国の政治・経済・文化の中心的役割をはたしてきた。しかし太平洋戦争当時、地下深くに日本軍の司令部が置かれたこともあって米軍の猛攻撃にさらされ、国宝指定されていた守礼門など、重要な文化遺産は徹底的に破壊された。戦後の1950年には、そこに琉球大学が新設され、造成工事でさらに破壊が進んだ。

 その後、正殿復元の運動が起こり、大学は移転、発掘調査が続けられた。著者はその中心的なメンバー。調査開始時は、正殿の四隅の位置さえはっきりしていなかったという。本書で首里城の歴史と特色、出土した貿易陶磁器、装飾品などを詳細に解説している。

複雑な地形を利用

 本書を読んで、なるほど、と思ったのはグスクの特徴的な性格だ。基本は軍事施設。段差のある複雑な地形を利用して、巧みに、敵の侵入を封じるように設計されている。

 沖縄でグスクが造られ始めたのは12、3世紀ごろだという。各地に小さな政治的支配者が生まれ、彼らの居城となったのがグスクだ。沖縄と周辺島では223か所のグスクが確認されている。それらのグスク城主たちの争いの最終的な勝者の居城が首里城、琉球王国の中心になったというわけだ。

 首里城は標高100メートルほどの隆起サンゴ礁の上に築かれている。首里台地の南縁部に位置し、深い谷や川に囲まれ、急崖もある。天然の要害に築かれていることを著者は強調している。

 沖縄では、首里城をはじめ各地のグスクめぐりが人気なのだという。世界遺産には首里城以外にも、今帰仁城跡、座喜味城跡など5つのグスクが含まれている。グスクの中には、今では地元の人たちが信仰する御嶽(うたき)となっているところも多い。周辺を歩くと、大貿易時代に海外からもたらされたと思われる陶磁器のかけらや中国銭などを拾うこともあるという。歴史のロマンを感じながら歩くことができる。

外国船がひんぱんに来航

 本書では幕末の琉球の状況についても記されている。日本と中国、その両方と関係し、地理的に中国や東南アジアに近かった琉球には、欧米船が来やすかった。1816年にはイギリスの艦船ライラ号など、1844年には、フランスの軍艦アルクメーヌ号が那覇港に入港している。アメリカのペリー率いる黒船は、浦賀に現れる一か月前に琉球に立ち寄った。一行約200人は上陸し、守礼門の前に勢ぞろいした。そのときの彼らの様子が絵画作品で残され、本書にも掲載されている。

 当時の琉球国王は、ひんぱんに来航する外国船情報をそのつど薩摩に報告していたという。薩摩が江戸の幕府よりも早く大量の海外情報を入手していたことは間違いなさそうだ。幕末に主導権を握った一因かもしれない。

 BOOKウォッチでは関連で、『青い眼の琉球往来――ペリー以前とペリー以後』(芙蓉書房出版)、『「鎖国」を見直す』(岩波現代文庫)、『幕末日本の情報活動――「開国」の情報史』(雄山閣)、『倭館――鎖国時代の日本人町』(文春新書)、『証言 沖縄スパイ戦史』 (集英社新書)、『報道写真集 首里城』(沖縄タイムス社)なども紹介している。



 
  • 書名 琉球王国の象徴 首里城
  • サブタイトルシリーズ「遺跡を学ぶ」145
  • 監修・編集・著者名當眞嗣一 著
  • 出版社名新泉社
  • 出版年月日2020年4月30日
  • 定価本体1600円+税
  • 判型・ページ数A5判・96ページ
  • ISBN9784787720351

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