読むべき本、見逃していない?

最新科学技術は人類を発展させる? それとも破滅させる?

いつになったら宇宙エレベーターで月に行けて、3Dプリンターで臓器が作れるんだい!?

 『いつになったら宇宙エレベーターで月に行けて、3Dプリンターで臓器が作れるんだい!?』(化学同人)。ずいぶん長いタイトルだが、原題は「SOONISH」とかなり短い。「もうすぐ来るっぽい」といった意味の俗語的英語のようだ。「人類の生活を発展させるかまたは破滅においやる急激に発展中の技術」というちょっと恐ろしい副題がついている。読む前から最新の科学技術をかなり斜めに取り上げた科学本だろうなという気がする。取り上げる技術は10種類。最初に登場する「宇宙へ安く行ける方法」から「脳・コンピューター・インターフェース」まで。

 著者はウイーナースミス夫妻。妻のケリーさんが原稿を書き、夫のザックさんが漫画を担当している。ケリーさんはテキサス州にあるライス大学の生物科学非常勤教員ということなので、生物科学の専門家。学位もとっている。ザックさんは一コマ漫画家で「エコノミスト」など経済誌にも漫画を描いているという。アメリカの雑誌でよく見るややアクの強い漫画を描く人のようだ。

宇宙エレベーターは宇宙行きの切り札?

 最初に登場する「宇宙に安く行ける方法」に宇宙エレベーターが登場する。宇宙に旅したい人は多いかもしれないが難点は安全性と無茶苦茶にお金がかかることだ。「現時点で、1ポンド(約450グラム)の重さのものを宇宙へ送るには、およそ1万ドル(約107万円)かかる。チーズバーガー1個につき、約2500ドルの計算だ」。

 地上から高度500キロの代表的な軌道に打ち上げる場合、「重量の80パーセントが推進剤(燃料+酸化剤)で、16パーセントがロケット本体、そして残りの4パーセントが荷物である」。推進剤は価格の面では無視できるほど安いが、費用の大半はロケット本体が占めている。しかもこれは使い捨て。というわけで、打ち上げロケットを回収してコストを下げるという発想が生まれた。そこで本書は再利用可能ロケットから巨大メガ・スーパーガン、宇宙エレベーターなど、いくつかのアイデアを紹介してくれる。宇宙エレベーターは魅力的なアイデアのように思えるが、難点はどういった素材を使うか。新素材のカーボンナノチューブが有望というが、2013年の段階で50センチの長さが最長だった。宇宙まで行くには圧倒的に短い。

再利用可能ロケットは実用化のめどが立つ

 現時点で一番進んでいるのは、電気自動車で有名なテスラ社CEOのイーロン・マスク氏が力を入れている再利用可能ロケット。これはすでに実用化され、スペースシャトルに代わる宇宙輸送に利用される見込みが立っている。ほかに紹介されているのは地上に太陽を作ろうとする核融合エネルギーや新たな臓器を作ろうとするバイオプリンティングなど。

 やや荒唐無稽な内容にも思えるが著者はこの分野の専門家に取材し、専門文献も読み込んでいるようで、記述はそれなりにしっかりしている。だが、筆致は全体にかなり辛辣で、こうした分野をきちんと知りたければ、巻末の参考文献に直接あたる方がいいだろう。

ブラックユーモア好きの人に向きそう

 そういえばアメリカの大書店に行くと、科学本や科学雑誌がたくさん並んでいるのにびっくりする。ただ啓もう書の多くは日本ではあまり見かけないB級科学本とでもいうべきタイプで、本書に出ているようなややアクの強い漫画もよく見かける。

 ブラックユーモアやブラックジョークが大好きなアメリカ人に受ける科学啓もう書なのだろう。そう思って読めば、最新の科学技術がアメリカでどう受け止められているかを簡単に知ることができる。ただし必ずしも最新科学技術に好意的な見方ではないので、そこは割り引いて読む必要がありそうだ。巻末の参考文献(ほんとんどは英語)はこの分野に関心を持つ人に役立ちそうだ。こうした解説書に珍しくきちんとした索引がついているのはありがたい。

 関連でBOOKウォッチでは『世界史を変えた新素材』(新潮選書)、『ニューロテクノロジー』(技術評論社)、『ブロックチェーン』(講談社ブルーバックス)、『腸と脳』(紀伊國屋書店)、『ニュートンに消された男 ロバート・フック』(株式会社KADOKAWA)、『太陽を創った少年』(早川書房)、『科学の誤解大全』(日経ナショナルジオグラフィック社)、『宇宙の「果て」になにがあるのか』(講談社ブルーバックス)、『リーマン予想の今、そして解決への展望』(技術評論社)、『交響曲第6番「炭素物語」』(化学同人)なども紹介している。

BOOKウォッチ編集部 レオナルド)


 


  • 書名 いつになったら宇宙エレベーターで月に行けて、3Dプリンターで臓器が作れるんだい!?
  • サブタイトル気になる最先端テクノロジー10のゆくえ
  • 監修・編集・著者名ザック&ケリー・ウィーナースミス 著、中川泉 訳
  • 出版社名化学同人
  • 出版年月日2020年4月25日
  • 定価本体2800円+税
  • 判型・ページ数四六判・408ページ
  • ISBN9784759820355

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